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平成十八年四月十一日受領
答弁第一九九号

  内閣衆質一六四第一九九号
  平成十八年四月十一日
内閣総理大臣 小泉純一郎

       衆議院議長 河野洋平 殿

衆議院議員赤嶺政賢君提出カネミ油症被害者の救済に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員赤嶺政賢君提出カネミ油症被害者の救済に関する質問に対する答弁書



一の1及び6について

 厚生労働省においては、カネミ油症の原因及び治療法の究明等を目的とする組織である油症研究班の「油症診断基準(二〇〇四年九月二十九日補遺)」は、これまで蓄積された医学的、疫学的及び科学的知見に基づき策定されたものであると考えており、また、平成十六年九月二十九日の改定により、ダイオキシン類であるポリ塩化ジベンゾフラン(以下「PCDF」という。)の血中濃度に関する事項が当該油症診断基準に取り入れられており、現時点においては、当該油症診断基準の見直しが必要であるとは考えていない。

一の2について

 カネミ油症の原因物質は、当初ポリ塩化ビフェニル(以下「PCB」という。)のみと考えられていたが、油症研究班の研究により、昭和五十年にライスオイル中にPCDFが含有されていたことが判明し、昭和五十二年には、油症患者の脂肪組織及び肝臓中にもPCDFが検出されたこと等から、油症研究班においては、昭和五十八年の研究報告において、「油症原因物質としての主役は、かつて考えられたPCBというより、これに混在していた微量のPCDFであると考えられるに至つた。」としている。しかしながら、当時はダイオキシン類にどのような物質が含まれるということについては、整理されていなかったところであり、厚生労働省としてPCDFをダイオキシン類と認識しはじめた時期については、平成十三年十二月十一日の参議院決算委員会において、厚生労働省医薬局食品保健部長が「厚生労働省としてPCDFをダイオキシン類というものと認識したというのは千九百八十年代の後半」との答弁をしているところである。

一の3について

 油症診断基準は、発病条件、重要な所見等を示したものであり、平成十六年九月二十九日の油症診断基準の改定においては、PCDFの血中濃度に関する事項が油症診断基準に取り入れられていると承知している。

一の4について

 平成十六年九月二十九日の油症診断基準の改定以後、平成十八年四月一日までの間に、当該診断基準を参考に、関係都府県の知事によって新たに油症患者として認定された者は二十五人であり、要経過観察とされた者は十人であると承知している。
 また、この間にカネミ油症の認定について申請した者は百八十九人であり、そのうち、審査が終了した者は百八十八人であると承知している。

一の5について

 厚生労働省においては、平成十六年九月二十九日に改定された油症診断基準を参考に、申請を受けた都府県の知事が適切にカネミ油症の認定の可否の判断を行い、その結果新たに認定された者が二十五人となったものと考えている。
 なお、平成十六年九月二十九日の油症診断基準の改定については、厚生労働省において、各都道府県等に通知を行うとともに、全国食品衛生主管課長会議等を通じて、カネミ油症の認定に関する問い合わせ等に適切に対応するよう依頼を行い、さらに、カネミ油症に関する相談等に対応するため、油症研究班に油症相談員を設置することを推進する等、カネミ油症の認定に関する環境整備に努めている。

二について

 環境基本法(平成五年法律第九十一号)第二条第三項において、「公害」とは、環境の保全上の支障のうち、事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染、騒音、振動、地盤の沈下及び悪臭によって、人の健康又は生活環境に係る被害が生ずることとされており、環境省においては、食用米ぬか油の製造工程中に直接PCBやPCDFが混入し、これを食べた者に健康被害を及ぼしたカネミ油症事件について、公害としてとらえて医療や保健に係る措置を講ずることは困難であると考えている。

三の1及び4について

 カネミ油症事件における仮払金に係る国の不当利得返還請求権(以下「カネミ油症の仮払金債権」という。)については、国の債権の管理等に関する法律(昭和三十一年法律第百十四号。以下「債権管理法」という。)に基づき、債権免除に係る規定の適用の検討を含め、適切に対処してまいりたい。
 なお、カネミ油症事件についての国に対する損害賠償請求訴訟は既に取り下げられており、仮払金を返還した債務者に対して国が補償金、見舞金等を支給することは、困難である。

三の2について

 債権管理法第三十二条第一項では、債務者が無資力又はこれに近い状態にあるため債権管理法第二十四条第一項の規定により履行期限を延長する特約等をした債権について、当初の履行期限から十年を経過した後において、なお債務者が無資力又はこれに近い状態にあり、かつ、弁済することができることとなる見込がないと認められる場合には、当該債権並びにこれに係る延滞金及び利息を免除することができる旨を規定しているところ、お尋ねの「無資力又はこれに近い状態にあり、かつ、弁済することができることとなる見込みがないと認められる場合」については、個別具体の事例に即して判断すべきものであるが、例えば、生活保護法(昭和二十五年法律第百四十四号)による扶助を受けている場合が考えられる。

三の3について

 カネミ油症の仮払金債権の債務者の収入、資産等の生活の実態については、カネミ油症の仮払金債権について債務者との間で履行期限の延長の特約等の調停等を行うに当たって、関係資料の提出を求める等により、その実態の把握に努めてきたところであり、今後とも同様に対応する考えである。

四の1について

 カネミ油症については、旧厚生省は、昭和四十三年十月十六日に、地方公共団体に調査及び国への報告を指示している。また、患者の発生が地域的に広範囲であり、不明な点も多かったことから、油症研究班に診断基準の策定を依頼し、同月二十二日、診断基準を地方公共団体に示したところである。各地方公共団体の保健所においては、当該診断基準を踏まえて調査が実施された。当該調査の結果については、旧厚生省において「昭和四十三年全国食中毒事件録」を取りまとめている。
 また、カネミ油症については、昭和四十三年の事件発生以降、旧厚生省及び厚生労働省において、油症研究班が行っている検診を活用すること等により、継続的に油症患者の実態の把握に努めているところである。

四の2について

 厚生労働省においては、「汚染された米ぬか油を食べ、健康被害を受けた未認定被害者やその子供(二世、三世を含む)」について、関係都府県で、カネミ油症の認定手続き等の広報を行い、円滑な申請が行われるよう配慮しているものと承知しており、また、油症患者と認定された場合には、油症研究班が行う検診を活用すること等により、継続的な実態の把握に努めていく考えである。

四の3について

 油症患者に対する治療方法については、油症研究班により、昭和四十三年十月に「米ぬか油の食用によるいわゆる油症患者の暫定的治療指針」が、昭和四十五年二月に「油症の治療方針」が、昭和四十七年十月に「油症治療指針」が、昭和六十一年六月に「油症治療指針」の改定及び「油症患者の生活指針」が取りまとめられるなどの成果が挙げられているが、根治的な治療方法については未だ確立されておらず、最近では、漢方薬を活用した臨床試験等が実施されていると承知している。
 旧厚生省及び厚生労働省においては、事件発生当初より、油症研究班の研究について、厚生労働科学研究費補助金等により補助を行ってきたところであり、引き続き、カネミ油症に関する治療方法の研究を支援してまいりたい。



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