質問本文情報
平成二十八年三月二十四日提出質問第二〇九号
鉄軌道計画の本格スタートに向けた政府の支援や取り組みに関する質問主意書
鉄軌道計画の本格スタートに向けた政府の支援や取り組みに関する質問主意書
去る三月十日、沖縄県議会二月定例会の総務企画委員会に於いて、謝花喜一郎企画部長は「一九年度の着工に向け、一六年中にルート案を決定し、一七年度に国との調整に着手したい」との考えを明らかにした。いよいよ沖縄県民が待ち望んでいた鉄軌道計画の本格スタートである。鉄軌道のメリットはいろいろあると思われるが、何と言っても定時・定速・大量輸送に尽きる。また、沖縄県内の慢性的な交通渋滞の解消や那覇市とその周辺部に集中している歪な定住圏の改善と拡大が期待できることから、県民はこぞって歓迎の意を明らかにしている。鉄軌道計画については、これまで幾多の紆余曲折を経ながら、ようやくここまで辿り着いてきたわけであるが、このことに関して、改めて政府や沖縄関係者に謝意を表したい。今後着工に向けても解決すべき問題は多々あるものと推測するが、沖縄振興の一丁目一番地で、大きな柱であることを忘れずに、引き続き関係各位のご奮闘とご尽力をお願いしたい。
ところで、鉄軌道計画の本格スタートに向けた政府の支援や取り組みについて、巷間に色々と取りざたされているところである。本職は、政府の真意を伺うため、二〇一五年二月十二日の質問第五八号で質問を行い、二月二十日に答弁を得たところである。その際、本職から、沖縄県は成長著しい東アジア地域のダイナミズムと連動して、巨大市場の中心に位置する沖縄の地理的優位性と長年培ってきたソフトパワーを生かして経済成長を描くことを基本方針としていること、その原点となるのが、沖縄本島を網羅する鉄道網や空の玄関口となる那覇空港第二滑走路の増設やターミナルビルの整備であることを指摘して、鉄軌道の必要性について指摘をして政府の姿勢や取り組みを促したつもりであったが、如何せん満足のいく答弁を得ることができなかった。
そのため、今回敢えて本職は、政府に次の七件について問い質しておきたい。すなわち、今回の鉄軌道計画は、@沖縄に戦前・戦中整備・運用されていた軽便鉄道が大戦の空襲で壊滅的な損害を被り、以後沖縄県内に鉄軌道が復旧・整備されなかったことに対する戦時補償としての位置づけがあるか、A日本国有鉄道清算事業団の債務等の処理に関する法律に基づき、国において承継した国鉄長期債務の支払い財源として、たばこ特別税収等を充てたわけであるが、国鉄の恩恵を全く被っていない沖縄県民に対しても一方的に徴収したことをどう位置づけるのか、B沖縄県内では、定時・定速・大量輸送の交通機関がなかったため、極めて高い自動車依存型社会が形成されてしまった。そのため現在では、あらゆる面で弊害が生じ始めている。抜本的な対策を講じることが喫緊の課題となっているが、どう位置付けるのか、C沖縄県の人口は約百四十二万人であるが、そのうち沖縄本島の中南部都市圏に約八割の人口が集中するという極めて歪な構造となっている。このため沖縄本島の均衡ある発展を期するために、どう位置付けるのか、D世界水準の観光リゾート地の形成を図るために、どう位置付けるのか、E政府と沖縄県の認識は共有されているか、F全国新幹線鉄道整備法を参考とした、持続的な運営を可能とする特例制度創設に向けた取り組み等の早期着手に関する要請にどう応える考えか、である。以上のことを踏まえてお尋ねする。
二 次に、Aについては、国鉄長期債務の支払い財源として、たばこ特別税収及び一般会計国債費等を手当てしたものであり、広く薄く、国民全体で負担すべきとの考えによるものと承知している。ちなみに平成十一年度から平成二十二年度までの十二カ年にかけて、沖縄県内で課税されたたばこ特別税は、沖縄県企画部の資料によれば、年税額で約十八億円、十二カ年間の累計で約二百二億円が徴収されている。そうであるならば、国鉄の恩恵を全く被ってこなかったのにも関わらず国鉄の長期債務の支払いを一方的に強いられた沖縄県民への償いの意味を含めて、沖縄県が要望するように、鉄軌道の整備や運営に要する経費については、全国新幹線鉄道整備法を参考とした、持続的な運営を可能とする特例制度を政府が創設して、広く薄く国民全体で負担するよう主導すべきではないか。
三 次に、Bについては、沖縄県内の自動車保有台数は、復帰の昭和四十七年と平成二十三年を比較すると、約五倍に増加している。また、沖縄本島内のバス輸送人員は、昭和六十年と平成二十三年を比較すると、約七割弱減少している。また観光客の増加に伴いレンタカーも飛躍的に増大している。これら急激な自動車交通の増加に対して、道路整備等が追いつかず中南部都市圏では一般道路の平均旅行速度が時速十三.九kmであり、東京都二十三区や大阪市、名古屋市の三大都市圏の十六kmよりも低く、慢性的な交通渋滞を招いている。さらに沖縄総合事務局が行った「交通渋滞の年間経済損失、南部で七百八十八億円」、「沖縄県における渋滞損失時間に関する分析結果、那覇都市圏人口一人当たり損失時間約六十一万人時間/年」との調査結果も公表されている。また自動車依存型社会の弊害は、交通渋滞や高齢者の交通事故、二酸化炭素排出量、メタボリックシンドロームの割合の増加等にも現れるようになっている。もはや沖縄県内のこのような現状を鑑みた場合、一地方の問題とすべきものではなく、国を挙げて改善を施すべき問題として捉えるべきであり、そのためにもやはり鉄軌道を早急に整備して、沖縄本島の南北骨格軸として広域移動を支え、那覇−名護間を一時間で結ぶようにすべきではないか。
四 次に、Cについては、沖縄本島の中南部都市圏に人口が集中することにより、交通渋滞や住居難、学校・保育所の確保難等深刻な社会問題が生じている。また、他地域では若年者が流出して過疎化と高齢化が進むという弊害も見られるようになっている。沖縄本島の均衡ある発展のためには、地域の実情に応じた公共交通サービスの確保が課題となっているところである。このため、沖縄本島全域を定住圏とすることが可能な鉄軌道を早急に整備すべきではないか。
五 次に、Dについては、沖縄県は、自立型経済の構築を目指す手段の一つとして、世界に誇れる美しい海と自然、文化、歴史等を売り物とした世界水準の観光リゾート地の形成を目指しているところである。そのような中にあって、現下の交通事情からレンタカーを活用せざるを得ない観光客から、慢性的な交通渋滞や交通移動の不便さの改善を求めるクレームが相次いでいる。沖縄経済の自立化を図る根幹である観光振興のためには交通手段の改善が求められているところであり、また鉄軌道の整備も要望されているところであるが、政府の認識と見解はどうか。
六 次に、Eについては、冒頭で説明したように、沖縄県の企画部長は、那覇空港の第二滑走路の整備終了に合わせるため、「一九年度の着工に向け、一六年中にルート案を決定し、一七年度に国との調整に着手したい」との考えを明らかにしている。政府は、沖縄県のこのような考えに対して、同様な認識と考えを共有しているものと承知しているところであるがどうか。
七 次に、Fについては、沖縄県が平成二十六年六月十八日付け「沖縄鉄軌道の導入決定・早期着工について(要請)」において、要請を行ったところである。これは、地域公共交通確保維持改善事業費補助金(鉄道軌道安全輸送設備等整備事業)における補助率が1/3であるのに対して、整備新幹線方式における特例制度では補助率が2/3で、かつ、地方負担分に特別交付税措置があるため、地方の実質的な負担が十二.三〜十八.三%と大幅に軽減されることから、敢えて全国新幹線鉄道整備法を参考とした、持続的な運営を可能とする特例制度の創設を要請したものである。これまで新幹線やJR、旧国鉄の恩恵を全く被ってこなかったのにも関わらず、負債の清算に当たっては一方的に徴収されてきた沖縄県民に対しては、今回、鉄軌道の整備に当たってせめて幾許かの特例的な恩恵をもたらすべきであると考えるが、政府の認識と見解を伺う。
右質問する。