衆議院

メインへスキップ



質問本文情報

経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
令和三年十一月十日提出
質問第一二号

子ども総合基本法と総合的な子ども・子育て政策の必要性に関する質問主意書

提出者  早稲田ゆき




子ども総合基本法と総合的な子ども・子育て政策の必要性に関する質問主意書


 立憲民主党は子育て困窮世帯の当事者や支援団体など多くの方からいただいたご要望、ご意見をもとに、二〇二一年五月三十一日、衆議院に子どもの最善の利益が図られるための子ども施策の総合的な推進に関する法律案(子ども総合基本法案)を提出した。この法案は、子どもの貧困率を十年間で半減させることを目標に、欧州諸国と比べると半分程度の子ども・子育て予算を大幅に増やして児童手当・児童扶養手当を拡充するとともに、十八歳未満の児童にとどまらず、子どもが成人になった後の関連する施策も含め、子どもから若者まで切れ目のない支援を行い、「児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)」の理念にのっとり、全ての子どもの最善の利益が図られ、その人権が保障され、社会全体で子どもの育ちを支援する社会を実現することを目指して「子ども省」の設置を検討するものである。
 この法案と総合的な子ども・子育て政策の必要性をあきらかにするために、二〇二一年九月十七日、政策プラットフォームPoliPoliの意見交換会においていただいた当事者や支援団体からのご要望、ご意見を踏まえ、以下、質問する。

一 コロナ禍で生活が困窮し、食料支援や現金給付などのしくみへのアクセス方法などの情報が必要な、十代の単身世帯の子どもたちからの相談が急増している実態を、政府はどのように認識しているか。
二 親が一緒にいて電話できない、また電話自体に不慣れな、いわゆるZ世代以降の子どもたちから生活の困窮相談を受け付けるために、電話ではなくSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)での相談窓口を一日も早く整備すべきと考えるが、民間との連携も含め、政府の見解をあきらかにされたい。
三 文部科学省では、「二十四時間子供SOSダイヤル」を全都道府県及び指定都市教育委員会において整備しており、ヤングケアラー専門の相談窓口を設ける自治体もあるものの電話しか受け付けていないなど、SNSの活用が進んでいない現状について、どのように認識しているか。また、全国共通番号の「二十四時間子供SOSダイヤル」は、各地の教育委員会につながって主にいじめなどの教育相談を対象としており、生活困窮の相談件数が極端に少ない現状について、どのように認識しているか。そもそも受け付けなかったり、たらい回しにしているのではないか。政府の見解をあきらかにされたい。
四 子どもの貧困に関する相談体制の整備は、子どもの貧困対策の推進に関する法律を根拠に取り組まれるべきところ、二〇一九年の子供の貧困対策に関する大綱においても明記されなかった理由をあきらかにされたい。
五 子供・若者育成支援推進大綱においては、困難を有する子供・若者やその家族の支援として、SNS相談体制の充実が明記されているが、私の事務所が二〇二一年九月二十七日に問い合わせた段階で、政府のどの部署がこの施策の責任を担うのか、内閣府、厚生労働省、文部科学省の間で十分な情報共有がなされておらず、調整が図られていなかった。SNS相談体制の整備が進まない背景として、国の子ども・子育て政策における府省縦割りの弊害があるのではないか、政府の見解をあきらかにされたい。
六 子どもの貧困の連鎖を断ち切る重要な施策は教育であることは言を俟たない。立憲民主党は高等教育の無償化を目指し、まずは大学の学費半減を来たる総選挙で訴えることにしている。安倍・菅政権による格差拡大政策とコロナ禍で生活が困窮する世帯がますます増えているところ、生活保護受給世帯の子どもが世帯分離せずとも大学進学できるように、生活保護制度を見直すべきではないか。
 私たち立憲民主党は二〇一八年三月に、生活保護受給世帯の子どもが大学進学にあたり世帯分離不要とする議員立法を提出していたが、与党の賛同を得られず成立に至らなかった。また、二〇一九年五月には国会において厚生労働省の大口善徳副大臣が「生活保護費を受給しながら大学等に修学することにつきましては、(中略)認めていない」と答弁し、八神政府参考人が「生活保護法第三条に規定をいたしますこの法律により保障される最低限度の生活に、保護を受けながら大学や専門学校等へ通学することは含まれていない」と答弁しているが、コロナ禍で「生活保護は権利です」と広報する厚生労働省は、現時点においてもこの答弁を維持するつもりか。政府の見解をあきらかにされたい。
七 地域における人間関係の希薄化、核家族化の進展、虐待の連鎖、そして児童虐待による死亡で一番多いのはゼロ歳児である現状において、被虐待経験があったり、精神疾患を抱える母親等への訪問支援体制が、乳児家庭全戸訪問事業を行う四か月目以降においては不十分ではないかと考えるが、政府の見解をあきらかにされたい。
 具体的には、自治体の九割が取り組んでいる養育支援訪問事業は、保健師などの担い手不足のために必要な頻度での訪問ができていないので、わが国初の心理職の国家資格である公認心理師もその担い手に加えるなどして、悩みや不安を適時に相談でき、傾聴などの必要な支援が行えるよう体制を強化するべきではないか。また精神疾患を抱える母親への訪問診療を行っている医師の指示や訪問看護ステーションとの連携の下、PT(理学療法士)やOT(作業療法士)同様に公認心理師も訪問し、専門的な役割を果たせるよう報酬上の取扱いを検討するべきではないか。
八 安倍政権による大学無償化策として二〇二〇年度に開始された高等教育の修学支援制度は、高校卒業後三年を過ぎてしまったケースは、高卒で就労した人との公平性を理由にその対象としていない。親の虐待による被虐待児症候群からの回復に時間がかかるなどして、二十代半ばになってから大学進学しようとする者に対して、単に年齢でその支援対象から外すことは、むしろ高卒者に対して不公平であって見直すべきではないか。
 また、退学後一年以上経ってから再入学したケースもその対象としていないが、休学の場合は二年経っても三年経っても復学すれば対象となりえるにもかかわらず、経済的な理由で退学してから二年経ってから学び直ししたいと思っても支援の対象とならないのは、制度の趣旨に照らし不適切であり、コロナ禍での退学者が増えている現状も踏まえ、制度を見直すべきではないか。政府の見解をあきらかにされたい。
九 実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関として二〇一九年度より専門職大学が制度化されたが、専門職大学が十四校、専門職短大が三校、専門職学科を設置した大学が一校にとどまっており、一般の大学が専門職大学に転換した例がない現状についてどのように認識しているか。平成の三十年間で三百校も一般の大学が増えているが、今後の高等教育の質を確保していく上で、文部科学省内の縦割りを乗り越えて、一般の大学から専門職大学への転換を政策誘導する必要性について、政府の見解をあきらかにされたい。
十 子どもの虐待や貧困をなくし、ヤングケアラー問題などを解決するためには、子ども自らが自分の身を守ったり、対処できるようになったり、子どもの貧困問題の解決を求めたりできるようになることが重要である。そのためにも、早い段階から「児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)」について深く学ぶ必要があるが、現行の学習指導要領には、子どもの権利条約を教えるという記載はなく、また国会図書館による調査によれば、多くの小中学校の教科書では、条約名や批准年などを知識として学ぶ記載のみであり、これでは不十分ではないか。
 児童生徒が自分が権利の主体であることを理解し、自らの日常生活の中で権利行使できることを目的とした教育が必要であって、教員はじめ、子どもを取り巻く大人が子どもの権利について深く理解し、児童生徒がきちんと権利行使をできるような指導力を付けることが求められると考えるが、そのためにも全ての子どもが子どもの権利について学ぶことを必修化することについて、政府の見解をあきらかにされたい。

 右質問する。

経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.