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平成二十九年二月十三日提出
質問第六七号

就籍ならざる無戸籍者に関する質問主意書

提出者  逢坂誠二




就籍ならざる無戸籍者に関する質問主意書


 戸籍は、人の出生から死亡に至るまでの親族関係を登録公証するもので、日本国民について編製され、日本国籍をも公証する唯一の制度であり、全ての日本人について編製されるべきものである。戸籍法に規定されている戸籍創設の手続きは、出生届を出す、あるいは就籍許可を得る、のいずれかがある。
 その手続きは、大正五年六月七日付け司法省民第四六五号民事局長回答により、届出義務者がある場合は出生届によらせ、届出義務者がない場合は就籍によらせるべきであることが先例とされている。
 現在、届出義務者が現存するのかが不明のため出生届の提出ができず、就籍の手続きによるしかない無戸籍の者には、自らの出生に関する十分な情報を持たないため、裁判所の就籍許可が得られず、結果として無戸籍のまま一生を終えなければならないという事態が生じている。
 本来、無戸籍であることを理由に日本国憲法で保障されているさまざまな基本的人権が侵害されることはあってはならないが、現実にはさまざまな不便や制限を生む。政府としても、その存在を戸籍上把握していない無戸籍の者が現に国内に少なからず存在することは責務を果たしていないと思われる。
 このような観点から以下質問する。

一 昭和二十年の終戦以降、昭和四十年前後までの就籍者には、南樺太等に本籍地を持ち、戦後本籍地を失ったものが多いと承知している。その就籍手続きは昭和四十年前後でほぼ落着き、それ以後の就籍申し立て者はそれ以外の理由であろうと推測する。昭和四十年以降の就籍許可の裁判手続きを行った件数とその理由、成立件数、また却下された件数を年次ごとに示されたい。
二 日本においては、出生届という戸籍法上の手続きを踏むことによって出生登録がなされる。出生届による戸籍登録を経ることが日本国籍の取得となり、法的に「国民」となり、同時に住民登録を受ける。このため、無戸籍の者は出生登録を受けられないことにより、法的には、「国民」としても、「住民」としても、地位と権利を認められない存在になる。理由の如何を問わず、就籍を認められなかった無戸籍の者は、日本国憲法あるいは日本の法令上「国民」であるか、否か。政府の見解を示されたい。
三 二に関連して、日本国憲法でいう「国民」であるとすれば、それはどのような法的根拠によるのか。政府の見解を示されたい。
四 現在わが国に少なからず存在する無国籍の者は、戸籍法上、日本国籍を持たず、ましてや外国の国籍も持っていない。かかる事例において、日本国民であることも外国国籍を保有することも確認できない者が日本に居住、滞在することは、わが国の法令上のどの法律により担保されるのか。政府の見解を示されたい。
五 就籍が認められず、日本人であることが確認できない無戸籍の者は、非日本国民として、難民申請ができるか、否か。政府の見解を示されたい。
六 日本に一定期間以上滞在する外国人は外国人登録を行うことで、住民票を得る。その外国人の生活の便宜向上をはかるとともに、国としてその所在を把握することが、危機管理の観点から見ても必要なことであるためと理解する。一方、無戸籍の者については、実態把握につとめるという一方で、暫定的であれ登録制度を作らず、事実上、放置状態としているのは、外国人登録を行っている外国人のように、その者の生活の便宜向上をはかるとともに、国としてその所在を把握し、危機管理を行う視点がないと理解して良いか。政府の見解を示されたい。
七 就籍許可申請者が日本国籍であることを証明するための確証性のある証拠資料が十分に備わっていない場合でも就学に達する以前の年齢であれば、戸籍法第五十七条に基づいて「棄児」として扱われ、簡易に戸籍が創設される。棄児は、親が誰なのか判明しない以上、「日本人」としての血統を客観的に確認できないものの、日本国内で発見されたという理由で属地主義が適用され、真に出生届が出されていないのか、また届出義務者が存在しないのか、明白かつ客観的な証拠資料が備わっていなくても「棄児発見調書」に基づいて戸籍が創設され、日本国籍を取得する。現行制度は、外貌からみて明らかに「日本人」の子ではないと推定される乳幼児や、真正の無戸籍であるのか定かでない迷子や浮浪児でも、日本で「棄児」として生まれたものと認められれば、無国籍発生の防止という人道的見地から戸籍に登録し、「日本国籍」を取得させるものとなっている。また、年少の「棄児」を保護して創設される戸籍というのは、その後に父母の引き取りによって消除されることを期待してのあくまで暫定的なものというのが戸籍法の思想であると考えられている。つまり、「棄児」に対して認められる寛容な戸籍創設は、人道的見地から要求される暫定的な性格をもつものであろう。このような現行制度を踏まえ、就学の年齢に達した以降の無戸籍の者についても、人道的見地から、戸籍を創設させて日本国民としての地位および権利を保障することが妥当であると考えるが、政府の見解を示されたい。
八 わが国も批准している、「児童の権利条約」の第七条第一項では、「児童は、出生の後直ちに登録される。児童は、出生の時から氏名を有する権利及び国籍を取得する権利を有する」と規定されている。このような国際規範に照らしてみれば、日本における無戸籍の者は、国家が義務づけられている出生登録の権利保障から疎外され、児童の権利条約にも違反し、重大な人権侵害であると考えるが、政府の見解を示されたい。

 右質問する。



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