答弁本文情報
平成二十九年五月二十三日受領答弁第三〇八号
内閣衆質一九三第三〇八号
平成二十九年五月二十三日
衆議院議長 大島理森 殿
衆議院議員逢坂誠二君提出日本国憲法第九条に自衛隊の存在についての条項を加憲することの意味に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員逢坂誠二君提出日本国憲法第九条に自衛隊の存在についての条項を加憲することの意味に関する質問に対する答弁書
一について
個別的自衛権及び集団的自衛権は国際法上の概念であるところ、国際連合憲章(昭和三十一年条約第二十六号)第五十一条は、「この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない」と規定しており、ここにいう個別的自衛権とは、一般に、自国に対する武力攻撃を実力をもって阻止することが正当化される権利をいい、集団的自衛権とは、一般に、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止することが正当化される権利をいうと解されている。我が国が国際法上、個別的自衛権及び集団的自衛権を有していることは、主権国家である以上は当然である。
他方、憲法上、我が国の自衛権についての明文の規定はなく、憲法第九条の文言は、我が国として国際関係において「武力の行使」を行うことを一切禁じているように見えるが、憲法前文で確認している日本国民の平和的生存権や憲法第十三条が生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利を国政上尊重すべきこととしている趣旨を踏まえて考えると、憲法第九条が、我が国が自国の平和と安全を維持し、その存立を全うするために必要な自衛の措置を採ることを禁じているとは到底解されない。同条の下においても、「武力の行使」の三要件、すなわち、@我が国に対する武力攻撃が発生したこと、又は我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること、Aこれを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないこと、B必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと、という三要件に該当する場合の自衛の措置としての「武力の行使」は許容されると解している。
お尋ねは、憲法改正を前提とするものであると考えられるところ、憲法改正については、国会が発議し、国民投票により決せられるものであること等を踏まえ、お答えすることは差し控えたい。
自衛隊の行動及び権限に係る法令の規定ぶりに関し、いわゆる「ポジティブリスト」及び「ネガティブリスト」についての確立した定義があるとは承知していないが、自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)は、自衛隊の行動及び権限を個別に規定していることから、いわゆる「ポジティブリスト」であると認識している。