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平成二十七年八月二十六日提出
質問第三九三号

実質GDPでマイナス成長になっても対策は必要ないのかという疑問に関する質問主意書

提出者  福田昭夫




実質GDPでマイナス成長になっても対策は必要ないのかという疑問に関する質問主意書


 八月十七日、四〜六月期の実質GDP速報値は、前期比〇.四%減、年率換算で一.六%減と発表された。一方では「四半世紀ぶりの成果と再生する日本経済」と題した平成二十七年度年次経済財政報告(以下経済財政報告という)が内閣府より発表された。
 これに関連して質問する。

一 実質GDPでマイナス成長になり、株価も下落し、実質賃金も下がり、その結果節約傾向が強まり消費も落ち込んでいる。また中国経済の減速の影響で輸出も減少傾向にある。このような状況下では、緊急に補正予算を組んで景気対策をすべきではないのか。
二 安倍内閣の目標は二年で二%のインフレ目標を達成する事、実質成長率が二%、名目成長率三%を達成することであったが、いずれも達成できていない。原油価格が下がったからインフレ率が落ちたという主張はおかしい。原油価格の下落はGDPを押し上げるのだから、成長率は予想以上に高くなければならないはずだがそうなっていない。これらのことを考えると、経済財政報告の「四半世紀ぶりの成果と再生する日本経済」という主張は不適当なのではないか。
三 経済財政報告によれば、二〇一四年度の消費税増税はGDP全体を一.二%ポイント程度下げたとしている。実質GDP成長率は二〇一三年度二.一%、二〇一四年度はマイナス〇.九%であり、その差は三%であるのだから、一.二%ポイントという数字は小さすぎるのではないか。平成二十四年一月二十四日に内閣府で発表された「経済財政の中長期試算」の十二頁では、影響はさらに小さいとされていて、成長率の四年間の合計で比べた時、消費税増税を行った時と行わなかった時で僅か〇.一%の違いしかないとしている。経済財政報告は、この予測が間違いであったことを認めたという事か。平成二十四年の予測が大きく外れたわけだが、その理由は何か。
四 政府は、「平成二十九年四月の消費税率の十パーセントへの引上げについては、社会保障制度を次世代に引き渡していく責任を果たすとともに、市場や国際社会における我が国の信認を確保するため、経済環境を整える中で、実施すること」としている。しかしながら、失われた二十年と言われるほどの世界でも例を見ない大不況の中で、消費税率を更に上げて実質所得を更に下げ、その結果国民が倹約志向を強めれば消費は減退し、経済は縮小する。二〇一二年十月から二〇一四年十二月の期間の年金積立金の運用益は三十五兆円もある。現在積立金は百四十五兆円にまで膨れ上がっていて、社会保障制度は破綻寸前という状態ではないし社会保障制度を守るために緊急に大増税をする必要はない。一方でデフレ脱却は緊急を要する。そう考えれば、平成二十九年四月の消費税率の十%への引き上げは中止すべきではないか。そうでないと、衰退を続ける日本経済を次世代に引き継がせることになってしまうのではないか。
五 政府は「「中長期の経済財政に関する試算」(平成二十七年七月二十二日経済財政諮問会議提出)においては、名目長期金利は、均衡実質金利及び期待インフレ率並びにGDPギャップなどに基づいて試算された短期金利に一定のリスクプレミアムを加えることで試算した結果、二千二十年度までに経済成長等に伴って三.九パーセント程度まで上昇する結果となっている。」としている。つまり、異次元の量的緩和によって日銀から出て行った大量の資金の動きを完全に無視するという事である。こんなずさんな計算で良いのなら出口戦略など全く心配しなくてよくなるのではないか。政府は危機対応に対する備えを怠っているのではないか。
六 日銀の営業旬報(二〇一五年八月二十日時点)の資産側を見ると、金銭の信託(信託財産株式)一兆三千五百十億七千七百九十二万四千円、金銭の信託(信託財産指数連動型上場投資信託)五兆八千八百二十億三千八百七十万八千円、金銭の信託(信託財産不動産投資信託)二千四百四十八億三千百十五万五千円以上、個別株、株式指数ETF、REIT計七.五兆円となっているが、それに対して純資産(自己資本)が二〇一五年三月三十一日時点の財務諸表の貸借対照表を見ると三.九兆円しかない。また、貸借対照表を見ると、個別株、株式指数ETF、REITについては、債券や外国為替のように損失引当金を積んでいない。
 日銀がこのような財政状態であるときに、仮に、世界的な市場大暴落が起き、それにつれて日本市場でも大暴落が起きれば、個別株、株式指数ETF、REIT計七.五兆円(簿価)が半分以下になれば財務諸表の「重要な会計方針」に従って減損処理を行う必要も出てくる可能性があると思われる。そうすると、損失額が純資産(=自己資本)を上回り、日銀が債務超過に陥る可能性があるように思われるが、そのようなリスクについて内閣は認識しているか。また、もしそのようになった場合はどのような対策をするつもりか。尚、この質問に関しては、仮の話だから答えられないという回答は避けて頂きたい。仮の話だから答えられないという回答であれば、内閣は万が一の場合において無策であると認識するがそれでよいか。
 また、そもそも一般の市中銀行は「銀行等の株式等の保有の制限等に関する法律」第三条第一項によって、自己資本に相当する金額を超える金額の株式を保有できないことになっている。これは銀行が債務超過に陥る事を防ぐための法規であると考えられるが、この法律は日本銀行には適用されないと理解してよいか。
 あるいは、同条第二項において「銀行等及びその子会社等は、合併その他の政令で定めるやむを得ない理由がある場合には、前項の規定にかかわらず、あらかじめ主務大臣の承認を得て、株式等保有限度額を超える額の株式等を保有することができる」とあるが、この規定を適用して日銀が自己資本を超えて株式等を保有する事が認められているという認識でよいか。

 右質問する。



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