質問本文情報
平成二十七年九月八日提出質問第四一〇号
政府と沖縄県との話し合いの内容の確認及び透明化に関する質問主意書
提出者 仲里利信
政府と沖縄県との話し合いの内容の確認及び透明化に関する質問主意書
辺野古新基地建設問題や沖縄振興問題等に関して、滞っていた政府と沖縄県の話し合いが、近年不定期ではあるがようやく行われるようになった。しかしながら、これまでの話し合いに関し、沖縄県からの説明は一定程度あるが、政府からの説明に関しては、沖縄県民が望む誠意ある具体的な内容や理由付け等が一向に示されていない状況である。このため、沖縄県民は苛立ちと疑問を訴えている。
そこで、お尋ねする。
二 巷では沖縄県は基地があるが故に国庫支出金や地方交付税で厚遇されているとの声があるが、前述の決算ベースでの国庫支出金や地方交付税の全国との比較で見た場合、何ら厚遇されていないというのが真実である。また、政府全体の予算額が平成元年から平成二十七年度まで順調に推移していることに比べると沖縄振興予算が総額で三千億円台を確保したのは平成六年度から平成十六年度までの十一年間と平成二十五年度以降でしかないことからすれば、やはり厚遇されていないというのが改めて感じられる。むしろ米軍基地が過度に沖縄県内に集中し、過重な基地負担を強いられている現況からすれば、現在の国庫支出金や地方交付税の総額及び他の都道府県との比較で言えば、余りにも少なすぎるのではないか。厚遇というよりも冷遇と言うべき状況ではないか。このことは、平成二十七年八月二十七日付け琉球新報二面に掲載された社説でも厳しく指摘されている。政府の感想と見解を問う。
三 翁長沖縄県知事は、平成二十八年度沖縄振興予算の要請に際し、予算の中から那覇空港滑走路増設事業や沖縄科学技術大学院大学の充実に関する予算、いわゆる国直轄事業分を除くよう要請した。また、併せて平成二十五年度の予算編成時に安倍総理が約束し、さらに今年も確保に努める旨表明した三千億円台の予算確保も要請した。国直轄事業費を沖縄振興予算に潜り込ませ、あたかも「有史以来の予算を付けた」というポーズは平成二十五年度の予算内示に安倍総理と仲井眞知事が演出したものであるが、東京新聞が平成二十五年十二月二十八日付けの一面記事で「見せかけの沖縄振興予算」として、また琉球新報が平成二十七年八月二十七日付けの二面記事の社説で、それぞれ厳しく糾弾し、また本職も平成二十七年二月十二日付け百八十九−五十九号の質問主意書でその問題点を指摘し是正を強く求めたところである。全国を見回しても国直轄事業予算を県の予算に組み入れている事例は皆無である。したがって、翁長知事が振興予算から国直轄事業を除外するよう要求することは至極当然である。さらに総額三千億円以上の額を確保することもこれまた当然である。国の認識を再確認する。
四 辺野古新基地建設への地元の同意について、これまで政府は異口同音に「仲井眞沖縄県知事の埋め立て承認が得られている」と言っている。ところが、その仲井眞知事は、平成二十五年十一月、突如として、坐骨神経痛で立ち上がることが困難であり、入院検査を行う必要があるとの理由で、沖縄県議会十二月定例会の一般質問を休み、都内の病院に緊急入院した。県議会代表質問の際、車椅子で移動する状況や、消え入らんばかりの弱弱しい答弁の状況等が県内外に報道され、県民は仲井眞知事の早期の回復を祈った。しかし、その入院の間に仲井眞知事は政府関係者と相次いで協議を重ねて辺野古新基地建設埋め立て承認の方針を固め、帰沖した十二月二十七日に体調不良を訴えながらも承認を公表した。しかし、識者によれば、公表された病名や報道された車椅子での移動状況、その後の体調不良等からすれば、当時の仲井眞知事は正常な認識能力を欠いた状況であり、辺野古沖の埋め立て承認という重要な行政行為の決定を行うことは到底おぼつかない状況であったとの指摘がなされている。もし、そうであるならば、仲井眞知事の行った「埋め立て承認」は正常な認識能力がない状態で行政行為を行ったことになり、「違法な瑕疵のある判断・決定」として取り扱うべきものではないか。
五 上記四の質問に関連して、入院期間中行われた政府関係者との度重なる協議の際、仲井眞沖縄県知事はどのような資料を準備し、沖縄県職員の誰が立ち会い(あるいは誰も立ち会わずに)、政府の誰と、どのような内容の意見交換や確認を行ったのか、全く不明である。
そこで、仲井眞知事の入院中の協議の際に、いかなる資料に基づき協議がなされたか、特に、埋立承認申請書や知事意見、環境生活部長意見等、承認の要件の充足性を判断する資料に基づき、議論がなされたか否か、双方の出席者は誰か、どのような内容の意見交換や確認を行ったのか、特に、環境保全措置がなされているか否かについて具体的に協議を行ったか否か、協議の内容について文書が作成されているか否か、作成されているのであれば、作成日時、作成名義人、文書名を明らかにされたい。
また、埋立承認の担当部局は、承認の場合と不承認の場合の書類を二つ準備していたが、仲井眞知事は一顧だにせず独自で承認を行っている。
このこと一つを考えてみても、正常な認識能力のない状態で行政行為を行ったとすべきであり、「違法な瑕疵のある判断・決定」として取り扱うべきものではないか。
六 上記四及び五の質問に関連して、仲井眞沖縄県知事は、平成二十五年十二月二十七日にそれまでの公約や説明を翻して、唐突に辺野古新基地建設埋め立てを承認した。その際、庁議を行わないなど異例の手続きを取っている。また、知事意見や環境生活部長意見を含め県が従来指摘してきた環境保全に関する懸念について、事業者が十分な応答、措置を取っていないのにもかかわらず、これを看過し、埋立承認審査過程において反映しなかった。これらの行為は「行政手続きにおける瑕疵」に他ならず、したがって、仲井眞知事の行った「埋め立て承認」は、「違法な瑕疵のある判断・決定」として取り扱うべきものではないか。
七 二十年近くも時間がかかっているのにも関わらず、一向に解決の兆しが見えない辺野古新基地建設問題に関し、政府は岸本名護市長や稲嶺沖縄県知事、仲井眞沖縄県知事の同意が得られていることを異口同音に繰り返し説明している。しかし、岸本市長は沖合への設置を始めとする七つの前提条件を、稲嶺知事は「軍民共用」と「十五年間の使用期限」という条件をそれぞれ付けて、これらの前提条件・約束が実行されなければ同意はなかったものとするとした。さらに沖縄県民への公約を破って辺野古新基地建設容認に鞍替えした仲井眞知事でさえも普天間飛行場の平成三十年までの五年間以内の運用停止を前提条件としたのである。しかしながら、これらの前提条件・約束は、いずれも政府自ら破っている。普天間飛行場の五年以内の運用停止に至っては「そもそもできるはずはない」と公言してはばからない有様である。その一方で、政府にとって都合のよい「地元の同意が得られた」ということだけを一人歩きさせている。同意はあくまでもその前提となる条件・約束が履行された暁に成立するものであって、条件・約束を何ら履行せず踏みにじっておきながら、一方的に同意は得られていると強弁することは信義にもとる行為である。そもそも条件・約束が履行されないならば、最初に戻って同意は最初から存在しなかったとすることが判例・学説の一致した考えである。したがって、政府は、辺野古新基地建設問題に関し、地元同意の前提条件・約束を政府自ら破ったということに鑑み、地元の同意はもはや最初から成立していないとすべきではないか。
八 平成二十七年八月十二日から九月七日まで延べ五回に分けて行われた「米軍普天間飛行場(宜野湾市)移設に関する集中協議」について、政府は当初から辺野古移設が前提との考えを変える余地はなく、協議終了後は工事を再開するとの立場を堅持し公言したため決裂となった。沖縄県民の民意と期待をまたもや踏みにじる結果になったわけだが、政府は一体何のために沖縄県との協議を呼びかけたのか。その目的は何だったのか。成果は何か。沖縄県民及び沖縄県との深い溝を解消できたのか。協議が決裂した理由は何か。
九 政府は本職を始め、多くの国会議員の真摯な質問に対し、「ご質問の趣旨が定かでないが」とか「お尋ねの「〇〇」の意味するところが必ずしも明らかでないが」という前置きの言葉で質問をはぐらかし、または全く答えようとしていない事例が数多く見受けられる。これは議員の調査・質問権を損ないかねない、重大な行為である。政府はもっと議員の質問に真摯に対応すべきではないか。
敷衍すると、沖縄県議会を始め地方議会では、議員からの質問に対する執行部側の説明・答弁を適切に確保するための措置として、質問者の時間を確保した上で、執行部側の説明・答弁時間に制限を設けず、議員の納得のいくまでの対応を求めている。地方議会及び行政の先鞭となるべき国会・政府においては地方に見倣うべきと考えるが、政府の見解を求める。
右質問する。