質問本文情報
平成二十九年五月十一日提出質問第二九五号
立憲主義的統制に反する法務大臣の答弁姿勢に関する質問主意書
提出者 逢坂誠二
立憲主義的統制に反する法務大臣の答弁姿勢に関する質問主意書
平成二十九年五月八日に行われた衆議院予算委員会の審議の中で、法務大臣は、逢坂誠二の質問に対して十分な答弁ができないため、予算委員会の与党理事が理事席から駆け寄り、法務大臣に助言を与える行為や、理事席から法務大臣に対する助言を行い、法務大臣がそのまま答弁するというあるまじき現象が引き起こされた。
当該事実に関して、五月九日の朝日新聞は、「民進党の逢坂誠二氏に対する答弁内容を自民党の(略)氏と確認しながら答弁に向かう金田勝年法相」とその状況を撮影した写真とともに報じている。
このような法務大臣と予算委員会の与党理事とが一体化した答弁は、権力分立という立憲主義的統制を踏みにじるものであり看過できない。かかる観点から、以下質問する。
二 一に関連して、政府は、予算委員会の与党理事が理事席から不規則発言という形で法務大臣に対する助言を行い、法務大臣がその助言を受けて答弁するという事実があったことを承知しているか。
三 日本国憲法第六十三条では「内閣総理大臣その他の国務大臣は」、「答弁又は説明のため出席を求められたときは、出席しなければならない」と規定され、議案について議員が説明を求めたときには、「出席」し「答弁又は説明」しなければならない。しかしながら、当該大臣に十分な説明能力がないため、予算委員会の与党理事が理事席から駆けつけ、当該大臣がその答弁のための助言を受け入れることは、日本国憲法第六十三条で保障される議員の質問権を阻害し、違憲の疑いがあるものではないか。政府の見解を示されたい。
四 内閣提出法案に関して、当該大臣に十分な説明能力がないため、予算委員会の与党理事が不安視し、助言を行うために理事席から当該大臣のもとに駆けつけたとしても、権力分立の観点から、拒否すべきであったのではないか。
五 日本国憲法は明示的に三権分立に関する条文を持たないものの、立憲主義的要請から、行政、立法、司法の三権が相互に抑制と均衡し合っている。この中で、行政と立法、すなわち、政府と国会は相互に抑制と均衡を行うことで、日本国憲法の予定する立憲主義的統制を果たしている。かかる観点からいえば、国会に内閣が提出した法案に関して、その説明担当者である所管大臣が、質疑を行っている委員会の理事の助言を受け入れることは、立憲主義的統制を否定することであり、政府は猛省し、二度とこのようなことが起きないことを国会に陳謝すべきではないか。見解を示されたい。
六 五に関して、五月八日に行われた衆議院予算委員会の審議の中での金田法務大臣の行為は、日本国憲法第六十三条及び第六十六条第三項に違反し、憲法違反ではないか。
七 内閣法第十条の「主任の国務大臣に事故のあるとき、又は主任の国務大臣が欠けたときは、内閣総理大臣又はその指定する国務大臣が、臨時に、その主任の国務大臣の職務を行う」でいうところの「事故」とは、具体的にはどのような状態であるのか。その「国務大臣」にどのような状態が生じていることなのか。政府の見解を示されたい。
八 「事故」とは、例えば、「物事の正常な活動、進行を妨げる不慮の事態」(大辞泉)であると承知している。「主任の国務大臣」が所管する法案の内容を十分理解せず、予算委員会の与党理事が不安視し、助言を行うために理事席から当該大臣のもとに駆けつけるに至る状態は、国民にとっては、もはや「物事の正常な活動、進行を妨げる不慮の事態」に達しており、内閣法第十条でいう「事故」に相当するのではないか。政府の見解を示されたい。
九 八に関して、金田法務大臣の答弁姿勢は、もはや「物事の正常な活動、進行を妨げる不慮の事態」に達し、内閣法第十条でいう「事故」に相当し、「内閣総理大臣又はその指定する国務大臣が、臨時に、その主任の国務大臣の職務を行う」べきではないか。政府の見解を示されたい。
右質問する。