答弁本文情報
平成十三年五月二十九日受領答弁第五七号
内閣衆質一五一第五七号
平成十三年五月二十九日
衆議院議長 綿貫民輔 殿
衆議院議員赤嶺政賢君外一名提出奄美群島周辺海域における大中型まき網漁船の操業禁止区域に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員赤嶺政賢君外一名提出奄美群島周辺海域における大中型まき網漁船の操業禁止区域に関する質問に対する答弁書
一について
御指摘の奄美群島周辺海域に限った水産資源の状況については把握していないが、農林水産省が平成十二年に行った我が国周辺海域の水産資源の調査において、東シナ海を生息域とする主な水産資源の賦存状態は、多くの魚種で中位又は低位の水準となっており、その動向は、多くの魚種で横ばい又は減少傾向となっている。ただし、大中型まき網漁業で漁獲する主な魚種のうち、ゴマサバの資源状況は、高位・増加傾向となっており、ムロアジの資源状況は、低位・減少傾向となっている。
また、農林水産省が公表している「漁業経済調査報告(漁家の部)」により東シナ海区の海面漁業漁家の平成七年から平成十一年までの五年間の経営状況をみると、漁業収入が約一割低下したこと等に伴い、漁業所得は約二割低下している。
御指摘の奄美群島周辺海域を含めた我が国周辺海域の水産資源の保存及び管理を図るため、海洋生物資源の保存及び管理に関する法律(平成八年法律第七十七号)に基づき、漁獲量の総量管理制度を適切に実施しているところであるが、本制度を補完し、水産資源の一層の保存及び管理を図るため、新たに漁船の操業日数等の最高限度を設定する制度を創設すること等を内容とする同法の一部改正法案を今国会に提出したところである。
漁業法(昭和二十四年法律第二百六十七号)第五十二条第一項の規定による指定漁業については、水産動植物の繁殖保護又は漁業取締りその他漁業調整の観点から、関係する漁業者や都道府県等の意見を踏まえ、操業禁止区域が設定されており、同区域の新たな設定又は区域の変更についても、同様の観点から関係者の意見を十分に聴いて、総合的に検討した上で行うこととしている。
御指摘の奄美群島及び大中型まき網漁業の漁業者は、平成十年三月に水産庁の立会いの下、「奄美群島周辺水域におけるムロアジ資源保護管理に関する協定」を締結し、自主的な保護管理措置の設定に合意したところであるが、その後、同協定に基づき、奄美群島の漁業者側から当該保護管理措置の強化につき追加提案があったところである。操業禁止区域の見直しに当たっては、関係する漁業者の意見が一致していることが求められるが、現在、両当事者間で前述の追加提案に係る協議がもたれているところであり、水産庁においては、当該協議が十分に行われるよう指導しているところである。
昭和三十七年以前においては、総トン数六十トン未満の動力漁船によりまき網を使用して行う漁業の規制は都道府県知事により行われ、操業禁止区域が定められていたが、昭和三十八年の漁業法改正に伴い、総トン数四十トン以上の動力漁船によりまき網を使用して行う漁業が農林大臣の管轄となり、その際、当該都道府県知事が設定した操業禁止区域は、新たに農林大臣の設定する操業禁止区域に切り替えられた。これらの農林大臣が設定した操業禁止区域は、当該都道府県知事による規制の実態を尊重するとともに、関係する漁業者や中央漁業調整審議会の意見を聴いて、水産動植物の繁殖保護又は漁業取締りその他漁業調整の観点から総合的に検討した上で定められたものである。
大中型まき網漁業に係る操業禁止区域については、指定漁業の許可及び取締り等に関する省令(昭和三十八年農林省令第五号)別表第二において定められており、御指摘の操業禁止区域での大中型まき網漁業による操業は、同令第十八条に違反する行為である。
お尋ねの違法操業を理由として指定漁業の許可をしなかった事例は、過去においてない。
指定漁業の許可の際には、従来から、操業区域等について、必要に応じ関係する漁業者や都道府県から意見を聴取しているところであり、今後とも関係者の意見を聴取するよう努めてまいりたい。