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平成十三年四月十七日受領
答弁第四一号

  内閣衆質一五一第四一号
  平成十三年四月十七日
内閣総理大臣 森   喜  朗

       衆議院議長 綿貫民輔 殿

衆議院議員北川れん子君提出RI・研究所等廃棄物処理処分に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員北川れん子君提出RI・研究所等廃棄物処理処分に関する質問に対する答弁書



一について

 放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律(昭和三十二年法律第百六十七号。以下「放射線障害防止法」という。)においては、放射線障害防止法に規定されている放射性同位元素(以下「放射性同位元素」という。)の使用、販売等に係る施設、放射性同位元素によって汚染された物の廃棄等に係る施設等について必要な規制を行っているが、放射性同位元素には、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号。以下「原子炉等規制法」という。)の規制の対象である核原料物質及び核燃料物質は含まれない。
 一方、原子炉等規制法においては、核原料物質及び核燃料物質の製錬、核燃料物質の加工等の事業に係る施設、原子炉の設置及び運転に係る施設等について必要な規制を行っている。
 また、放射性同位元素及び放射性同位元素によって汚染された物であって廃棄しようとするもの(以下「RI廃棄物」という。)については、従来、容器に封入し又は固形化して保管廃棄してきたが、放射性同位元素の利用の進展とともにRI廃棄物が増加していることから、放射能濃度に応じた最終処分の在り方を今後検討することが必要となっている。一方、核燃料物質又は核燃料物質によって汚染された物の一部については、既に放射能濃度に応じた処分が実施されていることから、原子力委員会原子力バックエンド対策専門部会が平成十年五月に公表した「RI・研究所等廃棄物処理処分の基本的考え方について」と題する報告書(以下「報告書」という。)において、RI廃棄物の放射能濃度に応じた処理又は処分を検討するに当たっては、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律施行令(昭和三十二年政令第三百二十四号)第十三条の九の規定が定める放射能濃度の基準を利用したものである。

二について

 原子力委員会は、原子力基本法(昭和三十年法律第百八十六号)及び原子力委員会及び原子力安全委員会設置法(昭和三十年法律第百八十八号)に基づき、原子力の研究、開発及び利用に関する行政の民主的な運営を図ることを目的として設置された政府の機関である。
 一方、国際原子力機関(以下「IAEA」という。)は、全世界における平和、保健及び繁栄に対する原子力の貢献を促進し、及び増大するように努力すること並びにIAEAを通じて提供された援助がいずれかの軍事的目的を助長するような方法で利用されないことをできる限り確保することを目的として設立された国際機関であり、我が国はその設立当初からの加盟国である。
 放射性物質の取扱いに伴って発生する廃棄物であって、放射性物質の濃度が極めて低く、放射性物質としての特質を考慮する必要がないものを区分する基準(以下「クリアランスレベル」という。)としてIAEAが平成八年に提案した数値については、IAEAが開催した国際放射性廃棄物管理諮問委員会(以下「INWAC」という。)が取りまとめた「TECDOC―八五五」と題する文書における検討結果を採用したものであり、人体に対する影響を無視し得る程度の年間被ばく線量である十マイクロシーベルトを基準として、それに相当する放射能濃度を算出したものと承知している。
 IAEAが平成八年に提案したクリアランスレベルの具体的な提案者及び提案者の出身母体については承知していない。なお、INWACには、メキシコ、スペイン、ウクライナ、ザンビア、オーストラリア、フランス、英国、ロシア、米国、カナダ、チェッコ、韓国、スペイン、イスラエル、スイス、アルゼンティン、インド、ドイツ及び日本の専門家が参加している。
 報告書においては、「RI廃棄物、研究所等廃棄物のうちクリアランスレベル以下のものは、再利用又は産業廃棄物と同様の処分が想定される」としているが、「再利用」とは、例えば、放射性同位元素の使用施設を解体した際に発生する金属、コンクリート等を資源として再利用することを想定しており、「産業廃棄物と同様の処分」とは、例えば、埋設地に遮水シート等を設置すること、埋設地の水質の監視を行うこと等、廃棄物の性状を踏まえて適正に埋設処分を行うことを想定している。なお、報告書にある「再利用」及び「産業廃棄物と同様の処分」の具体的内容については、現在、原子力安全委員会において行われているクリアランスレベルの在り方についての検討結果を踏まえて、今後検討することとしている。

三について

 IAEAの事務局によれば、IAEAが平成八年に提案したクリアランスレベルについて、各国からコメントは出されていない。

四及び五について

 報告書では、「極低レベル放射性廃棄物」のうち廃棄物自体が安定的で汚水を発生させないコンクリート等について、放射性廃棄物専用の処分場において、コンクリートピット等の人工バリアを設けず、素堀りの溝状等の空間に廃棄体を定置して埋設する素堀処分を行うことが想定されているが、当該素堀処分の具体的な方法、手続、処分地等については今後検討していくこととしている。
 また、報告書では、「クリアランスレベル以下のもの」について、産業廃棄物と同様の処分を行うことが想定されているが、当該処分をどのような処分場で行うか、当該処分に伴い焼却処理等の処理を行うかどうか等については、現在、原子力安全委員会において行われているクリアランスレベルの在り方についての検討結果を踏まえて、今後検討していくこととしている。なお、報告書における「クリアランスレベル以下のもの」の「再利用」については、二についてで述べたとおりである。

六について

 平成二年度から平成十一年度までの間において、放射線障害防止法に基づき立入検査を行った事業所数は別表一のとおりであり、放射線検査官の人数は別表二のとおりである。平成十一年度において立入検査後に放射線障害防止法に違反する事実があったとして文書で改善指導を行った事業所数は二百八十、当該改善指導における指摘事項数は千七百二十一であり、指摘事項としては、放射性同位元素の使用者等が備えるべき帳簿における記載の不備に係るものが最も多く、次いで放射線の量等の測定の不備に係るものが多い。改善指導を受けた事業所においては、速やかに改善のための措置が施されていると承知している。なお、平成十年度以前の違反事業所数、違反件数及び違反内容については、立入検査に係る記録のすべてが残っているわけではないため把握することができない。
 平成二年度から平成十一年度までの間において、原子炉等規制法に基づき試験研究炉を設置した事業所等から発生する放射性廃棄物(以下「研究所等廃棄物」という。)を発生させ得る事業所を対象とする原子炉等規制法に基づく立入検査は、平成九年度において一事業所、平成十一年度において二十一事業所に対して実施されている。平成九年度に立入検査を行った事業所において、核燃料物質の使用に係る施設について、使用の変更の許可が必要であるにもかかわらず当該許可を受けていなかった等の三件の原子炉等規制法に違反する事実が判明したため、原子炉等規制法第五十六条の規定に基づき当該事業所に対し核燃料物質の使用の停止処分を行った。平成十一年度の立入検査では違反の事実があった事業所はなかった。また、原子炉等規制法に基づき立入検査が実施される都度、当該検査を担当する職員が決められるが、当該職員の人数は、平成九年度において三人、平成十一年度において二十一人である。

七について

 RI廃棄物及び研究所等廃棄物の焼却処理を行っている事業者においては、焼却処理に伴って発生する気体廃棄物及び液体廃棄物については、それぞれ法令において排出できる基準として定められた放射性物質の濃度を下回る状態とした上で焼却施設外に排気及び排水をしており、当該排気については排気口又は排気監視設備において、また、当該排水については排水口又は排水監視設備において、法令に基づき放射性物質の濃度等を記録していると聞いている。なお、RI廃棄物及び研究所等廃棄物の焼却後の固体廃棄物については、廃棄施設内で保管廃棄されていると聞いている。

八について

 原子力委員会原子力バックエンド対策専門部会については、原子力委員会が、平成七年九月十二日の原子力委員会決定により、同部会の審議事項を定めるとともに、当該審議事項の調査又は審議に係る知識を有すると認められる者を構成員として選定したものである。また、同部会に置かれたRI・研究所等廃棄物分科会については、同部会が同分科会の審議事項を定めるとともに、当該審議事項の調査又は審議に必要な有識者を構成員として同部会の会長が選定したものである。
 原子力委員会原子力バックエンド対策専門部会及び同部会のRI・研究所等廃棄物分科会の審議においては、高度の専門性を必要とするため、それらの構成員を公募することは考えなかった。

九について

 現在、原子力安全委員会においてクリアランスレベルの在り方について検討が行われているところであり、同委員会の検討結果を踏まえた上で、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和四十五年法律第百三十七号)、放射線障害防止法、原子炉等規制法等の改正を行うか否かについて検討を行うこととしている。

一〇について

 国際放射線防護委員会(以下「ICRP」という。)の昭和五十二年勧告においては、放射線防護の基本的な考え方として「全ての被ばくは社会的、経済的要因を考慮に入れながら合理的に達成可能な限り低く押さえるべきである」ことが示されており、ICRPの平成二年勧告においても同一の考え方が採用されている。原子力委員会原子力バックエンド対策専門部会においては、ICRPの右の基本的考え方を踏まえるとともに、RI廃棄物及び研究所等廃棄物の処分に伴って国民の健康を損なうことがないよう配慮して報告書をまとめている。

一一について

 RI廃棄物及び研究所等廃棄物の処理又は処分については、現在、原子力安全委員会において行われているクリアランスレベルの在り方についての検討結果を踏まえ、関係省庁において今後具体的な検討を行うこととしており、現時点において、関連法令の改正等を行うか否か、関連法令の改正等を行うこととする場合の手続、日程等については決定されていない。


別表一 放射線障害防止法第四十三条の二第一項に基づく科学技術庁による立入検査事業所数、 別表二 放射線障害防止法第四十三条第一項に基づく放射線検査官の過去十年間の実員数(各年度三月三十一日現在の人数)


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