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令和元年六月十九日提出
質問第二六〇号

原子力規制委員会が職業上の放射線防護のための国際基準の和訳を非公開としていることに関する再質問主意書

提出者  阿部知子




原子力規制委員会が職業上の放射線防護のための国際基準の和訳を非公開としていることに関する再質問主意書


 原子力規制委員会が職業上の放射線防護のための国際基準の和訳を非公開としていることに関する質問主意書(以後、前質問)による答弁で、原子力規制委員会は既に、被ばくから労働者を保護するための新たな基準のドラフトであるDS453も、内容が確定したGSG−7も委託事業として和訳をさせ入手しているが、IAEA(国際原子力機関)許諾を理由に、そのどちらも現時点では非公開としていることが分かった。
 また、それに先立っては、同基準をテーマに、一民間企業である株式会社千代田テクノルが「我が国の了解の下で」、五日間の国際ワークショップを二〇一七年十月にIAEAと主催したことも確認できた。その千代田テクノルは「政府を代表して」開催したとのレポートを載せた情報誌を発行しており、「了解」と「代表」の間で認識にズレがあるなど、不可解な点もある。
 よって、再質問する。

一 前質問二の1「規制庁がDS453は政府および原子力規制庁の施策にとって重要性または緊急性の高いものだと判断したのは何故か」について、政府は「原子力規制委員会として、原子力の安全の確保に関する規制活動等に関する最新の知見の一つであると判断した」と答弁したが、二〇一八年三月に既に「翻訳を行った」と書かれた時点から、少なくとも一年三か月が経過した。許諾を得る手続きはいつ開始され、その後の進捗はどうであるのか、明らかにされたい。
二 前質問三で、仮訳があるのに、それを提供できない合理的な根拠を尋ねたが、明確な答弁がなかった。重要かつ緊急なものであれば、原子力規制委員会や原子力規制庁が先んじて内部で利用するだけではなく、国会にも仮訳段階で提供できることを、国がIAEAに確認すべきである。その担当は外務省か原子力規制委員会か、明らかにされたい。
三 前質問四への答弁で、DS453の翻訳は「平成二十九年度放射線対策委託費(国際放射線防護調査)事業」の全体の予算は千七百三十四万五千円の内数であるとのことである。
 1 DS453の翻訳費だけでいくらか。
 2 これには、確定版であるGSG−7の翻訳費は含まれているか。含まれていないのであれば、誰にどのように委託をしたか、また、その委託費を明らかにされたい。
 3 答弁によればDS453の翻訳は「規制の見直しの必要性の有無等を検討する際の参考」に活用しているということであり、既に業務に使われていると判断する。そうであれば翻訳は公表すべきである。参考の結果、実際に見直された点があるのかどうか、また、今後の見直しについての見通しも明らかにされたい。
四 前質問五で尋ねた二〇一八年二月一日発行の「FB News」についての答弁が不明確なので、再確認する。
 1 千代田テクノルのウェブサイトによれば、「FB News」とは、同社が毎月一回発行している「放射線安全管理総合情報誌」であるとしているが、原子力規制委員会および原子力規制庁は、この情報誌の存在を認識しているか。
 2 二〇一八年二月一日発行の「FB News」には、二〇一七年十月に五日間をかけて茨城県大洗町で開催した職業上の放射線防護に関する国際ワークショップについて、「千代田テクノルが日本政府の代理としてIAEAと共同開催した世界初の試みである」と書いてある。
  一方、政府答弁では「『日本政府の代理として』の意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の『国際ワークショップ』は、国際原子力機関の活動の一環として、我が国の了解の下で、我が国において、同機関と株式会社千代田テクノルが主催したものである」と答弁を行っている。
  @ 千代田テクノルが「日本政府の代理としてIAEAと共同開催した」との認識は、千代田テクノルの勘違いで、政府には「代理」をさせた認識はないのか。
  A 「我が国の了解の下で」とはどのような意味か。了解を与えたのは、原子力規制委員会か、原子力規制庁か、別の部署か、明確に答弁されたい。
  B 原子力規制庁と千代田テクノルとの関係性は不明瞭で、本来、原子力規制庁の業務とすべきIAEAとの情報共有の場を、了解してあるいは代理として千代田テクノルに行わせることは不適切であると思うが、どうか。
  C 日本政府は千代田テクノルとIAEAが主催した国際ワークショップ開催にかかる費用について千代田テクノルに支出を行った事実はあるか。またその金額を明らかにされたい。
  D 国際ワークショップには、「原子力規制庁より寺谷氏」がオブザーバーとして参加したと書かれているが、他には日本政府からは誰が参加したか。
  E 東京電力福島第一原子力発電所から講師とオブザーバーが参加したと書かれているが、講師としては何を講義したのか。
  F ワークショップ四日目に、「参加国を四つにグループ分けしたのちに各グループにDS453で述べている内容に関する命題を与え、討議を行ってもらった」とある。この討議内容について原子力規制委員会または原子力規制庁は報告を受けたか。
  G 日本政府が千代田テクノルに了解を与えて、「職業上の放射線防護」をテーマに国際ワークショップを開催したのは、何のためだったか。
五 前質問への政府答弁で既に行われていることが分かったGSG−7の和訳の許諾を得る作業はいつ始めたのか。いつまでに公開をおこなうべく調整を行っているのか。
六 IAEAが作成する基準や報告書は、通常、国連の公用語と同様の五ヶ国語に翻訳される。それらはGSG−7を含めインターネット上で公開されて世界中で共有されている。すなわち、五ヶ国語のどれかに精通する者であれば、誰でも支障なく読める。
 しかし、たとえば日本語を母国語とする多くの日本人には、アクセスはできても理解ができず、実質的な非公開状態にある。和訳されてはじめて、五ヶ国語に精通した国民と同等の情報共有が行われた状態となる。ところが、前質問への答弁で判明したのは、日本における規制者、被規制者、そして規制によって保護される者のうち、規制者は委託翻訳によってIAEAによる許諾前の和訳を入手し、「規制の見直しの必要性の有無等を検討する際の参考」に活用しているということである。
 また、規制者と規制者の一部関係者、および被規制者だけは、一民間企業である千代田テクノルがIAEAと共に主催した国際ワークショップで新たな国際基準への理解を深めていた。
 その間、本来、規制によって保護されるはずの者たちは新たに採用されるべき基準を知らされず、長期にわたって実質非公開のまま放置されている。
 1 五ヶ国語に精通する者と日本語のみを日用語としている国民等に情報格差が生じないよう、積極的に和訳を行うべきではないか。
 2 規制者と規制者の一部関係者に比べて、被規制者や保護されるべき公衆に不利益が生じないよう、和訳からその公開までの時間を可能な限り短くすべきではないか。
 3 原子力規制委員会のウェブサイトには、IAEAによって策定された新基準、その和訳公開予定日や和訳の中身などを分かりやすく一覧掲載し、アクセスし易くすべきではないか。
 4 翻訳やその許諾に関するIAEAとの合意事項があるとすれば、日本語を日用語としている国民に不利益が生じないよう内容を改めるべきではないか。
七 冒頭で触れたレポートからは、千代田テクノルは、DS453およびGSG−7の英語版を、日本の一般国民より早く入手したことが推察でき、英語版でさえ、日本国民との情報格差があったと解される。同時点で規制庁などは英語版の情報開示に努めたのか。努めたならばその根拠を提示されたい。
 更に日本語版に関しても千代田テクノルなど一部の特定者のみに情報共有され、大多数の国民が非開示状態を強いられたと解される。原子力規制行政の根幹である国民との情報共有、理解の促進に関して、著しいマイナス、情報格差をもたらしたと思われるが政府の認識を問う。

 右質問する。



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