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令和七年十月二十一日提出
質問第三号

東京大学における琉球人遺骨の保管状況等に関する質問主意書

提出者  上村英明




東京大学における琉球人遺骨の保管状況等に関する質問主意書


 本質問主意書において、「琉球人遺骨」と表記するのは、主に第二次世界大戦以前に、現在の東京大学を含む旧帝国大学の研究者が、琉球弧において実地調査をした際に各地から研究等の目的で持ち出した遺骨のことを指す。
 その一つに沖縄県今帰仁村にある「百按司墓」(むむじゃなばか)から京都帝国大学(現在の京都大学)医学部の助教授であった金関丈夫氏が持ち出した遺骨がある。これは長らく京都大学に保管されてきたが、二〇二五年五月に今帰仁村教育委員会に移管された。この間、遺族らの返還要求等に対応しない京都大学に対して、遺族らは二〇一八年十二月四日に訴訟を提起した。二〇二二年四月の第一審判決(京都地裁)では請求が棄却され、二〇二三年九月の第二審判決(大阪高裁)も第一審判決を支持し、控訴は棄却されたが、大阪高裁判決では、原告控訴人を「沖縄地方の先住民族である琉球民族」であると認めるとともに、先住民族の遺骨返還に係る国際的な潮流があること、遺骨が「単なるモノではない」こと、そして「ふるさとに帰すべきである」ことといった見解が付言された。遺骨返還に係る国際的な潮流と理解の基盤の一つとして、日本政府も賛成票を投じ、二〇〇七年九月十三日に国連総会で採択された「先住民族の権利に関する国際連合宣言」があり、その第十二条には先住民族が「遺骨の返還に対する権利を有する」ことが明記されている。
 一方、琉球人遺骨を保管しているのは京都大学だけではないと考えられる。東京大学においても類似の経緯がある。特に東京帝国大学(当時)の人類学者であった鳥居龍蔵氏が一九〇四年に調査のために琉球を訪れた際、琉球人遺骨を収集したことをその著書(「沖縄乃たび」)で明言している。金関氏による「琉球民俗誌」の中でも、東京帝国大学には鳥居氏が採集した琉球人遺骨が所蔵されていると記されており、現在でも東京大学には当時鳥居氏により持ち出された遺骨が保管されている可能性がある。これを踏まえて、二〇二五年六月、東京大学に対し、琉球人の人骨標本番号が記載された全ての文書を開示するよう求める請求が行われた。
 これに対して、東京大学は「琉球人の人骨標本番号が記された東大法人文書の全て」について「不存在」だとして不開示と決定し、請求者に通知した。ただし、同決定通知には「歴史的若しくは文化的な資料又は学術研究用の資料として特別の管理がされているものは、法人文書に該当しない」旨も記載されていることから、琉球人遺骨が現在東京大学に全く保管されていないということを意味しない。
 東京大学はこの件に関するメディア等の取材、また二〇二五年八月に私から行った問合せも含めて、右遺骨に関する状況について学内で調査・検討中であり、「誠意」ある対応をする旨を述べている。ただし、記録の不十分さなどから具体的な調査や保管に関する情報はまだ公表されていない。
 右状況を踏まえて、東京大学における琉球人遺骨の保管及び返還問題に関する政府の見解について、以下、質問する。

一 鳥居氏などにより持ち出された琉球人遺骨が、東京大学に保管されている可能性があることを政府は把握しているか。把握している場合、把握するに至った経緯と時期、あわせて政府としての見解を明らかにされたい。また、鳥居氏などによる琉球人遺骨の持ち出しについて、当時の刑法上の扱いについて把握しているか。明らかにされたい。
二 大阪高裁判決で示されたように、琉球人は先住民族であるという観点から捉えた場合、遺骨返還の世界的な潮流があり、国連宣言は政府に遺骨の返還などを可能にするよう努めることを求めている。これを踏まえると、日本政府としても、遺骨が遺族らに返還されるような方策を模索すべきであると考えられる。政府として、東京大学による琉球人遺骨の保管状況の把握及び返還に向けた手続の支援等を行う意思はあるか。見解を明らかにされたい。また、意思がある場合、政府の行動計画を詳細に説明されたい。
三 政府として、琉球人遺骨についてどのようなものとして理解しているのか。その見解を明らかにされたい。特に、琉球人遺骨は研究者により主に研究目的から収集され、資料としてその返還を拒まれてきた一方、遺族や琉球人にとっては研究のための資料ではなく祖先であり、家族や集団にとってその返還は重大である。仮に研究に使用する場合にも適切な合意が不可欠である。政府として、遺骨をめぐる研究者と遺族等の理解の齟齬に関する認識を説明されたい。

 右質問する。

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