質問本文情報
平成二十九年三月三日提出質問第一〇四号
内閣総理大臣が憲法改正を要請することに関する質問主意書
提出者 逢坂誠二
内閣総理大臣が憲法改正を要請することに関する質問主意書
「内閣総理大臣が国会に対して憲法改正の議論を促すことのできる根拠に関する質問主意書」(質問第一六号、平成二十九年一月二十三日提出)において、安倍総理の「憲法施行七十年の節目に当たり、私たちの子や孫、未来を生きる世代のため、次なる七十年に向かって、日本をどのような国にしていくのか。その案を国民に提示するため、憲法審査会で具体的な議論を深めようではありませんか」(平成二十九年一月二十日の衆議院本会議における施政方針演説)(以下、「本発言」という。)について、「内閣総理大臣は、行政府の長であり、何らかの国会の議論のあり方を促すのは、三権分立の観点から適切ではない」として、政府の見解を問うた。
これに対して答弁書(内閣衆質一九三第一六号)において、「内閣総理大臣は、憲法第六十三条の規定に基づき議院に出席することができ、また、国会法(昭和二十二年法律第七十九号)第七十条の規定に基づき、内閣総理大臣が議院の会議又は委員会において発言しようとするときは、議長又は委員長に通告した上で行うものとされている。議院の会議又は委員会において、憲法第六十七条の規定に基づき国会議員の中から指名された内閣総理大臣が、憲法に関する事柄を含め、政治上の見解、行政上の事項等について説明を行い、国会に対して議論を呼び掛けることは禁じられているものではなく、三権分立の趣旨に反するものではないと考えている」ことが示された。
この答弁に関し疑義があるので、以下質問する。
日本国憲法第六十三条、「内閣総理大臣その他の国務大臣は、両議院の一に議席を有すると有しないとにかかはらず、何時でも議案について発言するため議院に出席することができる。又、答弁又は説明のため出席を求められたときは、出席しなければならない」。
国会法第七十条、「内閣総理大臣その他の国務大臣並びに内閣官房副長官、副大臣及び大臣政務官並びに政府特別補佐人が、議院の会議又は委員会において発言しようとするときは、議長又は委員長に通告しなければならない」。
日本国憲法第六十七条、「内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で、これを指名する。この指名は、他のすべての案件に先だつて、これを行ふ(以下、省略)」。
政府が、さし示すこれらの三つの条文は、直接の三権分立に関する規定ではなく、単に総理大臣の議院への出席義務、発言のルール、内閣総理大臣の指名議決の件を定めているに過ぎない。これらを根拠として、行政府の長である総理大臣が国会に対して憲法改正を呼びかけることが、三権分立に反しないとする理由は判然としない。本発言が、なぜ三権分立の趣旨に反しないとの見解に至るのか。その理由を改めて明らかにされたい。
二 本発言が三権分立の趣旨に反しないとするのが政府の見解であるが、本発言において、「日本をどのような国にしていくのか。その案を国民に提示するため、憲法審査会で具体的な議論を深めようではありませんか」と発言することも、三権分立の趣旨に反することにはならないのか。政府の見解を明らかにされたい。
三 一般論として、行政府の長が立法府に対して、憲法改正の議論を促すことは、三権分立の趣旨に一切反することにならないのか。政府の見解を明らかにされたい。
四 いわゆる「三権分立」について日本国憲法には明示的な規定はないと承知している。答弁書で日本国憲法および国会法の三つの条文を引用しつつ、「三権分立の趣旨に反するものではないと考えている」と示しているが、政府は日本国憲法のどの条文から「三権分立の趣旨」を導き出し、それが、本発言が「三権分立の趣旨に反するものではない」とする根拠となると考えるのか。見解を示されたい。
右質問する。