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答弁本文情報

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平成十九年十一月二十二日受領
答弁第二二四号

  内閣衆質一六八第二二四号
  平成十九年十一月二十二日
内閣総理大臣 福田康夫

       衆議院議長 河野洋平 殿

衆議院議員保坂展人君提出裁判員制度を前提とする国連拷問等禁止委員会勧告に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員保坂展人君提出裁判員制度を前提とする国連拷問等禁止委員会勧告に関する質問に対する答弁書



一の1について

 司法研修所の委嘱を受け、裁判官等が、量刑に関する一般の国民及び裁判官の意識についての研究を行い、アンケートに対する回答結果を基に、一般の国民及び裁判官が、それぞれ、量刑の判断に当たってどのような因子を重視する傾向にあるのかなどを分析したことは承知しており、当該研究の報告書においても、当該研究の「結果に基づいて、裁判員裁判における裁判員の量刑に関する意見がどのようなものになるのかを直ちに予測することができるというものではない。」と記載されていると承知している。

一の2について

 拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰に関する条約(平成十一年条約第六号)第十七条1の規定に基づいて設置された拷問の禁止に関する委員会に政府が提出した第一回政府報告の検討を踏まえて同委員会が二千七年五月十六日及び同月十八日の会合で採択した結論及び勧告において、被勾留者等を刑事施設に収容することに代えて留置施設に留置する制度(以下「代替収容制度」という。)が、被留置者の権利が侵害される可能性を増加させるなどの指摘がなされていることは承知しているが、警察においては、従来から、捜査を担当しない部門に属する留置担当官が被留置者の処遇を行うといういわゆる捜査と留置の分離の制度を採るなど、人権に配慮した処遇を行っており、代替収容制度が同条約に抵触するものであるとは考えていない。

一の3について

 裁判官は、適正な審理及び裁判を実現するために、司法研修所での修習や任官後の研修等において、証拠の評価の在り方を含め、専門家として必要かつ十分な研修を受けているものと承知している。

一の4について

 裁判員制度においては、裁判官と裁判員とが十分に評議を行うことで双方の有する知識・経験が合議体全体に共有されるとともに、その過程を通じ、適正な結論に到達することが予定されているところである。

一の5について

 一般に、勾留中の被疑者に対するものを含め被疑者の取調べは適正に行われているものと承知しており、代替収容制度が御指摘のような危険性を生じさせるものとは考えていない。

一の6及び7について

 裁判員の参加する刑事裁判に関する法律(平成十六年法律第六十三号)においては、裁判員制度の下で法に従った公平な裁判が行われることを担保するために、様々な手当てがなされているものと考えている。
 また、我が国の刑事司法制度の下では、限られた身柄拘束の期間の中で、被疑者の取調べその他の捜査を円滑かつ効率的に実施しつつ、被疑者とその家族、弁護人等との接見の便にも資するためには、全国にきめ細かく設置されている留置施設に被疑者を勾留することが現実的であり、代替収容制度は、このような観点からみて、現に重要な役割を果たしている。刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律(平成十七年法律第五十号。以下「刑事収容施設法」という。)においては、留置施設に係る留置業務に従事する警察官は、その留置施設に留置されている被留置者に係る犯罪の捜査に従事することを禁じる旨を明文で規定し、一般の方を委員とする留置施設視察委員会の設置を規定するなどの制度的改善を加えており、現段階で刑事収容施設法を改正し、代替収容制度を廃止することは考えていない。この点は、裁判員制度が実施されることによっても異なるところはないと考えている。

二の1及び2について

 お尋ねの「拘禁反応」の診断を受けている被勾留者数については、調査・集計しておらず、また、これを新たに調査・集計するとなると各被勾留者の診療録の精査等が必要であり、膨大な作業となることから、お答えすることは困難である。

二の3及び4について

 裁判員制度の下においては、法に従った公平な裁判が行われることを担保するために、裁判は法廷に出された証拠のみに基づいてなされなければならないこと等、事実認定等の判断の前提として必要な知識や注意すべき点については、裁判長から裁判員に適切な説明がなされること、裁判官と裁判員とが十分に評議を行うことで双方の有する知識・経験が合議体全体に共有されるとともに、その過程を通じ、適正な結論に到達することが予定されていること、裁判官と裁判員との合議によるべき事項についての判断は、その双方の意見を含む合議体の過半数の意見によることとされていること等を考慮すると、御指摘のような危険性はないものと考えている。

二の5について

 御指摘の「未決勾留者」については、罪証の隠滅の防止を図るとともに、その名誉やプライバシーを保護する観点から、処遇上共同室に収容することが適当と認める場合を除き、できる限り、単独室に収容する必要があり、また、同様の観点から、居室外においても相互に接触させない必要があることから、御指摘のような立法措置は考えていない。

三の1及び2について

 お尋ねの「拘禁反応」の診断を受けている受刑者数については、調査・集計しておらず、また、これを新たに調査・集計するとなると各受刑者の診療録の精査等が必要であり、膨大な作業となることから、お答えすることは困難である。

三の3について

 研究者の研究結果に基づく意見の一つであると認識している。

三の4について

 御指摘の「新たな科学的根拠」は研究者の研究結果に基づく意見の一つであると認識しているが、受刑者の昼夜単独室処遇については、衆議院議員保坂展人君提出拷問等禁止委員会最終見解のうち、刑事司法・刑事拘禁と入管手続などに関する質問に対する答弁書(平成十九年六月十五日内閣衆質一六六第三六八号)五の(五)から(七)までについてで述べたとおり適切な運用に努めており、これを変更する必要があるとは考えていない。

三の5について

 刑事施設においては、集団で作業を行う場所での就業を拒否し続けるなど勤労意欲の欠如が認められたり、心身の健康状態等により集団での処遇が困難な受刑者や、周囲とトラブルを起こすおそれが認められる受刑者がおり、これらの個別事情が継続していることにより、やむを得ず、昼夜の単独室処遇が相当長期間にわたる受刑者が存在することから、御指摘のような立法措置は考えていない。



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