質問本文情報
令和七年十二月八日提出質問第一二〇号
米国関税措置及び日米間の合意に基づく投資イニシアティブに関する質問主意書
提出者 神津たけし
米国関税措置及び日米間の合意に基づく投資イニシアティブに関する質問主意書
令和七年(二〇二五年)九月四日、トランプ米国大統領は、我が国に対する関税の措置に関する大統領令に署名した。同日、赤澤亮正経済再生担当大臣は、ハワード・ラトニック米国商務長官との間で、日米間の合意に基づく投資イニシアティブの大枠について、日米の共通理解を確認するための「日本国政府及びアメリカ合衆国政府の戦略的投資に関する了解覚書」(以下「了解覚書」という。)に署名した。また、日米両政府は、「二〇二五年七月二十二日の日米間の枠組み合意についての共同声明」を発出した。
これに関連して、次の事項について質問する。
一 今般の戦略的投資における投資先の選定については、日本側が投資案件を決定するのではなく、米国大統領が決定する仕組みであると承知している。この点について、ラトニック商務長官もマスメディアによるインタビューにおいて、トランプ大統領が投資先について完全な裁量権を有している旨を明確に述べている。
戦略的投資に関しては、五千五百億米ドル(約八十五兆円)を米国に投資することになるが、その投資資金の調達に当たっては、株式会社国際協力銀行(以下「JBIC」という。)からの出融資や株式会社日本貿易保険(以下「NEXI」という。)による民間金融機関の融資に対して行う保証が活用されるとのことである。
五千五百億米ドル(約八十五兆円)という大規模な戦略的投資の実行により多額の損失が発生した場合には、JBICやNEXIも重大な負担が発生し得る。その場合、政府として公的資金の注入まで想定しているのか、見解を示されたい。
二 日本国憲法は、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立つとするとしている。また、JBIC及びNEXIは、全額政府出資の株式会社であり、日本国民の財産とも言える。そのJBIC及びNEXIによる出融資や融資保証を活用した米国向け投資案件の決定が米国大統領によって行われる状況は、宗主国と植民地の関係に近いのではないか。今般の了解覚書の内容は、憲法が示す各国の対等な関係からは程遠いと考える。政府は、投資先を米国大統領が選定し、我が国が資金を拠出する了解覚書の内容について、日米両国が対等な関係に立ったものであると考えているのか。政府の見解を示されたい。
三 了解覚書においては、二〇二九年一月十九日までの間、経済・国家安全保障上の利益を促進するため、日本が半導体、医薬品、金属鉱物、造船、エネルギー(パイプラインを含む)等の様々な分野において、五千五百億米ドル(約八十五兆円)を米国に投資することが記載されている。今後三年間で国家予算の約三分の二に匹敵する約八十五兆円もの巨額な投資を行うためには、一年当たりに換算すると約二十八兆円の投資を行う必要があるが、このような大規模な投資を期限までに組成できると考えるのか、政府の見解を示されたい。
また、戦略的投資のための資金の調達については、了解覚書には記載されていないが、JBICの出資・融資やNEXIの融資保証を活用するとされている。これに関し、JBICの二〇二五年三月末時点の出融資残高及び保証残高の合計は約十七兆円、NEXIの二〇二四年三月末時点の保険責任残高は約十五兆五千億円であるが、三年間で八十五兆円という両機関の出融資残高や保険責任残高を遥かに上回る大規模な投資案件に対応することができるのか、見解を示されたい。
四 戦略的投資に係る対米投資案件が失敗した場合、出資・融資、融資保証を行うJBICやNEXIの資金回収が困難となり、国家財政にも大きな影響を及ぼすものと考える。令和七年度補正予算においては、JBIC及びNEXIの財務基盤強化のため、それぞれ二千七百億円及び千億円が計上されている。同予算は国会の審議を経るが、国家予算の約三分の二に匹敵する約八十五兆円もの巨額な投資を行う戦略的投資についても、国会の審議及び承認を要すると考えるが、政府の見解を示されたい。
五 戦略的投資から生ずる利用可能なキャッシュフローの分配については、日本が提供した資金の元利返済相当分(保証料含む)を確保するまでは、米国と日本が五割ずつ分配し、その後は米国が九割、日本が一割で分配するものと承知している。
しかし、金融リスクは日本側が負担するにもかかわらず、この投資から生ずる利用可能なキャッシュフローの分配割合が、五割又は九割と米国側に多いのは、バランスを欠いているのではないか。米国側が提供する土地、水、電力等の負担は、日本側の負担と比較して偏った分配割合に見合うほどに大きいものなのか、政府の見解を示されたい。
また、この投資から生ずる利用可能なキャッシュフローの分配割合は、いかなる根拠に基づいて決定されたものか明らかにされたい。
六 戦略的投資から生ずる利用可能なキャッシュフローの分配は、いつまで継続されるものなのか。事業が存続する限り当該分配比率が適用されるのか、あるいはトランプ政権の存続期間に限定されるのか、明らかにされたい。
七 戦略的投資については、JBICやNEXIといった公的金融機関の資金が米国の産業政策のために一方的に利用され、日本にリスクのみ残る「下請型」経済安全保障になる懸念がある。政府は、戦略的投資について、記者会見や国会における答弁においても、投資対象は日米が協調する経済安全保障分野としており、「国益に資する」「日本企業にメリットがある」と述べているが、「国益」や「日本企業のメリット」は何を意味するのか具体的に明らかにされたい。
また、戦略的投資について、日本が受ける利益について評価指標を示し、実績を公表する必要があると考えるが、政府の見解を示されたい。
八 国家予算の約三分の二に匹敵する約八十五兆円もの巨額な戦略的投資を行うに当たっては、日本にとって収益性のある有益なプロジェクトを選定していくことが極めて重要であることから、透明性を確保した上で決定すべきと考える。日米で作る協議委員会や米国で組織する投資委員会の議事録や提出された資料は公開されるのか。公開される場合、いつ公開されるのか具体的に明らかにされたい。
右質問する。

