質問本文情報
平成二十九年四月二十五日提出質問第二六〇号
国際組織犯罪防止条約の留保付き批准に関する質問主意書
提出者 逢坂誠二
国際組織犯罪防止条約の留保付き批准に関する質問主意書
外務省はホームページ上で、国際組織犯罪対策に関連して、「米国の留保についての政府の考え方」として、「国際組織犯罪防止条約に関し、「米国は一部の州では極めて限定された共謀罪の法制しかないことを理由に留保を付して条約を批准している」との報道がなされたことがあります。この米国の留保についての政府の考え方は、以下の通りです」として、政府の見解(「本見解」という。)を示している。
これについて疑義があるので、以下質問する。
二 本見解でいう「米国は連邦制をとっており、条約締結に当たり、憲法上の連邦と州との間の権限関係と整合性をもたせるとの観点から、留保・宣言を行っています」とは、具体的にどのような手続きがなされているのか。
三 本見解でいう、「米国政府より、本条約で犯罪化が求められている行為について、連邦法によっても州法によっても犯罪とされていない部分はほとんどないという回答」について、ほとんどないということは、全くないというわけではないと承知するが、具体的には、「本条約で犯罪化が求められている行為」にもかかわらず、「連邦法によっても州法によっても犯罪とされていない部分」はどの程度なのか。その「行為」の数について明示されたい。
四 政府は、国際組織犯罪防止条約は例外なく共謀罪(又は参加罪)の立法を要求していると考えているのか。
五 「本条約で犯罪化が求められている行為について、連邦法によっても州法によっても犯罪とされていない部分はほとんどない」状態であれば、留保付きでも国際組織犯罪防止条約を批准できるとすれば、わが国においても国際組織犯罪防止条約の対象犯罪について、個別にループ・ホール(処罰の抜け穴)をなくすような立法措置を行うことで、テロ等準備罪法案を成立させずとも、留保付きで国際組織犯罪防止条約を批准できるのではないか。
六 わが国の刑事法制では、既に共謀罪や広範な予備罪がある。例えば、爆発物取締罰則第四条は、爆発物取締罰則第一条の爆発物使用に関する共謀を処罰しており、銃砲刀剣類所持等取締法は、銃器の単純所持だけでも処罰される。これらは、その共謀共同正犯についても処罰が可能である。政府は、国際組織犯罪防止条約の批准に関して、現行法ではどのようなループ・ホールがあると考えているのか。具体的に示されたい。
七 国際組織犯罪防止条約第十六条7では、「犯罪人引渡しは、請求を受けた締約国の国内法に定める条件又は適用可能な犯罪人引渡条約に定める条件に従う。これらの条件には、特に、犯罪人引渡しのために最低限度必要とされる刑に関する条件及び請求を受けた締約国が犯罪人引渡しを拒否することができる理由を含む」と示されており、死刑廃止国が死刑残置国に犯罪人引渡しを拒否することができる規定がある。わが国で多数の死傷者を発生させた爆弾テロなどの被疑者が死刑廃止国に逃亡し、現地の警察に身柄を拘束された場合、当該国は日本へのこの爆弾テロの被疑者引渡しを拒むことができる。テロ等準備罪法案の成立はテロ犯罪の防止のために不可欠であると言いつつも、国際組織犯罪防止条約第十六条7の規定を見る限りにおいても、テロ等準備罪法案がテロ対策に十分に機能するとは思われない。政府の見解を示されたい。
八 七の事案が生じた場合、政府は被疑者の引渡しを死刑廃止国にどのように求めていくのか。
右質問する。