答弁本文情報
平成二十四年四月六日受領答弁第一五八号
内閣衆質一八〇第一五八号
平成二十四年四月六日
衆議院議長 横路孝弘 殿
衆議院議員服部良一君提出原子力防災の見直し、強化等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員服部良一君提出原子力防災の見直し、強化等に関する質問に対する答弁書
一について
御指摘の「原子力災害対策指針」(以下単に「原子力災害対策指針」という。)については、今国会に提出した原子力の安全の確保に関する組織及び制度を改革するための環境省設置法等の一部を改正する法律案(以下「法律案」という。)の成立後、速やかに、内閣府原子力安全委員会原子力施設等防災専門部会が平成二十四年三月二十二日に取りまとめ同委員会に報告した「「原子力施設等の防災対策について」の見直しに関する考え方について(中間とりまとめ)」(以下「中間取りまとめ」という。)を踏まえ、定めることとしている。その上で、御指摘の「防災基本計画、原子力災害対策マニュアル及び関係行政機関の防災業務計画等」(以下「防災基本計画等」という。)については、法律案、原子力災害対策指針、東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会が平成二十三年十二月二十六日に取りまとめた「中間報告」等を踏まえ修正を行うこととしている。また、これらの内容については現在検討中である。
お尋ねについては、中間取りまとめにおいて示された予防的防護措置を準備する区域(以下「PAZ」という。)や緊急防護措置を準備する区域(以下「UPZ」という。)に関する考え方について、原子力災害対策指針に定め、その上で、防災基本計画等の修正を行った後、関係道府県において、地域防災計画を修正することにより、定められるものと承知している。なお、政府としては、関係道府県におけるPAZやUPZの具体的な範囲の検討が円滑に進められるよう、これらの範囲に係る原子力災害対策指針の考え方について、関係道府県に対して説明するとともに、原子力発電所からの放射性物質の拡散シミュレーションを行い、その結果を参考情報としてお示しする予定である。
お尋ねについては、法律案の成立後、速やかに進めてまいりたい。
お尋ねについて、「実効的に裏付けるインフラ」が何を指すのか必ずしも明らかではないが、現時点において、平成二十四年度までに順次講ずることとしている措置として、例えば、緊急事態応急対策の拠点となる緊急事態応急対策拠点施設(以下「オフサイトセンター」という。)等における衛星回線の拡充等の通信体制の強化や関係道府県におけるモニタリングポストの追加整備を行うこととしている。
また、オフサイトセンターの立地を含めた在り方については、中間取りまとめや関係道府県等の意見を踏まえ、可能な限り早期に結論を得るべく検討を進めてまいりたい。
お尋ねの場合においては、現行制度の枠組みで対応することとなるが、PAZの考え方を踏まえ、直ちに避難に係る指示を行うなど、可能な限りこれらの新たな考え方を取り入れた対応を行ってまいりたい。また、このような対応について、関係道府県に対して説明会等を行うことにより、仮に防護措置が発動されても現場に混乱が生じないよう努めてまいりたい。
気体状又は粒子状の放射性物質を含んだ空気の一団の通過時の被ばくを避けるための防護措置を実施する地域(以下「PPA」という。)については、中間取りまとめにおいて、「今後、・・・具体的な対応を検討していく必要がある。」とされており、法律案の成立後速やかに行うことを予定している原子力災害対策指針の策定及び防災基本計画等の修正においては、PPAに関する事項を盛り込むこととはしていないが、今後、PPAに関する事項について、可能な限り早期に結論を得るべく検討を進めてまいりたい。
お尋ねについて、関係道府県等における地域防災計画の修正に係る状況については把握していないが、当該地域防災計画の検討が円滑に進められるよう、関係道府県等が準備すべき事項等を示したガイドラインやマニュアルを示すこととしている。
平成二十四年度においては、原子力施設等の防災対策等に係る交付金を関係道府県に対して交付することとしており、これにより、地域防災計画に沿って、順次、安定ヨウ素剤、防護服、放射線測定器等の防災資機材の整備等が行われるものと考えている。
また、関係道府県が地域防災計画を修正するために避難シミュレーション等を実施する場合には、独立行政法人原子力安全基盤機構を通じ必要な技術的支援を行うこととしている。
お尋ねについては、中間取りまとめにおいて、「原子力災害のうち「公衆の防護」に関する対応については、避難など一般災害対応とも重なる部分がある」とされていることも踏まえ、原子力災害の特殊性を十分考慮した防災対策を検討してまいりたい。
お尋ねの事項については、中間取りまとめにおいて今後検討すべき課題等が示されていることから、これらを踏まえ、可能な限り早期に結論を得るべく検討を進め、その結果を原子力災害対策指針に反映させてまいりたい。
お尋ねについては、政府としては、当時、東京電力株式会社の福島第一原子力発電所の事故のような短時間で事態が進展するシビアアクシデントが起き得ることの認識や国際的な動向を迅速に取り入れる姿勢が欠けていたことなどの問題があったと考えている。このような中で、福島第一原子力発電所の事故が発生し、それにより避難等の措置を講じた地域の範囲がEPZの範囲を超えたこと等について、真摯に受け止める必要があると考えている。今後は、こうした点を十分に反省し、いわゆる安全神話に陥らず、国際的な原子力規制の動向にも注意を払っていくことが必要と認識している。
従来の我が国の原子力安全規制については、お尋ねのシビアアクシデント対策等を含め、国際機関等の動向や研究成果に関する情報を入手し自らの規制活動に活用する努力が十分でなかったこと等の問題があったと考えている。
政府としては、福島第一原子力発電所の事故の反省を踏まえ、シビアアクシデント対策に係る規制を含む法律案を今国会に提出しているところであり、法律案の成立後、当該規制を適切に実施してまいりたい。
御指摘の「原子力防災の見直し、強化が文書上だけでなく、実地に完了すること」が何を指すのか必ずしも明らかではないが、原子力防災対策については、常により高い水準を目指していくことが重要であると考えており、福島第一原子力発電所の事故を踏まえ、原子力災害対策指針に係る検討を進めるとともに、関係道府県等における地域防災計画の修正を支援するなど、我が国における原子力防災対策の強化に向けた取組を進めているところである。
こうした原子力防災対策の不断の見直しに取り組む一方で、定期検査で停止中の原子力発電所の安全性については、平成二十三年七月十一日に内閣官房長官、経済産業大臣及び内閣府特命担当大臣において取りまとめた「我が国原子力発電所の安全性の確認について(ストレステストを参考にした安全評価の導入等)」において、安全上重要な施設・機器等が設計上の想定を超える事象に対し、どの程度の安全裕度を有するのかという点について、欧州各国で導入されたストレステストを参考に、新たな手続やルールに基づく安全評価を原子力事業者が行い、その評価結果について、経済産業省原子力安全・保安院が確認し、更に内閣府原子力安全委員会がその確認の妥当性を確認することとなっている。
これらの確認を行った上で、定期検査で停止中の原子力発電所の運転再開については、内閣総理大臣、内閣官房長官、経済産業大臣及び内閣府特命担当大臣が、住民の理解や国民の信頼が得られているかという点も踏まえ、その可否を総合的に判断していくとしており、お尋ねの「原発再稼働判断に係る「地元」の範囲又はそれらを判断する基準若しくは要素」について、具体的にお示しすることは困難であるが、住民の理解や国民の信頼が得られているかの判断に際しては、地方自治体の首長や議会の意見は、有力な根拠になると考えている。