答弁本文情報
令和五年二月十七日受領答弁第二号
内閣衆質二一一第二号
令和五年二月十七日
内閣総理大臣 岸田文雄
衆議院議長 細田博之 殿
衆議院議員緒方林太郎君提出WTO農業協定等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員緒方林太郎君提出WTO農業協定等に関する質問に対する答弁書
一の1について
お尋ねの「輸入機会の提供とは、具体的にどのようなものか」については、世界貿易機関を設立するマラケシュ協定(平成六年条約第十五号。以下「マラケシュ協定」という。)附属書一Aの千九百九十四年の関税及び貿易に関する一般協定の譲許表第三十八表(日本国の譲許表。以下「譲許表」という。)において関税割当てを行うこととされている農産品について、他の加盟国に対し、譲許表に定められている数量を我が国が輸入するための機会を提供することと考えている。なお、我が国としては、平成六年五月二十七日の政府統一見解(以下「政府統一見解」という。)の考え方に沿って、国家貿易により輸入を行う品目については、客観的に輸入が困難な場合を除き、譲許表に定められている数量の輸入を行うべきものと考えている。
一の2のア及びウについて
御指摘の「一回の入札で輸入機会の提供義務を果たしたと解釈することは困難」との「野村農林水産大臣答弁のような解釈」はマラケシュ協定に規定されていないが、譲許表に、輸入するための機会を提供すべき一年当たりの数量が品目ごとに規定されており、入札の回数にかかわらず、当該数量を輸入するための機会を提供することが必要であると考えている。また、御指摘の「政府調達における入札の解釈」の意味するところが明らかではないため、「政府調達における入札の解釈とも照らし合わせた上で答弁」することは困難である。
一の2のイについて
お尋ねについて、「関心国の意向を考慮すること」は、「輸入機会の提供義務を果たしたか否かを判断するに際して」は必ずしも必要ではないと考えているが、マラケシュ協定附属書一Aの農業に関する協定第十七条の規定に基づき設置された農業に関する委員会においては、加盟国は、同協定第十八条1及び2に基づき、同協定上の約束の実施状況について通報し、同条6に基づき、問題を提起する機会を与えられるとされており、御指摘の「関心国」から、我が国について約束の実施状況に関する問題を提起される可能性があることを考慮すべきと考えているところである。また、御指摘の「政府調達における入札の解釈」の意味するところが明らかではないため、「政府調達における入札の解釈とも照らし合わせた上で答弁」することは困難である。
二の1のアについて
我が国においては、農産品の安定的な輸入を確保するとともに、国内需給に悪影響を与えないよう、当該農産品の内外価格差、品質の差異等を考慮した上で、一部の農産品は国家貿易により輸入を行っているところである。
二の1のイについて
国家貿易により輸入を行っている農産品については、二の1のアについてで述べたとおり、その安定的な輸入を確保するとともに、国内需給に悪影響を与えないよう、内外価格差以外の品質の差異等も考慮して輸入の時期、数量等を管理していることから、御指摘の「内外価格差が解消される」ことのみをもって、御指摘のように「国家貿易で全量輸入する必然性はない」とは考えていない。
二の2について
マラケシュ協定には、御指摘のように「乳製品のカレントアクセスに関し、国家貿易で全量輸入する」とは規定されていないが、国家貿易により一般の用途に供される指定乳製品等(以下「指定乳製品等」という。)の輸入を行う場合には、一の1についてで述べたとおり、政府統一見解の考え方に沿って、客観的に輸入が困難な場合を除き、譲許表に定められている数量の輸入を行うべきものと考えている。御指摘の野村農林水産大臣の答弁は、指定乳製品等については、譲許表に、輸入するための機会を提供すべき数量が定められており、これはガット・ウルグァイ・ラウンドにおける関係国との交渉の結果を受けたものであることを述べたものである。