質問本文情報
平成二十七年九月八日提出質問第四一一号
国が公有水面埋立法や行政不服審査法において公益を理由としながら私人と同様の立場を主張していることに関する質問主意書
提出者 仲里利信
国が公有水面埋立法や行政不服審査法において公益を理由としながら私人と同様の立場を主張していることに関する質問主意書
国は、辺野古新基地建設問題に関する公有水面埋め立て訴訟や知事指示の執行停止に関する行政不服審査請求事案等において、これまで公益を理由としながら、公有水面埋立法や行政不服審査法における一般私人と同様の立場で処分を受けるとして申立人適格性を主張しているが、このような使い分けは法の趣旨を逸脱し、余りにもご都合主義的であるとして、沖縄県民を始め多くの国民の顰蹙を買っている。
そこでお尋ねする。
二 私人が私有地を米軍基地として直接米軍に提供することは可能か。また、私人が米軍基地として提供する土地を造成するため公有水面を埋め立てることは可能か。私人ができないとする理由は何か。また、これまでに、私人が私有地を米軍基地として直接米軍に提供した例や、米軍基地を提供する目的で公有水面埋立を行った例はあるか。
三 国は、沖縄県知事の工事停止指示を執行停止とする理由として、@普天間飛行場の危険性の除去、A日米間の外交防衛への重大な損害の二点を挙げているが、これは正しく公益ではないか。私人がそのような理由を挙げることは可能か。
四 米軍に提供する基地を新たに造るため辺野古沖を埋め立てる行為は、国が公益を目的に行うものに他ならない。そうであるならば、その手段として行われる沖縄防衛局の岩礁破砕、埋め立ては一般私人であれば立ちえない立場に立って行う行為である。執行停止の指示の理由に公益を挙げておきながら、その申請者を私人と同様の立場で処分を受ける者とすることは、余りにも行政不服審査法や公有水面埋立法の精神を逸脱し、または法律の想定していない事態をくぐり抜ける、いわば脱法行為に近いものではないか。何よりも私人が使えない目的・理由を挙げながら私人と同様の立場であるとすることは矛盾していないか。
五 那覇市情報公開条例に基づく自衛隊基地「対潜水艦戦作戦センター(ASWOC)」の建設資料の公開を国が裁判で差し止めることができるか否かが争われた訴訟の地裁、控訴審判決は、公益の救済を求める訴えは法律上の争訟性を欠くとし、上告審判決は、那覇市の条例について「国の主張する個別的利益を保護する規定はなく、国には原告適格がない」とした。行政不服審査法も、行政事件訴訟法と同様、国民の権利救済を目的とする制度であり、行政訴訟と同様、公益の救済を求めることは許されず、また、行政訴訟における原告適格と不服申立てにおける申立人適格はパラレルに考えられている。これらの判例を踏まえても、なお国は行政不服審査法において、公益の救済を求めることができると考えるのか。
六 国は、公益を理由に辺野古に新基地を建設しようとし、沖縄県は県民の意思や安全、生活を理由に辺野古の新基地建設に反対している。事の本質は、お互いが守るべき国民、県民の利益に関する考え方の相違であり、まさしく政策問題である。
ところで、地方自治法改正により、国と地方自治体が対等とされ、国の地方自治体への関与は法定されること、必要最小限度であることが求められ、最終的には司法の判断により解決が図られることとなった。
一方で、地方自治法上の法定受託事務の審査請求制度は、学説では地方自治の本旨との関係で疑義があることから、廃止が求められてきた制度であり、今般の行政不服審査法改正の議論においても、当初は廃止が議論されていたが、地方分権改革推進委員会等の結論を待つとして存置された制度である。
今回、岩礁破砕について、国は、事業者としての立場で行政不服審査請求を行い、一方で審査庁としての立場で執行停止をし、また、今後裁決を行うこととなる。
しかし、このような行為が許されれば、沖縄県民の民意や利益は容易に無視され、国は地方自治体に望む政策を容易に押し付けることが可能となる。例えば、仮に、仲井眞知事が県外移設の公約に従い、公有水面埋立不承認処分を行っていたとしても、国は不承認処分の取消を求めて審査請求を行い、自身が認容裁決を行えば、仲井眞知事は、裁決に拘束される結果、埋立承認処分を行わざるを得なくなってしまう。
つまり、国が事業者となりさえすれば、司法の判断を経由せずに、つまり、その適法性、合憲性についての裁判所の判断を得る機会を奪いながら、いかようにも国の望む事業を地方自治体に押し付けることができることになるが、そのような事態は、地方自治法が想定しないものではないか。
七 国は、農林水産大臣が行った知事の工事停止の執行停止の理由として、行政不服審査法第三十四条第四項を根拠に挙げているが、そもそも国の埋立承認については、着手時期や竣工時期が制限されてなく、いつでも埋め立て工事が可能であること、さらに普天間飛行場の危険性の除去は運用停止をすれば済むことであることからすれば、「重大な損害を避けるための緊急の必要」があるとは認められないのではないか。
右質問する。