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平成三十年十二月五日提出質問第一二一号
幼児教育の無償化に関する質問主意書
提出者 古本伸一郎
幼児教育の無償化に関する質問主意書
安倍政権は平成二十九年の衆議院議員総選挙において、平成二十四年の「社会保障と税の一体改革」で決定した消費増税分の税収の使い道の変更について、国民の信を問うた。将来世代への借金先送りを改めるためにも「財政再建」に充てるとされていた金額の一部を「幼児教育の無償化」に充てることがその変更の目玉であった。その後閣議決定された「新しい経済政策パッケージ」(平成二十九年十二月八日)には、その具体的な政策として、@三歳から五歳までの全ての子供たちの幼稚園・保育所・認定こども園の費用を無償化する、A〇歳から二歳児については当面、住民税非課税世帯を対象として無償化を進める、と記されている。
少子化の進むわが国にとって、消費増税分の貴重な税収を少子化対策に真に効き目のある政策に活用することは極めて重要である。かつて民主党政権下において「子ども手当」が創設された際、現金給付が本当に少子化対策となるのか否かが議論となった。その歴史的経緯も踏まえ、今回の幼児教育の無償化について、平成二十四年の「社会保障と税の一体改革」において立法府の意思として合意された三党合意を覆してまで使途を変更し実施するならば、政府にはどのように少子化対策に繋がるのか説明する責任があると考える。
以上の問題意識の下、幼児教育の無償化政策の効果について、以下質問する。
二 三歳から五歳までの幼稚園・保育所・認定こども園の利用者負担に関しては、既に生活保護世帯は無償化、また住民税非課税世帯は第一子を除き無償化が実施されている。それ以上の所得の世帯については所得区分ごとに累進性を設け、所得に合わせた負担料となっている。一方で、内閣府による「結婚・家族形成に関する意識調査」によれば、「子供が欲しくない理由」として「育児にかかる費用が心配」と答えた割合は年収四百万円未満の夫婦が最も高く、年収が上がっていくにつれて、その割合は下がっている。すなわち低所得世帯は金銭的な負担を理由に子供をもうけない割合が高いが、その大半が既に無償化の対象となっている。このため無償化政策は出生率を上昇させる少子化対策とはならないのではないか、お尋ねする。
また、収入の高い世帯にとっては、金銭的な問題以外の理由(例えば「現時点で、もともと欲しいと思っていた人数の子どもがいる」)で子供をもうけない割合が比較的高い。以上より、幼児教育の無償化政策は、既に子供のいる世帯については何らかの家計支援にはなるが、新たに子供をもうけるインセンティブになりにくいのではないか、お尋ねする。また第一子・第二子・第三子以降を一律に無償化するのではなく、子の数に応じて傾斜配分をした方が多産となる契機になるのではないか、お尋ねする。
三 今回の幼児教育の無償化は、〇歳から二歳までの子供に対しては「当面、住民税非課税世帯を対象として無償化を進める」としており、三歳から五歳までの子どもと比較して支援が十分となっていない。内閣府による「結婚・家族形成に関する意識調査」によれば、「子供が欲しくない理由」のうち経済的な理由以外でとりわけ割合が高いのは、女性で正規雇用者の「仕事にさしさわりが出そう・仕事を続けるのが難しくなりそう」となっている。少子化対策としては、育児負担が最も重い〇歳から二歳までの子育て期間に、女性の職場復帰をしやすくすることで、キャリア形成にマイナスにならずに、出生率の向上も見込めると考える。それゆえ例えばベビーシッターや、フランスにおける「メゾン・ママ」(マンションの一室を借り上げ、複数の保育ママが共同で保育する仕組み)等、〇歳から二歳児までの幼児期において働く親を支えるサービス給付の方が、第二・第三子をもうける後押しになると考えられる。以上より限られた財源の中では、無償化や手当支給より、子育て支援のサービス支給の方がより効果的な少子化対策になると考えるか、如何か。
右質問する。