答弁本文情報
平成二十四年二月二十一日受領答弁第六九号
内閣衆質一八〇第六九号
平成二十四年二月二十一日
衆議院議長 横路孝弘 殿
衆議院議員馳浩君提出法科大学院改革に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員馳浩君提出法科大学院改革に関する質問に対する答弁書
一について
御指摘の法科大学院の実地調査については、総務省において、平成二十三年一月から実施している「法曹人口の拡大及び法曹養成制度の改革に関する政策評価」の一環として、全国七十四の法科大学院のうち三十八の法科大学院を抽出して教育の質の向上に係る取組等について調査を実施したものであり、現在、その結果を取りまとめているところである。
この調査結果等を踏まえて、当該政策評価の結果について、できる限り早期に取りまとめてまいりたい。
法務省と文部科学省(以下「両省」という。)では、法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律(平成十四年法律第百三十九号。以下「連携法」という。)第二条の法曹養成の基本理念にのっとり、法曹の養成が両省等の連携の下に行われることを確保するため、協議会を設置するなど必要な施策を講じてきたところである。また、法曹の養成に関する制度の在り方については、両省において、平成二十二年に「法曹養成制度に関する検討ワーキングチーム」を設置して、法曹養成制度の問題点等の検証等を行い、その結果等を踏まえ、平成二十三年五月からは、内閣官房、総務省、法務省、財務省、文部科学省及び経済産業省の共催による「法曹の養成に関するフォーラム」において、必要な検討を行っているところであり、「縦割りが弊害となり、制度改革の妨げになっている」という御指摘は当たらないものと認識している。
新司法試験の合格者数は、平成十八年が千九人、平成十九年が千八百五十一人、平成二十年が二千六十五人、平成二十一年が二千四十三人、平成二十二年が二千七十四人、平成二十三年が二千六十三人であるところ、合格者は、司法試験委員会において、法曹となるべき能力の有無を判定するという観点から適切に決定されたものと認識しているが、合格者数がこのように推移している原因については、現時点で判断することは困難である。
いずれにしても、法科大学院教育及び司法試験を含む法曹の養成に関する制度の在り方については、二についてで述べた「法曹の養成に関するフォーラム」において、必要な検討を行っているところである。
法科大学院については、入学者における多様性の確保に配慮しつつ、入学者の質の確保や教育の質の向上等が求められているのであり、文部科学省においては、質の高い入学者の確保や修了者の司法試験の合格状況に課題がある法科大学院に対しては、引き続き、主体的な組織の見直しを促す必要があると考えている。
専門職大学院設置基準(平成十五年文部科学省令第十六号)第二十五条第一項に規定する法学既修者以外の者(以下「法学未修者」という。)の司法試験の合格率は、法学既修者に比べて相当程度低い状況にあって、その状況の改善が必要であると認識しており、文部科学省においては、平成二十一年四月十七日に中央教育審議会大学分科会法科大学院特別委員会において取りまとめられた「法科大学院教育の質の向上のための改善方策について(報告)」において、法学未修者については、一年次における履修科目の登録の上限の標準を超えて、憲法等の基本的科目を履修できるようにすることが必要であると提言されたことを踏まえ、法科大学院を置く大学に対して通知を発出し、その旨の周知を図るとともに各法科大学院における教育の質の向上に係る取組を促すなど、法学未修者の教育の充実に向けた措置を実施し、多様な人材の確保に努めているところである。
お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、司法試験法(昭和二十四年法律第百四十号)第一条第一項は、司法試験について、裁判官、検察官又は弁護士となろうとする者に必要な学識及びその応用能力を有するかどうかを判定することを目的とするものと規定し、連携法第二条は、法科大学院において、入学者の適性の適確な評価及び多様性の確保に配慮した公平な入学者選抜を行い、少人数による密度の高い授業により、将来の法曹としての実務に必要な学識及びその応用能力並びに法律に関する実務の基礎的素養を涵養するための理論的かつ実践的な教育を体系的に実施し、その上で厳格な成績評価及び修了の認定を行い、司法試験において、このような法科大学院における教育との有機的連携の下に、裁判官等となろうとする者に必要な学識及びその応用能力を有するかどうかの判定を行うものと規定しており、司法試験は、司法試験委員会において、これらの規定を踏まえて適切に実施されているものと認識している。また、法科大学院における教育についても、同条の規定を踏まえて適切に実施されるべきものと認識しており、四及び五についてで述べたとおり、課題を抱えている法科大学院については、その状況の改善を図る必要があるものと考えている。
司法修習終了直後に弁護士として登録されなかった者の割合は、近年、増加傾向にあり、司法修習終了者の法律事務所への就職が困難となってきているものと思われる。もっとも、そのような者も、数か月以内には、相当程度が弁護士として登録されるに至っていることに加え、法律事務所以外に就職する者も以前より増加していることなどから、現段階において、司法修習終了者の就職状況について評価を加えることは困難である。いずれにしても、これらの状況については、引き続き注視していく必要があるものと認識しており、二についてで述べた「法曹の養成に関するフォーラム」においても、司法修習終了者の就職を含めた法曹の活動領域の在り方について、必要な検討を行っているところである。