答弁本文情報
平成十九年十月二日受領答弁第三三号
内閣衆質一六八第三三号
平成十九年十月二日
衆議院議長 河野洋平 殿
衆議院議員照屋寛徳君提出高校歴史教科書の検定に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員照屋寛徳君提出高校歴史教科書の検定に関する質問に対する答弁書
一及び二について
平成十八年度の日本史教科書の検定においては、文部科学省の教科書調査官が教科用図書検定調査審議会(以下「審議会」という。)の審議のための資料として調査意見書を審議会に提出しており、当該調査意見書において、沖縄における集団自決に関する記述の一部について、「沖縄戦の実態について誤解するおそれのある表現である」と指摘した。審議会では、当該指摘を踏まえ、調査審議を行った結果、審議会の委員から特段の異論はなく、当該指摘と同じ内容の検定意見を付すことが適当としたものである。
文部科学省としては、審議会においては、各委員が検定の時点における客観的な学問的成果等に照らして、それぞれの知見により審議した結果、最終的に審議会として、調査意見書における指摘と同じ内容の検定意見を付すことが適当と判断したものであると考える。
平成十八年度の日本史教科書の検定意見は、沖縄における集団自決について、旧日本軍の関与を否定するものではなく、不幸にも集団自決された沖縄の住民のすべてに対して、自決の軍命令が下されたか否かを断定できないという考えに基づいて付されたものである。
なお、沖縄戦における住民の犠牲者のうち、戦傷病者戦没者遺族等援護法(昭和二十七年法律第百二十七号)の適用上、過去に戦闘参加者と認定されたものについて、その過程で軍命令があったとされた事例がある。
教科用図書検定規則(平成元年文部省令第二十号)第十三条第一項に規定する「誤った事実の記載」とは、例えば、災害に係る記述における被害者数の誤り、美術作品の作者の氏名の誤り等のいわゆる事実誤認に基づく記載を意味するものである。
平成十八年度の日本史教科書の検定決定後の記述については、沖縄における集団自決について、旧日本軍の関与が一切存在しなかったとする記載はなく、御指摘はいずれも当たらないものと考える。
御指摘の教科用図書検定規則第十三条第四項の規定による訂正申請の勧告の制度は、平成元年に検定手続の大幅な簡素化及び重点化に伴う措置として導入されたものである。同項の規定に基づき勧告した例はない。
教科用図書検定規則第十三条第二項に規定する「学習を進める上に支障となる記載」としては、例えば、明確な結果が得られない理科の実験方法の記載、児童生徒が判別しにくい地図上の記号等がある。
平成十八年度の日本史教科書の検定決定後の記述については、沖縄における集団自決について、旧日本軍の関与が一切存在しなかったとする記載はないが、発行者から当該記述について同項に基づく訂正申請がなされた場合は、申請理由等を十分に検討して、当該記述が「学習を進める上に支障となる記載」に当たるか否かを判断した上で、今回の検定意見の趣旨等を勘案しつつ適切な対応を図ることとなる。