答弁本文情報
平成十八年二月二十一日受領答弁第六一号
内閣衆質一六四第六一号
平成十八年二月二十一日
衆議院議長 河野洋平 殿
衆議院議員赤嶺政賢君提出米軍横田空域の返還に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員赤嶺政賢君提出米軍横田空域の返還に関する質問に対する答弁書
一について
日米両国政府は、平成十七年十月二十九日に開催された日米安全保障協議委員会で発表された文書(以下「発表文書」という。)において、横田空域(アメリカ合衆国(以下「合衆国」という。)軍隊が横田飛行場において行っている進入管制業務の対象である空域をいう。以下同じ。)については、「二千九年に予定されている羽田空港拡張を念頭に置きつつ、横田空域における民間航空機の航行を円滑化するための措置が探求される。検討される選択肢には、米軍が管制を行っている空域の削減や、横田飛行場への日本の管制官の併置が含まれる。加えて、双方は、嘉手納のレーダー進入管制業務の移管プロセスの進捗を考慮する。」と表明したところである。
発表文書における「空域の削減」とは、合衆国軍隊による進入管制業務の対象である空域を削減し、当該削減された空域における航空交通管制業務を合衆国軍隊から日本国政府に移管することを意味し、「横田飛行場への日本の管制官の併置」とは、合衆国軍隊が進入管制業務を行っている場所である横田飛行場に日本国の航空管制官を併せて配置することを意味するものである。
横田飛行場の軍民共用化については、平成十五年五月の日米首脳会談においてその実現可能性につき、日米両国政府が共同で検討していくこととなったことを受け、平成十五年十二月より、内閣官房、防衛庁、防衛施設庁、外務省及び国土交通省と東京都との間で実務的な協議を行うことを目的とした連絡会(以下「連絡会」という。)が開かれている。
これまで六回開催された連絡会においては、横田飛行場の軍民共用化に関連する様々な事項について意見交換するとともに、情報の共有化を図っている。
日米両国政府間では、発表文書において、横田飛行場の「あり得べき軍民共同使用のための具体的な条件や態様が、共同使用が横田飛行場の運用上の能力を損なってはならないことに留意しつつ、検討される。」と発表したことを受け、更に具体的な検討を進めていく考えである。
政府としては、横田空域における進入管制業務の合衆国軍隊から日本国政府への移管(以下「横田空域の返還」という。)については、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定(昭和三十五年条約第七号。以下「日米地位協定」という。)第二十五条第一項の規定に基づいて設置された日米合同委員会(以下「日米合同委員会」という。)の下に設置されている民間航空分科委員会(以下「分科委員会」という。)において、昭和五十八年十二月以降、これまで七回にわたり合衆国側に要請するなど、その実現に向けてこれまでも鋭意努力してきている。
分科委員会においては、合衆国側議長としては在日合衆国軍隊司令部第三部長が、また日本国側議長としては平成十五年三月までは国土交通省(平成十三年一月五日以前は運輸省)航空局首席安全・危機管理監察官が、それ以降は国土交通省航空局管制保安部長がそれぞれ務めており、日米双方のその他の出席者は、分科委員会の議案の内容に応じてその都度変動している。
分科委員会においては、合衆国軍隊が横田空域において、現在実施している進入管制業務について、我が国も既に当該業務を行う十分な能力及び技術を備えているとの観点から、横田空域の返還の要求をしているところである。これに対し、合衆国側からは、合衆国軍隊の運用上の理由から横田空域の返還は困難であるとの回答を得ているところである。政府としては、引き続き、安全保障上の必要性を踏まえつつ、横田空域の返還に向けた努力を適宜適切に続けていく考えである。
横田空域の削減については、発表文書において、平成二十一年に予定されている東京国際空港の拡張を念頭におきつつ探求される横田空域における民間航空機の航行を円滑化するための措置の選択肢の一つとして、日米両国政府の関係閣僚により確認されている。
東京国際空港から西日本方面に出発する航空機については、大阪方面に出発する航空機を除き横田空域を避けて飛行するため、横田空域の手前で十分な高度に上昇できるよう東京湾内で長距離の旋回飛行を行う等としており、横田空域の存在が民間航空交通に影響を与えているのは事実である。
平成二十一年に予定されている同空港の拡張による発着能力の向上により、同空港から西日本方面に出発する航空機も増加することが見込まれていることから、安全かつ円滑な航空交通管制を実施するためには、少なくとも横田空域の削減が必要であると認識している。
昭和五十年五月に日米合同委員会で合意された航空交通管制に関する合意(以下「昭和五十年合意」という。)において、我が国が進入管制業務を実施し得る能力や技術を備えているかどうかが横田空域の返還の条件であるとされているわけではないが、政府としては、我が国は既に横田空域における進入管制業務を実施し得る十分な能力及び技術を備えていると考えている。
昭和二十七年六月に日米合同委員会で合意された航空交通管制に関する合意(以下「昭和二十七年合意」という。)において、我が国の自主的な航空交通管制業務が可能となるまでの間の一時的な措置として合衆国軍隊がその施設で行う航空交通管制業務を利用して民間航空交通の安全を確保するとされていたところ、昭和三十四年六月に日米合同委員会で合意された航空交通管制に関する合意(以下「昭和三十四年合意」という。)においては、我が国において航空交通管制業務を実施する体制が整備されてきたことに伴い、合衆国軍隊の飛行場周辺の飛行場管制業務及び進入管制業務を除き、すべて我が国において航空交通管制業務を実施することについて、合意したものである。
昭和五十年合意は、日米地位協定第三条の規定による合衆国の権限を前提とした上で、航空交通の安全を基調としつつ、航空交通管制の協調及び整合を図ったものである。また、昭和五十年合意によって、昭和二十七年合意及び昭和三十四年合意は、一部の規定を除いて失効しているが、これをもって、横田空域の返還の途を閉ざすものではない。
昭和五十年合意の運用に係る事項は、分科委員会の場で日米両国政府間で協議されるものであり、「米国政府の裁量権に完全に委ねた」との御指摘は当たらない。
分科委員会の場で日米両国政府の協議が整うことにより、横田空域の返還は可能であり、実際、過去七回にわたり横田空域の削減が行われている。また、昭和五十年合意には、合衆国政府による管制業務の廃止に係る事項が盛り込まれている。したがって、横田空域の返還のために昭和五十年合意を変更することが不可欠であるとは考えていない。
お尋ねの「運用上の必要性」については、合衆国軍隊の運用に係る内容であり、詳細に述べることは差し控えたい。