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平成十四年三月十五日受領
答弁第三六号

  内閣衆質一五四第三六号
  平成十四年三月十五日
内閣総理大臣 小泉純一郎

       衆議院議長 綿貫民輔 殿

衆議院議員鉢呂吉雄君提出中華人民共和国の世界貿易機関への加入議定書に基づく緊急関税に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員鉢呂吉雄君提出中華人民共和国の世界貿易機関への加入議定書に基づく緊急関税に関する質問に対する答弁書



一について

 世界貿易機関を設立するマラケシュ協定(平成六年条約第十五号。以下「マラケシュ協定」という。)附属書一Aの千九百九十四年の関税及び貿易に関する一般協定第十九条及び同附属書一Aのセーフガードに関する協定(以下「セーフガード協定」という。)に基づくセーフガード(以下「一般セーフガード」という。)は、特定の産品の輸入の増加に対し、一定の要件が満たされたときに行使される世界貿易機関(以下「WTO」という。)の加盟国の権利であるが、マラケシュ協定第十二条1の規定に基づき中華人民共和国(香港地域及びマカオ地域を除く。以下同じ。)がWTOへ加入するためWTOとの間において合意した条件を定めた議定書(以下「加入議定書」という。)第十六節に基づく経過的品目別セーフガード(以下「対中国経過的セーフガード」という。)は、中華人民共和国を原産地とする産品の輸入の増加に対し、一定の要件が満たされたときに行使される中華人民共和国以外のWTO加盟国の権利であり、中華人民共和国のWTO加盟後十二年間に限り適用可能なものである。
 発動要件については、対中国経過的セーフガードの下では、市場かく乱又はそのおそれが必要とされているが、一般セーフガードの下では、重大な損害又はそのおそれが必要とされている。
 措置内容については、いずれの下においても、輸入国側の関税引上げ又は輸入制限が認められているが、対中国経過的セーフガードの下では、事前の二国間協議において合意された場合には、中華人民共和国側が市場かく乱に対する措置をとることとされている。
 発動期間は、一般セーフガードの下では、当初は最長四年間、延長した場合通算八年間措置をとることができるのに対し、対中国経過的セーフガードの下では、市場かく乱を防止又は救済するために必要な期間に限ってのみ措置をとることができるとされている。
 調査手続については、いずれの下においても、証拠提出や意見表明の機会を利害関係者に提供する等の手続が必要である。
 暫定的な措置については、いずれの下においても、遅延すれば回復し難い損害を与えるような危機的な事態が存在する場合、二百日間を超えない範囲で、とることができることとされている。
 対中国経過的セーフガードの下では、中華人民共和国又はその他のWTO加盟国において市場かく乱を防止し又は救済するための措置がとられた結果、著しい貿易転換を引き起こす等の場合には、一定の条件の下で、当該貿易転換に対する措置をとることが認められている。

二について

 加入議定書第十六節4において、「国内産業によって生産される産品と同種の又は直接競合する産品の輸入が、絶対的又は相対的に急激に増加しており、国内産業に対する実質的な損害又はそのおそれの重要な原因となっている場合は、市場かく乱が存在するものとする。」とされている。
 第百五十四回国会に提出した関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案により改正される関税暫定措置法(以下「改正関税暫定措置法」という。)第七条の七第一項に規定する本邦の産業に市場のかく乱を起こし、又は起こすおそれがある事実については、加入議定書の規定等を踏まえ、具体的な事案に応じて判断することとなる。

三について

 加入議定書の中では、「市場かく乱」の認定に際し、輸入量、同種の又は直接競合する産品の価格に対する輸入の影響等を考慮することとされているが、「市場かく乱」の内容について具体的に規定している部分は存在しない。
 WTOの協定の下では、「重大な損害」との用語が、「実質的な損害」との用語に比べ、より高い損害の水準を意味すると解釈されるが、いずれのセーフガードについても、発動のためには、損害のみならず、因果関係等の検討も必要であり、両者の発動要件を損害のみに注目し比較することは適当でない。

四について

 「市場かく乱」の存在の決定に当たっては、加入議定書では、第十六節4に規定されている客観的要素を考慮することとされている。
 セーフガード協定の規定に定められている評価の対象との相異については、加入議定書の規定においては、セーフガード協定の規定と異なり「同種の又は直接競合する産品の価格に対する輸入の影響」等が明示されており、一方、セーフガード協定の規定においては、加入議定書の規定と異なり「販売、生産、生産性、操業度」等が明示されていることが挙げられる。

五について

 関税定率法(明治四十三年法律第五十四号)第九条第一項の規定においてセーフガード協定に規定されている事項のうち基本的なものについて規定しているのと同様に、改正関税暫定措置法第七条の七第一項の規定においては、加入議定書に規定されている事項のうち基本的なものについて規定したものである。
 また、同項に規定する「本邦の産業に起こす市場かく乱等の事実」の有無を判定する基準として、加入議定書に示された客観的要素を具体的にどのような指標に基づき考慮するかについては現在検討中であるが、いずれにせよ、事柄の性質上、定量的な基準を定めることは困難である。

六について

 関税定率法第九条の規定による措置(以下「一般の緊急関税措置」という。)においては、外国における価格の低落その他予想されなかった事情の変化による特定の種類の貨物の輸入の増加の事実が要件とされているのに対し、改正関税暫定措置法第七条の七の規定による措置(以下「中華人民共和国の特定の貨物に係る緊急関税措置」という。)においては、中華人民共和国を原産地とする特定の種類の貨物の輸入の増加の事実が要件とされており、また、一般の緊急関税措置においては、本邦の産業に重大な損害を与え、又は与えるおそれがある事実が要件とされているのに対し、中華人民共和国の特定の貨物に係る緊急関税措置においては、本邦の産業に市場のかく乱を起こし、又は起こすおそれがある事実(以下「市場かく乱等の事実」という。)が要件とされている。市場かく乱等の事実の判断については、二についてで述べたとおりである。

七について

 加入議定書第十六節1にいう協議の内容については、例えば、市場かく乱の原因、措置の必要性等について協議を行うことが考えられる。
 協議の結果、合意が形成された場合には、中華人民共和国は、市場かく乱を防止し又は救済するための措置をとるとされているが、具体的な措置の内容については、協議を踏まえて決定されるものである。中華人民共和国のとる措置が、市場かく乱を防止し又は救済するための措置であれば、中華人民共和国によるいわゆる輸出の自主規制も排除されないと考えられる。

八について

 加入議定書等において、貿易転換とは、中華人民共和国において市場かく乱を防止し又は救済する措置がとられたこと又はその他のWTO加盟国において関税引上げ措置若しくは輸入制限措置若しくは暫定的な措置がとられた結果、中華人民共和国を原産地とする産品の輸入が増加することをいうこととされている。貿易転換に対する措置をとるためには、貿易転換が著しいものであり、中華人民共和国又はその他のWTO加盟国においてとられた措置が貿易転換を引き起こし又は引き起こすおそれがあることの決定が必要とされており、その決定の際には、中華人民共和国からの輸入の市場占拠率の現実の又は差し迫った増加等の要素を考慮すべきものとされている。
 また、関税定率法第九条第一項の規定においてセーフガード協定に規定されている事項のうち基本的なものについて規定しているのと同様に、改正関税暫定措置法第七条の七第十項の規定においては、加入議定書に規定されている事項のうち基本的なものについて規定したものである。
 同項に規定する貿易転換等の事実の判断に関しては、事柄の性質上、定量的な基準を定めることは困難である。

九について

 中華人民共和国の特定の貨物に係る緊急関税措置又は一般の緊急関税措置については、改正関税暫定措置法第七条の七又は関税定率法第九条の規定に基づく調査が行われた上で、これらの措置をとるために必要とされる要件が満たされているか否かの判断が行われるものであることから、御指摘の数値や事情のみによっては、これらの措置をとるために必要とされる要件が満たされているか否かを判断することはできない。

十について

 御指摘のねぎ等三品目に係る調査は、加入議定書第十六節に基づく調査ではないため、御指摘の対中国経過的セーフガードに係る「前回の調査」には該当しない。

十一について

 中華人民共和国を原産地とする貨物であると認められる限り、改正関税暫定措置法第七条の七第一項に規定する中華人民共和国を原産地とする特定の種類の貨物に該当する。



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