答弁本文情報
平成二十四年十一月六日受領答弁第九号
内閣衆質一八一第九号
平成二十四年十一月六日
衆議院議長 横路孝弘 殿
衆議院議員浅野貴博君提出一九九七年のいわゆる日中漁業協定における尖閣諸島の取り扱い等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員浅野貴博君提出一九九七年のいわゆる日中漁業協定における尖閣諸島の取り扱い等に関する質問に対する答弁書
一について
漁業に関する日本国と中華人民共和国との間の協定(平成十二年条約第二号。以下「協定」という。)は、千九百九十六年に日中両国が海洋法に関する国際連合条約(平成八年条約第六号)を締結したことを受け、日中両国が、それぞれ自国の排他的経済水域において海洋生物資源の管理を行うことを基本とする新たな漁業秩序を確立するため、千九百九十六年四月から協議を開始し千九百九十七年十一月に署名し、二千年六月に発効したものである。協定は、日中両国が、それぞれ自国の排他的経済水域において、相手国の国民及び漁船に対し、漁獲の許可を行うこと、資源状況等を考慮して漁獲割当量その他の操業条件を決定すること、海洋生物資源の保存措置等の遵守を確保するために必要な措置を採ることなどを規定している。
協定第六条(a)に規定する水域については、日中両国いずれかの排他的経済水域であり、かつ、日中間で境界画定が必要となる水域であるが、排他的経済水域の境界画定についての日中間の立場は隔たりが大きく、長期間にわたる交渉が必要と考えられ、一方、漁業に関しては、早期の解決が必要であったことから、協定第二条から第五条までの規定を適用しないこととしたものである。
また、協定第六条(b)に規定する水域については、漁業実態が複雑であり、かつ入り組んでいることから、既存の漁業秩序を基本的に維持することとし、協定第二条から第五条までの規定を適用しないこととしたものである。
協定が適用される水域は、協定第一条において日中両国の排他的経済水域とされている。したがって、協定第六条(b)に規定する水域には、我が国固有の領土である尖閣諸島の周辺の我が国の排他的経済水域は含まれるが、同諸島の周辺の我が国の領海は含まれない。
協定第六条(b)に規定する水域については、二についてで述べた理由から、協定第二条から第五条までの規定を適用しないこととしたものである。御指摘の書簡は、このような協定上の取扱いのほかに、当該水域における資源維持について日中両国が協力関係にあることを前提として、中国国民に対して、我が国の漁業関係法令を適用しないこととし、その旨を表明するために発出したものである。なお、当該書簡の発出と同時に、中国から我が国に対し、当該書簡と同様の内容の書簡が、発出されている。
御指摘の書簡においては、「日本国政府は、日中両国が同協定第六条(b)の水域における海洋生物資源の維持が過度の開発によって脅かされないことを確保するため協力関係にあることを前提として、中国国民に対して、当該水域において、漁業に関する自国の関係法令を適用しないとの意向を有している。」と記述されている。
協定第六条(b)に規定する水域においては、排他的経済水域における漁業等に関する主権的権利の行使等に関する法律施行令(平成八年政令第二百十二号)附則第二条の規定により、排他的経済水域における漁業等に関する主権的権利の行使等に関する法律(平成八年法律第七十六号。以下「法」という。)第五条から第十三条までの規定は、中国国民に対して適用しないこととしている。
お尋ねのような事例については、個別具体的には把握しておらず、お答えすることは困難である。
協定第六条(b)に規定する水域において、法第五条から第十三条までの規定を、中国国民に対して適用した事例はない。また、適用しなかった事例については、個別具体的には把握しておらず、お答えすることは困難である。