質問本文情報
平成二十九年五月二十二日提出質問第三三三号
国連人権理事会の特別報告者に対する政府の定義に関する質問主意書
提出者 逢坂誠二
国連人権理事会の特別報告者に対する政府の定義に関する質問主意書
五月二十二日、菅官房長官は記者会見で、人権状況などを調査・監視する国連特別報告者が「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案はプライバシーや表現の自由を制約するおそれがあるとの書簡を安倍晋三首相に送ったことについて、「不適切なものであり、強く抗議を行っている」と述べた。
また、菅官房長官は「特別報告者という立場は独立した個人の資格で人権状況の調査報告を行う立場であり、国連の立場を反映するものではない」と強調し、「プライバシーの権利や表現の自由などを不当に制約する恣意的運用がなされるということはまったく当たらない」との見方を示した上で、この書簡に対し「政府や外務省が直接説明する機会はない。公開書簡で一方的に発出した。法案は百八十七の国と地域が締結する条約の締結に必要な国内法整備だ」と反論したと承知している。
これを踏まえて、以下質問する。
二 外務省ホームページによると、平成二十八年十一月二十五日、岸信夫外務副大臣がトマス・オヘア・キンタナ国連北朝鮮人権状況特別報告者の表敬を受けたことが公表されているが、これは事実か。
三 二に関連して、「冒頭、岸外務副大臣から、本年八月の特別報告者としての就任、また、同報告者としての初の訪日を歓迎するとともに、人権専門家として豊富な経験を有する同報告者の活動に日本として全面的に協力する旨述べました。また、日本は、同報告者とも緊密に連携しつつ、拉致問題の早期解決に向け、引き続き全力を尽くしていく旨述べました」ことが公表されているが、これは事実か。
四 政府は、安倍政権の政策を遂行するに有益な特別報告者には「同報告者とも緊密に連携しつつ、拉致問題の早期解決に向け、引き続き全力を尽くしていく」とするものの、ケナタッチ氏の書簡については、「不適切なものであり、強く抗議を行っている」と指摘しているが、当該特別報告者の示している見解により、政府の都合の良いようにその取扱いを変えているのではないか。見解を示されたい。
五 安倍政権の政策遂行に資するか否かに関わらず、国連人権理事会という権威ある機関の任命した特別報告者に対しては、政府は真摯に対応すべきではないか。見解を示されたい。
六 菅官房長官は、「政府や外務省が直接説明する機会はない。公開書簡で一方的に発出した」と批判しているものの、ケナタッチ書簡では、ケナタッチ氏の「各主張の正確性に関して、追加情報または見解をお聞かせください」、「「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律」の改正法案の審議状況について情報を提供して下さい」、「国際人権法の規範および基準と法案との整合性に関して情報を提供してください」、「法案の審議に関して公的な意見参加の機会について、市民社会の代表者が法案を検討し意見を述べる機会があるかどうかを含め、その詳細を提供してください」等、むしろ「政府や外務省が直接説明する機会」を与え、情報提供、対話を求めている。菅官房長官のいう「公開書簡で一方的に発出した」との批判は事実誤認ではないか。政府の見解を示されたい。
七 ケナタッチ書簡で要請されるような、日本政府がケナタッチ氏に「直接説明する機会」や情報提供、対話は予定されているのか。政府の見解を示されたい。
八 国連人権理事会の特別報告者は、国際社会における「人権専門家として豊富な経験を有する」者として認められていると解すべきであり、「同報告者の活動に日本として全面的に協力する」ことが、どのような分野の特別報告者に対してもなされるべきであろう。かかる観点からも、まずは、ケナタッチ氏の「活動に日本として全面的に協力する」と表明すべきであり、「不適切なものであり、強く抗議を行っている」と表明することは誤りではないか。政府の見解を示されたい。
右質問する。