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平成三十一年二月八日提出
質問第三三号

安倍首相の「経済の実態を直接示しているのはむしろ総雇用者所得」という答弁に関する質問主意書

提出者  柚木道義




安倍首相の「経済の実態を直接示しているのはむしろ総雇用者所得」という答弁に関する質問主意書


一 毎月勤労統計調査の平均賃金の算出に関して、二〇〇四年から二〇一七年まで、厚生労働省は賃金が高い傾向にある大規模事業者が多い東京都内約千四百事業所のうち三分の一だけを抽出して調べていたことが明らかになり、このことで全国の平均賃金額が低く算出されていた。
 安倍晋三内閣総理大臣は二〇一九年二月四日の衆議院予算委員会にて小川淳也議員への答弁として「もし東京の五百人以上の事業所をちゃんととっていれば、我々が政権をとった後の指標はもっとよくなっているんですよ。景気回復は東京からよくなっていくし、どちらかというとやはり大手の方からよくなっていきますから、もっとよく差が出てくるんですよ。」と述べ、常用雇用五百人以上の千四百事業所について全数調査が適切に行われていれば、問題になった二〇一八年の賃金上昇率も高くなっていたはずだと解しうる発言をしている。
 しかしながら、五百人以上の事業所のデータを全て入れて補正すれば二〇一七年以前の名目平均賃金が高くなるため、むしろ補正後の二〇一八年の名目賃金上昇率はこれまで発表していた数字よりも低く出るはずであり、この理解で間違いないか。安倍首相の答弁「もっとよく差が出てくるんですよ」は「二〇一八年の名目賃金上昇率はさらに低くなる」と訂正すべきではないか。
二 「(二〇一八年六月の)名目賃金の伸びが三・六パーセントと二十一年ぶりの高水準」と毎月勤労統計調査の速報値にもとづいてマスメディア各社が二〇一八年八月に報じたが、確報値では三・三パーセントアップにとどまった。
 しかしこの名目賃金の伸び率三・三パーセントは異なる企業の従業員の賃金を比較したものを三倍増ししたものであって、三倍増しをやめて再集計すれば二・八パーセント、三倍増しもやめた上で同じ企業(共通事業所)の従業員の給与を比較すれば名目賃金の伸びは一・四パーセントにとどまることを二〇一九年二月五日の衆議院予算委員会にて玉木雄一郎議員が質問で述べた。他の月についても同様に計算しなおすと実質賃金の昨年一月から十一月までのトータルの伸びがマイナスになると野党は指摘している。根本匠厚生労働大臣も野党の計算結果について認める答弁をしている。
 毎月勤労統計調査の「統計不正」に関連して安倍晋三総理大臣は二〇一九年二月四日の衆議院予算委員会にて「経済の実態を直接示しているかどうかということについて、私はむしろそれは総雇用者所得で見るべき」「総雇用者所得においては、これは名目においても実質においてもプラスで推移をしているわけでございます」と答弁している。
 1 毎月勤労統計調査は統計法に定める基幹統計の一つとして重要な位置づけがされているが、総雇用者所得は基幹統計に位置づけられる正式な統計ではなく、あくまで参考のために計算される試算でしかないという理解で間違いないか。また「経済の実態を直接示す」と安倍首相が発言することから、総雇用者所得を基幹統計に位置づける考えはあるか。
 2 総雇用者所得は、内閣府ホームページによれば、厚生労働省による「毎月勤労統計調査」の一人あたり名目賃金に、総務省「労働力調査」の非農林雇用者数を乗じることで作成されている。毎月勤労統計調査の賃金データ(本系列)が二〇一八年一月から変わったことに伴い、二〇一七年十二月以前の総雇用者所得も再計算されているが、二〇一九年二月八日時点でこの再計算は二〇一七年と二〇一八年の二年分しか出来上がっていないという理解で間違いないか。
 3 2に関連し、二〇一九年二月八日現在公表されている総雇用者所得のデータは二〇一七年以降と二〇一六年以前で計算方法が異なるという理解で間違いないか。
 4 二〇一九年二月四日の衆議院予算委員会にて二〇一八年の毎月勤労統計調査による名目賃金の計算方法に問題があったという野党の指摘を受け、根本匠厚生労働大臣も参考値に関する野党の計算結果を認めたのだから、安倍首相が重ねて引用する二〇一八年の総雇用者所得も、より「経済の実態を表す」ために当然参考値により再度計算しなおすべきだと考えるため、いつまでに再計算の結果が示せるか。なお、再度計算できないのであれば野党が主張するように「賃金が増えていないことが明らかになり、アベノミクスの失敗が明白になることを恐れて公表しない」のだと言わざるをえない。
 5 厚労省「毎月勤労統計調査」では調査対象が常用雇用者五人以上の全国の事業所約百九十万のうち抽出した三万三千の事業所であるのに対して、総務省「労働力調査」による「非農林雇用者数」には常用雇用者四人以下の事業所で働く雇用者が含まれ、さらに公務員も含まれる。
  五人以上の民間事業所で働く労働者の賃金から計算した「名目賃金」に、四人以下のより小規模で働く労働者や公務員も合わせた人数をかけることで総雇用者所得が算出されるが、異なる母集団に関する数字を掛け合わせることは「経済の実態を表している」とは言い難いのではないか。
 6 安倍首相は二〇一九年二月五日の衆議院予算委員会においてこう発言している。「それは、十人の、例えば事業所であったとします。そこが仕事が忙しくなって、パートの方を二人雇ったとします。しかし、当然、パートの方ですから、賃金は低い。そうなりますと、そこでの人件費を十二で割ると、実は、仕事が忙しくなる前の方がよかったということになるわけであります。」「いつも私たちが言っているのは(略)この(略)方が経済の実態をあらわしているのではないかということで総雇用者所得ということを申し上げてきたわけでありまして、総雇用者所得におきましては、名目においても実質においてもこれはプラスになっているということはずっと申し上げてきて、こういう議論はずっとしてきたわけでございます。」
  確かに雇用者数は二〇一七年と二〇一八年を比較して正規雇用も非正規雇用も増えている。しかしながら正規雇用の労働者が三千四百七十八万人なのに対して非正規雇用労働者が二千百五十六万人で(総務省労働力調査(基本統計)二〇一八年十二月分(速報))、正規雇用の労働者の賃金が経済に与える影響の方が大きいにも関わらず、賃金の上昇率を参考値でみるとパートタイム労働者が一・六パーセント増に対して正規雇用労働者は〇・八パーセントにとどまる(毎月勤労統計調査 平成三十年十一月分結果確報)。正規雇用労働者の賃金が増えないから仕方なくパートや派遣労働などで配偶者が働かねばならない状況も見受けられるがその点については認めるか。正規雇用労働者の実質賃金を引き上げるようにしなければ日本経済は好転しないのではないか。

 右質問する。



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