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令和七年十月三十一日提出
質問第三四号

PFAS(有機フッ素化合物)評価書及び対策に関する質問主意書

提出者  宮川 伸




PFAS(有機フッ素化合物)評価書及び対策に関する質問主意書


 来年四月から水道などの水質基準が「PFOSとPFOAの合計で一リットル当たり五十ナノグラム」となる。この根拠となるのが、二〇二四年六月、内閣府食品安全委員会がとりまとめた「有機フッ素化合物(PFAS)評価書」(以下「評価書」)で定めたPFOSとPFOAの耐用一日摂取量(TDI)、体重一キログラム当たりそれぞれ二十ナノグラムである。この数値は、欧州食品安全機関の六十四倍、米国環境保護庁の二百二十〜六百六十六倍以上と極めて大きく、国民の間には大きな不安がある。また、「評価書」が、健康への影響を認めないため、PFAS血中濃度が高い方々への健康管理、さらなる疫学調査など必要な対策が行われていない。
 したがって、次の事項について質問する。

一 内閣府食品安全委員会は、「評価書」の作成に向け、PFASワーキンググループを設置し、計九回の会合を行った。この過程で、事前に外部委託で選定した二百五十七の論文の内、百九十を不採用とし、外部委託で選定されなかった二百一の論文を追加し、計二百六十八の論文を参照し評価書を作成した。この過程で、当初参照すべきとされた重要な論文が外され、PFAS生産事業者が費用を支出するなど本来参照すべきでない論文が追加されている。PFASワーキンググループの九回の会合の合間には、計二十四回もの非公開会合(打合せ会)(以下「非公開会合」)が開催され、この「非公開会合」での議論によって「評価書」作成に向けた実質的な議論が行われたと推察される。
 1 二十四回の「非公開会合」の議事録、議事メモなどは行政文書として作成され、また現存するか。内閣府本府行政文書管理規則第十一条には「本府における経緯も含めた意思決定に至る過程並びに本府の事務及び事業の実績を合理的に跡付け、又は検証することができるよう、処理に係る事案が軽微なものである場合を除き、文書を作成しなければならない。」とある。委員手当、謝金、旅費を国庫から支出し、二十四回にわたって開催された「非公開会合」の議事録、議事メモが作成されていない場合、どのような法的根拠で作成しなかったのか。また作成されたが、廃棄された場合、どのような法的根拠にもとづいて廃棄されたのか。
 2 川田龍平参議院議員(当時)の度重なる質問、追及により、この計二十四回の「非公開会合」の議事次第、配布資料など(以下「文献リスト」)はようやく開示された。参加した専門委員、専門参考人のコメント一覧と思われる資料も含まれるが、氏名、コメント双方黒塗りであり、又はコメントは開示されているものの氏名が黒塗りであり、文書管理規則第十一条にある「事務及び事業の実績を合理的に跡付け、又は検証すること」ができない。
  (1) こうした重要な部分を黒塗りにしている理由として、食品安全委員会事務局は、松下玲子衆議院議員との二〇二五年六月三日環境委員会の質疑で「SNS等でいろいろな批判を浴びたりする」と、述べているが、九回の会合は公開し、議事録を公表している。「非公開会合」は議事録を公表せず、公開の会合の議事録は公表するとの判断に至った経緯を説明されたい。何らかの理由で当時は非公開とした会合こそ、事後の検証のための議事録が必要と考えるがどうか。
  (2) そもそも「非公開会合」に参加した専門委員、専門参考人に、「非公開会合」での発言、コメント、会合前後のメールなどを非公開とする約束をした事実はあるか。また、その理由を説明されたい。
 3 前述の松下玲子議員との質疑で、食品安全委員会事務局は、専門委員、専門参考人との食品安全委員会事務局とのメールのやり取りがあったこと、このメールが行政文書に当たることは認めている。このメール(行政文書)について、食品安全委員会事務局は、「資料の作成を目的として一時的に作成したメモ等で、目的の資料に内容が反映されたものについては、保存期間一年未満の文書と位置づけている」とし、先立つ五月二十九日の参議院環境委員会において、「廃棄されており、今現在においては存在していない」と答弁している。行政文書の管理に関するガイドラインにおいて、保存期間を一年未満とすることができる文書を、「@ 別途、正本が管理されている行政文書の写しA 定型的・日常的な業務連絡、日程表等B 出版物や公表物を編集した文書C ○○省の所掌事務に関する事実関係の問合せへの応答D 明白な誤り等の客観的な正確性の観点から利用に適さなくなった文書E 意思決定の途中段階で作成したもので、当該意思決定に与える影響がない」と六類型を定めている。
  (1) 今回廃棄したとするメールの内、会議の日程連絡などを除く、「評価書」の内容に係るメールを保存期間一年未満とできる理由はこの六類型のどれに該当するのか。
  (2) 食品安全委員会事務局は、松下玲子議員との質疑で繰り返し、「それが反映された文書というものが外向きの説明責任を果たすための文書として保存されるということをもって、その大本のメモについては、保存期間一年未満」「資料の作成を目的として一時的に作成したメモ等で、目的の資料に内容が反映されたものについては、(中略)保存期間一年未満」などと答弁しているが、このその後の資料に内容が反映された資料は一年未満で廃棄していいとする答弁は、公文書管理法及びその関連規定、ガイドライン等の何を根拠とするのか。法的根拠がないなら、法的に不正確な答弁がそのまま存在することは不適切なので、本質問への答弁書で明確に訂正されたい。
  (3) 「評価書」作成に係るメールの保存期間を一年未満とできる、とする食品安全委員会の判断を、内閣として容認するのか。行政文書の管理に関する公文書管理課長通知「電子メールの選別及び手順に関するマニュアル」によれば、「当該答申等について委員から送信された、承認又は内容に関わる質問・意見が表明された電子メール(これに対する返答を行った電子メールを含む)。」と例示された審議会等文書は、一年未満ではなく、逆に「一年以上の保存期間を設定する」こととされている。食品安全委員会事務局の答弁は、この通知に反していると考えるがどうか。
  (4) そもそも文書の保存期間は、最低限保存しなければならない期間を定めたもので、期限が来たら廃棄するよう義務づけたものではない。実務の常識を考えても、保管場所が必要な訳でもないこれらのメールを、手間をかけてわざわざ廃棄するとは、考えにくい。メールの存否について改めて探索の上、存否についてお答えいただきたい。なお、再度探索のうえ存在が確認されれば、私としては黒塗りすべきではないと思うが、一部黒塗りにしても開示すべきと考えるがどうか。
 4 食品安全委員会事務局は、開示した「文献リスト」及び「評価書(案)」の中で、委員による評価内容を黒塗りにしているが、リスク評価とはすなわち個別の文献に書かれた内容を検討することであり、リスク評価の核心が伏せられている。「透明性」「客観性」「公正性」などを謳う食品安全委員会は基本姿勢に反するものと言わざるを得ない。「文献リスト」及び「評価書(案)」で個別の文献の評価内容を黒塗りにしなければならない理由を具体的にお答えいただきたい。
二 「評価書」が参照した米国環境保護庁(EPA)文書(参照番号二百六十二、二百六十三)が引用しているアレクサンダー他(二〇〇三年)、アレクサンダー・オルセン(二〇〇七年)には、PFOS曝露と膀胱がんの関連について、「高曝露地域については、もっともらしい証拠がある」としている。にもかかわらず、「評価書」においては、「血清PFOS及びPFOA濃度と膀胱がんの関連の報告はなかった」とされている。
 1 事実に反すると考えるがどうか。
 2 そもそもこのアレクサンダー他(二〇〇三年)、アレクサンダー・オルセン(二〇〇七年)の二論文が「評価書」作成において参照されなかったのはなぜか。
 3 このアレクサンダー氏の継続研究が、二〇二四年「評価書」決定前に出版され、「PFOSへの職業曝露が膀胱がん、肺がん、及び脳血管疾患と関連している」と表記している。この論文及び表記の存在を、政府が認識したのはいつか。「評価書」にこの内容を反映できなかったのは、なぜか。
三 「評価書」が参照したバリー他論文(二〇一三)(参照番号二百二十一)には、「血清PFOA濃度は、腎臓がん及び精巣がんと正の相関関係にあった。PFOA曝露はこの集団(C8HealthProject)の腎臓がんと精巣がんと関連していた」とあるが、「評価書」には、「PFOA濃度と(中略)、その他の部位のがん((中略)腎臓(中略))について関連がなかった」とされている。真逆の引用となっているのはなぜか。
四 「評価書」では、「将来的に、今回の検討時には不十分であったPFASの健康影響に関する研究・調査結果の一貫性、影響の度合いの臨床的意義、用量反応関係等に関する情報等の科学的知見が集積してくれば、TDIを見直す根拠となる可能性はある。」と述べ、現在の知見が不十分であることを認めた上で、耐用一日摂取量(TDI)の今後の見直しの可能性について、極めて消極的な表現ながら、認めている。
 1 「見直す根拠となる可能性はある」と、「見直し」について極めて消極的な表現を用いているのはなぜか。現時点での知見は不十分なことは認めているのだから、「科学的知見の集積に応じて、耐用一日摂取量(TDI)を不断に見直すべきである」などの表現にするべきではなかったか。
 2 「評価書」作成時には見落とされ又は無視されていた質問項目二で触れたPFOS曝露と膀胱がんの関連について述べたアレクサンダー氏等の三論文は、耐用一日摂取量を見直す根拠となる科学的知見に含まれると考えるが、政府はどう考えるか。
 3 「評価書」作成時には未発表であった二〇二四年九月公表の「母体のPFAS血中濃度が増加すると児の染色体異常が増加する」とした、環境省の事業であるエコチル調査の成果である信州大学の野見山哲生教授、長谷川航平助教の論文は、耐用一日摂取量を見直す根拠となる可能性のある科学的知見に含まれると考えるがどうか。
 4 質問項目2、3で述べたものを含む新たな科学的な知見が集積しており、耐用一日摂取量の見直しを早急に開始すべきと考えるがどうか。
 5 「評価書」では、「健康影響評価の結果については、海外評価機関がそれぞれ採用しているエンドポイント及び指標値は大きく異なる。EFSA(欧州食品安全機関)(二〇二〇)やEPA(米国環境保護庁)(二〇二三Draft)が示している指標値は、各国における推定摂取量を下回る数値であり、リスク管理の状況や今後のリスク評価については引き続き注視していく必要がある。」と述べ、欧州や米国の基準が厳しすぎるともとれる表現をしている。
  (1) 現状の推定摂取量は、指標値の策定において、考慮すべきとの認識か。
  (2) 「評価書」発表から約一年半が経過したが、米国、欧州のリスク管理の状況、リスク評価について注視した結果、どのような知見があるか。
五 「評価書」では、「血中濃度については、今後のリスク評価に向けて、PFASの摂取量と血中濃度との関連や、それらと健康影響との関連について、疫学的手法により計画的に調査することが必要と考える。」と指摘している。
 1 内閣もこうした調査が必要であるとの認識でよいか。そうであれば、どの省庁が、いつ、このような調査を開始するのか。
 2 「評価書」では、「我が国においては、PFASばく露が懸念される地域の住民における血中濃度の分布、高ばく露者の把握等の必要性も含め、今後のリスク管理の方策や対応の優先度等について検討することは重要と考える。国や自治体等が、血中PFAS濃度測定を実施する場合は、その目的や対象者、実施方法、フォローアップの方法等について慎重に検討する必要がある。」と、血中濃度の測定等について、「優先度について検討」と消極的である。「PFASばく露が懸念される地域の住民における血中濃度の分布、高ばく露者の把握等」は、最優先で取り組むべき施策と考えるが、このような後ろ向きの表記になっている理由は何か。「評価書」発表後の、「必要性も含めた優先度の検討」はどの省庁で行われ、現在どのような認識か。

 右質問する。

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