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平成二十八年十一月三十日提出質問第一七七号
安倍総理の「こんな議論をやっていたんでは何時間やったって同じですよ、それは」との発言に関する質問主意書
提出者 逢坂誠二
安倍総理の「こんな議論をやっていたんでは何時間やったって同じですよ、それは」との発言に関する質問主意書
安倍総理は、平成二十八年十一月二十五日の衆議院厚生労働委員会(「本委員会」という。)で、年金関連法案の審議において、「二〇〇九年の段階の試算というのは、それまでずっと自民党が政権をとってきたことも含めて、それは自民党のせいとか、どこの党のせいではなくて、人口動態によるんですよ、これは。年金というものは、そういうことなんですよ。これを御理解いただけないとそもそも議論にならないし、しかも、私が述べたことを全く御理解いただいていないようでは、これでは何時間やったって同じじゃないですか。こんな議論をやっていたんでは何時間やったって同じですよ、それは」と答弁しているが、これらの答弁について疑義があるので、以下質問する。
二 「私が述べることを理解」するとは、安倍総理の述べることに賛同するという意味なのか、それとも総理の述べることの意味が分かるという意味なのか。どのように理解すべきか具体的に示されたい。
三 「これでは何時間やったって同じじゃないですか」とは、安倍総理の述べることを理解しない場合は、審議に応じないという意味なのか、それとも別の意味なのか。この答弁は何を意味しているのか。政府の見解を示されたい。
四 今回の年金関連法案は、内閣から提出されたものであり、提出者は法案の内容を丁寧に、分かりやすく説明する必要があろうと思うが、「これでは何時間やったって同じじゃないですか」と激高しつつ答弁することは、日本国憲法第七十二条でいうところの「内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告」することを放棄し、日本国憲法第六十三条の「内閣総理大臣その他の国務大臣は」「答弁又は説明のため出席を求められたときは、出席しなければならない」との規定に反する極めて投げやりな発言だと思われるが、これに対する政府の見解を明らかにされたい。
五 民主主義の根源は、多様な価値観を持つもの同士が議論や討議を通じて、他者の価値を認め自己の意見を変容させつつ合意形成をすることであり、その議論の過程が大変重要であると認識している。法案の提出者は、質疑者が総理の述べることを理解しないからといって投げやりな発言をするのではなく、より丁寧な説明を行う努力や工夫をする必要があろう。しかし、安倍総理は、「これを御理解いただけないとそもそも議論にならないし、しかも、私が述べたことを全く御理解いただいていないようでは、これでは何時間やったって同じじゃないですか。こんな議論をやっていたんでは何時間やったって同じですよ、それは」と答弁することは、提案者として、民主的な議論を理解しない、不誠実なものと思われるが、これに対する政府の見解を明らかにされたい。
六 民主主義社会において、討議や議論の過程を大事にする理由は、違った価値観を持つ他者の立場を理解しつつ合意形成を促進するためと言われる。議論や討議の過程がなければ、違った価値観を持つ他者への想像力を失い、合意形成を阻害することになる。特に何らかのことを提案し、多くの方に理解頂こうとする際には、まず提案者が謙虚に丁寧に提案の内容を説明しなければ合意形成の過程が開始されない。ましてや提案者の側が、自分の言いたいことだけを発言し、それを理解しないのは理解しない相手が悪いかのような態度をとってしまえば、提案者自らが、説得の熱意を失い、合意形成の過程を放棄したとも受け止められかねない。このような観点から、今回の安倍総理の「これでは何時間やったって同じじゃないですか。こんな議論をやっていたんでは何時間やったって同じですよ、それは」との答弁は、法案の提案者として極めて不適切なものであり、この発言をしたことを反省、謝罪し、撤回すべきと考える。これに対する政府の見解を示されたい。
七 安倍総理は、本委員会で、「私は事実を述べているわけでありまして、そうやって根拠に基づかない批判をしたって、皆さんに対する支持は上がりませんよ。それははっきりと申し上げておきたいと思います」とも答弁しているが、各政党にはそれぞれの主張、見解があり、それに基づくとともに、各議員の判断で国会での質疑を行っている。各党の主張が根拠に基づくか基づかないかは安倍総理が独自に判断すべきものではなく、このような発言は、それぞれの政党の重要な政策、主張を否定しかねないものである。また民進党の政党支持率は、民進党所属議員の国会活動などの政治活動を通じて向上させるべきもので、自由民主党総裁である安倍総理が直接的に関与するものでも、できるものでもなく、常々安倍総理は「行政府の長」として発言していると述べているし、内閣総理大臣としての則を超えた政党への侮辱であろう。この発言は内閣総理大臣として品格に欠け、極めて不適切なものであり、この発言をしたことそのものを反省、謝罪し、撤回すべきと考える。これに対する政府の見解を示されたい。
八 安倍総理の国会での答弁には、日本国憲法の主旨を否定するかのようなものがしばしば見出される。問四で質したように、日本国憲法第六十三条、第七十二条のような国会と内閣の関係における立憲主義の基本的な部分を軽んじるものである。激高のあまり、言ってはいけないことを言っているという感がぬぐいきれない。このような安倍総理の国会での態度に猛省を促すが、反省、謝罪する気持ちはあるのか。見解を示されたい。
右質問する。