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平成二十八年十一月九日提出
質問第一二六号

政府は国民の持つ将来不安の解消のための努力を怠っているのではないかという疑問に関する質問主意書

提出者  福田昭夫




政府は国民の持つ将来不安の解消のための努力を怠っているのではないかという疑問に関する質問主意書


 二%のインフレ目標、実質二%名目三%のGDP成長率目標のいずれも達成に失敗したアベノミクスだが、それは政府が国民の持つ将来不安の解消の為の努力を怠っているのが原因ではないかという疑問が生じている。経済再生も財政健全化も国民の将来不安の解消がなければ実現は不可能である。特に国の借金千兆円が国民の将来不安を引き起こし、国民は節約に走り、それが経済再生を不可能にしているのではないか、そして結果として財政健全化を出来なくしているのではないかという疑問が生じている事に関し質問する。

一 国の借金は家計の借金と同じと考えるか。
二 財務省のホームページには日本の財政を家計に例えた場合について説明がある。それによると月収三十万円の家計でローン残高は五一四三万円なのだそうである。このような家計では、新たな借金をしようとしてもとても貸し手が現れないような印象を受ける。しかし、現実はそれでも政府は〇%あるいはそれ以下で新たな借金ができる。ということは国の借金と家計の借金とは全く意味が違うと言えないか。
三 日銀はお金を刷って国債(国の借金)を買い取っている。これを家計に例えるとこの家庭ではお金を刷って使っても良いと認められている事になると思うが同意するか。
四 月収三十万円の家計でローン残高が五一四三万円であれば、確実に自己破産する。つまり借金踏み倒しである。国の借金もそれが起きると考えているのか。
五 一方で「日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない」と財務省のホームページに書いてある。これを家計に例えると、日本の家計でどんなに借金が多くなっても破産する事はないということになる。このことから国の財政を家計に例えるのは無理があると言えるのではないか。
六 終戦直後には、国の借金は膨大であった。それを税金で返したのではなくインフレのお蔭で実質的に激減した。実際、大多数の国々ではインフレのお蔭で国の借金を実質的に減らしている。このことを家計に例えるとどのような借金の返済の方法に対応するのか。
七 国の借金を実質的に減らす方法は二つあるというのが伊藤元重氏が今年六月二十七日の読売新聞に載せた説である。第一の方法は、例えば毎年借金を十兆円ずつ減らす方法で千兆円の借金を半分にするのに五十年かかるだけでなく、大恐慌を引き起こす。第二の方法は、経済を発展させ毎年三%の成長をすればGDPは三十年で約二.四倍になり、借金のGDP比は二.四分の一となる。伊藤氏は第一の方法は非現実的だが、第二の方法は現実的だと主張している。国の財政を家計に例えている限り、借金返済の方法は非現実的な第一の方法しかありえず、多くの国で採用されている第二の方法を見えなくしてしまうと思わないか。
八 国の財政を家計に正しく例えるならば次のようになる。借金は多いが、この家庭では離れでお札を印刷することが許されていて、大量に印刷し年間借金の十分の一程度を返済している。かなり返済が進んでいるが、貸し手である銀行はそのような返済を続けることを必ずしも望んでおらず、このペースでの返済はあと一〜二年で困難になると考えられている。その理由としては銀行がこの家庭に貸出をし、それに対する利息が貴重な収入源となっており、それがなくなると銀行の経営が成り立たなくなる恐れがあるからである。またこの家庭から銀行に返済したお金の多くは、この家庭に預ける仕組みになっている。この家庭は銀行がこの家庭にそんなに多額のお金を預けてほしくないと考えており、何とこの家庭は銀行に対し、この家庭に預けたお金の一部にマイナス〇.一%の金利を払えと命令し銀行は強制的に受け入れさせられたのである。国の財政を家計に例えるなら、このように説明しなければ誤解を受けると思うが同意するか。
九 このような疑問に関する政府の正式な回答を財務省のホームページに書くべきではないか。
十 政府が国の借金を家計に歪曲した形で例える事で、国民に将来不安を生じさせ、節約に走らせる。それが消費を冷え込ませ経済再生を遅らせ、結果としてそれが財政健全化の妨げになっていると考えるが同意するか。
十一 日銀の政策変更で今後国債の暴落は起こり得なくなったのではないかという疑問に関する質問主意書(質問第一八号、以下質問一という)と政府が日銀の金融政策の有効性を疑っている事に関する質問主意書(質問第七六号、以下質問二という)の質問の主旨は、国債の暴落という国民の将来不安を解消し経済再生と財政健全化を追求しようとするものであった。しかし両質問に対する答弁書はこの主旨を否定し経済再生と財政健全化を阻害しようとした。政府は国民の持つ将来不安の解消のための努力を怠っているのではないか。
十二 質問一の七で、日銀の保有する国債を無利子・無期限の国債にコンバートすればどうかと提案した。無利子・無期限の国債でなくても政府貨幣(例えば五百円玉とか一兆円玉等)にコンバートする案も考えられる。多くの識者からこのような提案がなされるのは、千兆円という国の借金に対する不安で消費が抑えられ日本経済の再生が不可能になっている窮状を救い、日本人に自信を取り戻させ、経済を活性化させ、財政の健全化を目指すものである。しかし、答弁書ではこの提案を否定した。これは政府が国民の持つ将来不安の解消のための努力を怠っている現れではないか。
十三 コンバートは通貨の信認を失わせると質問一の答弁書(以下答弁書一という)と質問二の答弁書(以下答弁書二という)では答えている。「通貨の信認が失われる」という事実を家計に例えようとしても無理である。そもそも家計の場合インフレに相当するものがなく、例えるのが不可能である。国の借金と家計の借金が似ても似つかぬものであるのに、無理に比較しようという試みは単に国民の持つ将来不安を増大させるだけであり、結果として経済再生と財政健全化を遅らせるだけではないか。
十四 答弁書二の四についてで、成長戦略において、様々な分野で改革を断行してきたとある。確かに改革は必要であり生産性を高める努力はすべきである。ただし、国民の将来不安の解消を行わないままだと逆に不安の増大につながる可能性がある。貿易の自由化や生産性向上は、一部の労働者を切って捨てるということになりかねない。財政が厳しいという理由で「痛みに耐えよ」と言って弱者切り捨てを行えば、国民の将来不安は増大するだけだと思うが同意するか。
十五 答弁書二の十一及び十三についてで、雇用は確実に改善しているとある。しかし改善したのは非正規だけである。いつでも解雇できる非正規の人しか採用しないのは、企業が将来不安を持っているからだと考えるが同意するか。
十六 世界中で長期間デフレを続け名目GDPが上がらない国は日本だけである。その理由は政府が国の借金が多いと言って将来不安を煽っている事が原因で国民は消費を抑え、企業は国内投資を抑えているからだと考えるが同意するか。
十七 国の借金が日本以上の速度で増加している国は世界中に数多く存在する。しかし、それらの国々の名目GDPの増加速度は借金の増加速度に匹敵するものであり、その結果借金のGDP比は日本よりはるかに低いものとなっている。このことが意味するのは、日本の問題は国の借金が増えることではなく、名目GDPが増えない事である。そしてそれは財政が厳しいなどと言って国民に将来不安を煽り、緊縮財政を行ったことが原因していると考えるが同意するか。
十八 答弁書二の一、五及び八についてで「国債の価格や長期金利は、金融政策のみならず、経済・財政の状況等の様々な要因を背景に市場において決まるものであるとした上で、日本銀行は、二パーセントの「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、長短金利の操作を内容とする「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」(平成二十八年九月二十一日日本銀行政策委員会・金融政策決定会合決定)を継続するとしている旨を述べたものである。」とある。これは、インフレ率が二%になるまでは「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」による長短金利の操作が有効、すなわち、長短国債の価格操作が有効であるものの、インフレ率が二%を超えれば途端に無効となり、「国債の価格や長期金利は、金融政策のみならず、経済・財政の状況等の様々な要因を背景に市場において決まる」ため、いずれ国債が暴落する事になる、つまり、いずれこのような操作は必ず破綻を迎えることになるという趣旨か。もしくは、このような操作によってインフレ率が安定的に二%を超えてゆくことになれば、公的債務GDP比が低下し、政府財政が健全化するので問題にならないという趣旨か。

 右質問する。



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