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平成十三年六月二十九日受領
答弁第九二号

  内閣衆質一五一第九二号
  平成十三年六月二十九日
内閣総理大臣 小泉純一郎

       衆議院議長 綿貫民輔 殿

衆議院議員小沢和秋君外一名提出じん肺根絶のための政府の対策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員小沢和秋君外一名提出じん肺根絶のための政府の対策に関する質問に対する答弁書



一及び二について

 平成七年に国際労働機関(ILO)及び世界保健機関(WHO)が協調して対応すべき事項として提案したけい肺の根絶のための共同計画は、世界中からけい肺(シリカを原因とするじん肺)をなくすことを目的とし、先進国と発展途上国との間の長期的な協力を促進すること、国家レベルでのけい肺をなくす計画の策定を促進すること等を内容としたものであると認識している。
 我が国においては、従来から、じん肺の適正な予防、健康管理等を図るという方針の下、労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)及びじん肺法(昭和三十五年法律第三十号)に基づく対策を実施しているところである。
 さらに、現在実施している第九次労働災害防止計画(平成十年度を初年度とする五箇年計画)においても、じん肺の減少を図ることを目的とする工学的対策及び健康管理対策を盛り込むとともに、同計画に基づき、じん肺の発生及び進行を防止するため、第五次粉じん障害防止総合対策を実施しているところである。

三及び五について

 労働安全衛生法、じん肺法等に基づきこれまで講じてきているじん肺の予防、健康管理等の措置は効果的であると考えているところであり、これらの措置の結果、じん肺新規有所見者数(ある年に事業者が実施したじん肺健康診断において初めてじん肺の所見があるとされた者として、当該事業者から都道府県労働局長に対して報告があったものの数)及び当該数がじん肺健康診断受診者数(当該年より前にじん肺の所見があるとされた者の数を除く。)に占める割合は、昭和五十四年においては、それぞれ七千五百三十四人及び三・六パーセントであったものが、平成十一年においては、それぞれ四百十四人及び〇・二パーセントと、いずれも大幅に減少しているところである。

四について

 平成十一年において、粉じん作業を行う事業場を含め労働基準監督官が臨検等を行った事業場数は、十四万六千百六十件であり、当該事業場におけるじん肺法及び粉じん障害防止規則(昭和五十四年労働省令第十八号)に関する違反件数は、次のとおりである。なお、地域別の集計は行っていない。

当該事業場におけるじん肺法及び粉じん障害防止規則(昭和五十四年労働省令第十八号)に関する違反件数

六について

 粉じん障害防止規則第一条第二項において、事業者は、作業時間の短縮等の措置を講ずるよう努めなければならないとされているところであるが、粉じん作業は、個々の事業場によって、作業の工程、作業の態様、粉じんの発生の態様等が異なることから、粉じん作業時間の制限を一律に設けることは適当でないと考えている。

七について

 ずい道等建設工事における粉じん対策に関するガイドライン(平成十二年十二月二十六日付け基発第七百六十八号の二労働省労働基準局長通達別添一。以下「ガイドライン」という。)については、厚生労働省において、ずい道等建設工事の発注者及び事業者に対する説明会を実施してきたところであり、今後とも、ガイドラインの周知に努めるとともに、都道府県労働局及び労働基準監督署を通じ、ずい道等建設工事現場においてガイドラインに沿った取組が実施されるよう指導していくこととしている。
 また、ガイドラインに示している対策を労働者に周知徹底することは必要であるとの認識の下、ガイドラインにおいては、事業者はその労働者に対し粉じん障害を防止するために必要な教育を実施することとしており、厚生労働省においては、当該教育の実施が徹底されるよう指導していくこととしている。

八について

 屋外作業については、作業場所や作業環境が日々変化すること、自然環境の影響を受けやすいこと等の状況にあるため、作業環境の良否の判断の指標となる客観的な評価基準を定めることが現状では困難である。このため、粉じん作業を行うすべての作業場について粉じん濃度の測定を義務付けることは考えていない。
 なお、ずい道等建設工事現場については、これまでの調査研究の結果を踏まえ、ガイドラインにおいて換気の実施等の効果を確認するための粉じん濃度等の測定を実施することとしているところである。

九について

 常時粉じん作業に従事する労働者であってじん肺法に基づくじん肺管理区分が管理二又は管理三であるもの及び常時粉じん作業に従事していた労働者であってじん肺管理区分が管理三であるものについては、じん肺法により一年以内ごとに一回のじん肺健康診断の実施を事業者に義務付けているところであり、その他の労働者については、現在の医学的知見によれば、最低年一回のじん肺健康診断の実施を事業者に義務付ける必要はないと考えている。
 また、常時粉じん作業に従事する労働者等については、在職中は事業者の負担によりじん肺健康診断を実施しているが、離職後は、じん肺管理区分が管理三である者については、労働安全衛生法に基づき離職の際に又は離職の後に、申請に基づき健康管理手帳を交付し、国の負担により定期的に健康診断を受診する機会を設けているところである。その他の離職者については、定期的な健康診断の実施を一律に必要とする医学的知見は得られていないことから、じん肺法に基づき随時じん肺管理区分決定申請を行えることとし、その結果じん肺管理区分が管理三に決定された者に対し、健康管理手帳を交付するとともに、国の負担により定期的に健康診断を受診する機会を設けているところである。

十について

 常時粉じん作業に従事する労働者のうちじん肺管理区分が管理二又は管理三イである者については、粉じんにさらされる程度を低減させるため、じん肺法第二十条の三の規定に基づき事業者は就業場所の変更等の措置を講ずるように努めなければならないこととされている。
 また、じん肺法第二十一条の規定に基づき、事業者は、じん肺管理区分が管理三イである労働者であって常時粉じん作業に従事している者について都道府県労働局長より粉じん作業以外の作業に従事させるべき旨の勧奨を受けた場合、又はじん肺管理区分が管理三ロである労働者が現に常時粉じん作業に従事している場合については、当該労働者を粉じん作業以外の作業に従事させることとするよう努めなければならないこととされているとともに、都道府県労働局長は、じん肺管理区分が管理三ロである者であって当該労働者の健康を保持するため必要があると認めたものについては、事業者に対して粉じん作業以外の作業に従事させるよう指示することができることとされており、これらにより常時粉じん作業に従事しなくなった労働者に対しては、同法第二十二条の規定に基づき事業者は転換手当を支払わなければならないこととされている。
 さらに、じん肺有所見者に対しても公共職業安定所及び職業訓練のための施設を活用し、できる限り早期に他の適切な職場を確保できるようにしているところである。
 厚生労働省においては、今後ともこれらの施策の適切な実施に努めてまいりたい。

十一について

 進展したじん肺の所見がある者に肺がんが発生した場合には、肺がんの早期発見が困難となること、治療の適用範囲が狭められること等の医療実践上の不利益が認められることから、じん肺管理区分が管理四である者を労災補償の対象としてきたところである。御指摘の報告書において、「現時点においても臨床医学的知見から、進展したじん肺有所見者に発生した肺がんに対する医療実践上の不利益の存在は認められる。しかし、じん肺所見の程度と具体的な医療実践上の不利益の程度との関係については、別途、更に的確な労災補償を行うという観点から調査検討する必要がある」とされたことを踏まえ、現在、厚生労働省において、医学の専門家による検討を行っているところであり、その結論を踏まえ、必要な措置を講ずることとしている。

十二について

 平成九年に国際がん研究機関(IARC)が、結晶質シリカに人に対する発がん性があるとする評価を行い、これを受け厚生労働省において「職業がん対策専門家会議」を開催し、同会議において、昨年十一月に「シリカの発がん性を的確に評価することは困難であり、現時点ではシリカそのものの発がん性に関しては引き続き情報収集に努めることが望ましい」とする検討結果がまとめられた。また、本年四月には、日本産業衛生学会に属する「許容濃度等に関する委員会」がIARCの評価を支援する提案を同学会に対して行い、同学会は、当該提案を了承し、一年間学会内外の意見を求めた後正式な決定を行うこととしたところである。
 厚生労働省においては、このような状況を踏まえ、今後、医学の専門家からなる検討会を開催し、その結論を踏まえた上で適切な対応を図ることとしたい。



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