答弁本文情報
平成二十九年五月三十日受領答弁第三三三号
内閣衆質一九三第三三三号
平成二十九年五月三十日
衆議院議長 大島理森 殿
衆議院議員逢坂誠二君提出国連人権理事会の特別報告者に対する政府の定義に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員逢坂誠二君提出国連人権理事会の特別報告者に対する政府の定義に関する質問に対する答弁書
一について
国際連合人権理事会(以下「人権理事会」という。)がその決議に基づき設置した特別報告者(以下「特別報告者」という。)は、特定の国の状況又は特定の人権に関するテーマについて調査報告を行うために人権理事会から個人としての資格で任命された独立の専門家であるところ、特別報告者の見解は、当該個人としての資格で述べられるものであり、国際連合又はその機関である人権理事会としての見解ではないと認識している。
平成二十八年十一月二十五日、岸外務副大臣は、トマス・オヘア・キンタナ北朝鮮人権状況特別報告者の表敬を受けており、外務省ホームページで公開している同副大臣の発言は、御指摘のとおりである。
現在国会で審議中の組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案による改正後の組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(平成十一年法律第百三十六号。以下「改正後組織的犯罪処罰法」という。)第六条の二第一項又は第二項の罪(以下「本罪」という。)は、国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約第五条1が定める犯罪化の義務を履行するために、同条1(a)(@)に規定する行為を犯罪とするものであり、本罪においては、過去の国会における御議論を踏まえて処罰の対象を限定するために、テロリズム集団、暴力団、薬物密売組織等の「その結合関係の基礎としての共同の目的が別表第三に掲げる罪を実行することにあるもの」を「組織的犯罪集団」と定義し、かつ、本罪の対象犯罪につき死刑又は無期若しくは長期四年以上の懲役若しくは禁錮の刑が定められている罪のうち、我が国における犯罪情勢等に照らして「組織的犯罪集団」が関与して遂行が計画されることが現実的に想定されるものに限定して改正後組織的犯罪処罰法別表第四に掲げつつ、同表に掲げる罪に当たる行為で、「組織的犯罪集団」の「団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるもの」又は「組織的犯罪集団に不正権益を得させ、又は・・・組織的犯罪集団の不正権益を維持し、若しくは拡大する目的で行われるもの」の遂行を「二人以上で計画」し、「その計画をした者のいずれかによりその計画に基づき資金又は物品の手配、関係場所の下見その他の計画をした犯罪を実行するための準備行為が行われた」場合に限り処罰の対象とするものとしており、「組織的犯罪集団」の活動と関わりのない私生活上の行為や表現行為等が処罰の対象となるものではないことを明確にしている。また、我が国における捜査及び公判は刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)の定める適正な手続に従って行われるものであり、故意によりこのような「二人以上で計画」する行為をした者であるとの具体的嫌疑が存する場合でなければ本罪について捜査の対象となることはなく、令状については、請求を受けた裁判官が、独立した立場から慎重に審査してその発付の可否を判断することとなる。
お尋ねのジョゼフ・カンナタチ特別報告者の書簡は、我が国政府からの事前の説明の機会を設けることなく公開書簡として一方的に発出されたものであり、本罪について、テロ及び組織犯罪と無関係と思われる広汎な罪が対象犯罪とされており、かつ、その成立要件があいまいで、恣意的な適用の危険性が懸念される旨を述べるなど、その内容には誤解に基づくと考えられる点も多く、我が国政府として受け入れ難い内容のものであったことから、同特別報告者に対し、このような内容の書簡を一方的に公開書簡として発出したことは不適切である旨を指摘して強く抗議したものであり、「政府の都合の良いようにその取扱いを変えている」あるいは「菅官房長官のいう「公開書簡で一方的に発出した」との批判は事実誤認ではないか」との御指摘は当たらない。
その上で、お尋ねの書簡については、国際連合又はその機関である人権理事会の見解を述べたものではなく、また、先に述べたとおりその内容には誤解に基づくと考えられる点が多い。政府としては、同書簡で示された指摘の内容を現在精査しているところであり、今後しかるべく対応する考えである。