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平成十八年二月七日提出
質問第五三号

沖縄県における泡瀬干潟埋立に関する質問主意書

提出者  赤嶺政賢




沖縄県における泡瀬干潟埋立に関する質問主意書


 政府は、中城湾港泡瀬地区公有水面において埋立て事業を進めており、今年度は仮設桟橋(航路)周辺の浚渫、その土砂の投入を進めている。
 この工事区域及びその周辺には「改定沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物(動物編)・レッドデータおきなわ」(以下「レッドデータおきなわ」という。)に記載されている絶滅危惧種の貝類が一九種も生息していることが、泡瀬干潟を守る連絡会と泡瀬干潟生物多様性研究会の調査で明らかにされている。
 また、日本自然保護協会は、泡瀬干潟・海域には新種の可能性のある種が生息していると、発表している。そのまま工事が進行すれば、絶滅危惧種や新種の可能性のある種が絶滅するおそれがある。
 浚渫が行われている場所やその周辺に生息するそれらの種の保全や自然環境保全のためには、工事を中断して慎重な調査を実施することが緊要である。
 また、同埋立事業の経緯、海草移植、鳥類調査、貝類調査、埋立後の土地利用計画等についても多くの疑義がある。
 従って質問する。

一 内閣府沖縄総合事務局(以下「事業者」という。)は、泡瀬海域に九〇種の「レッドデータおきなわ」記載種の絶滅危惧種の貝が生息していると沖縄県環境部局に報告しているが、今行われている浚渫工事区域及びその周辺での絶滅危惧種の貝の生息状況はどのようになっているのか。
二 泡瀬干潟を守る連絡会と泡瀬干潟生物多様性研究会は、レッドデータおきなわに記載されている絶滅危惧種の貝類が一九種、浚渫工事場所及びその近傍に生息していると報告している。その中には、事業者が確認していない種が七種(トウカイタママキ、マダライオウハマグリ、フジイロハマグリ、ウスカガミ、オハグロガイ、ゴイシザラ、ヒメツメタガイ沖縄型)が含まれている。
 それらの種について、調査もしないで浚渫工事を行っているが、それでもいいと考えているのか。
三 泡瀬干潟を守る連絡会と泡瀬干潟生物多様性研究会が情報提供した絶滅危惧種ジャングサマテガイについて、事業者は、最近になって、埋立予定地に四個体、埋立予定地外に五個体の生息を確認し沖縄県に報告している。
 その種の保全について、事業者は沖縄県と「調整中」としているが、その調整はどうなっているのか。
 また、事業者は「埋立予定地内は消失」としているが、それは埋立地内に種が生息していても「生埋め」にするということなのか。
 絶滅危惧種の保全対策は、全く必要がないということなのか、明確に答えられたい。
四 新種、貴重種や絶滅危惧種が発見された際の事業者の見解は、二〇〇三年三月の「中城湾港(泡瀬地区)公有水面埋立事業に係る環境影響評価書」(以下、「アセス書」という。)で、「工事中に天然記念物指定種やレッドデータブック、レッドリスト等の掲載種、その他貴重種・重要種に相当する種で、環境影響評価書に記載されている動植物種以外の種の存在が埋立てに関する工事の施工区域内若しくはその近傍で確認された場合には、関係機関へ報告するとともに十分調整を図り、その保全に必要な措置を適切に講じます。」となっている。
 事業者のジャングサマテガイや未確認の七種への対応は、アセス書で示した見解に反するのではないか。
五 日本自然保護協会は泡瀬干潟・海域に、新種の可能性のあるアワセカニダマシマメアゲマキ(仮称、貝)、ミル属の一種、ウミウチワ属の一種が生息していると発表している。
 それに対して、事業者は「分類研究の過程」であり、「レッドデータブック等で希少性が位置づけられておらず、発見位置及び分布状況があきらかになっていない」、「調査の可能性を含め検討中」として、埋立工事を続行しているのは言語道断である。まずは、慎重な調査こそ優先して行うべきではないのか。
 そして、種が確認されれば、種の保全策、必要な環境保全策を講ずることは、アセス書に照らしても、事業者の当然の義務であると考えるがどうか。
 また、二〇〇三年に同埋立事業地内で発見されたニライカナイゴウナ、オサガニヤドリガイの保全について、事業者はそれらの種を採取して、埋立予定地外に移動しているが、そのような対応は、種を保全するという上で適切な措置と言えるのか。
六 海草移植の成否判断の基準について、鈴木俊一元環境大臣は「移植海草が根付き、被度、面積を増加させていること」だという旨の答弁をしているが、その見解に変わりはないのか。その基準からすれば、泡瀬での海草移植(手植え移植)の評価はどのようになるのか。
七 中城湾港泡瀬地区環境保全・創造検討委員会は、事業者が泡瀬の海域で行った手植え移植について、「短期的に見れば、被度は減少、面積は良好な結果、藻場生態系は維持されている。長期的に見れば大型海草群落は遷移の途中ともみられ、モニタリングの継続が重要」であるとの評価をしている。
 政府としては、手植え移植についてどのような評価をしているのか、明確にしていただきたい。
 また、アセス書での移植後の監視基準については、「移植時と比較して海草の生育被度が高くなっており」とあるが、そのようになっていると考えているのか。
 沖縄総合事務局開発建設部港湾計画課港湾技術指導官は、「移植海草は順調に推移している」と述べている。政府もそのような評価をしているのか、見解を伺いたい。
八 事業者が、手植え移植は適応性が高いとの判断根拠としていた手植え移植実験地(St.U)で、移植海草が壊滅し、砂地になっている。
 このことを政府は把握しているのか、この事実をどのように認識しているのか。
 また、機械移植実験や減耗対策実験の結果について、政府はどのような評価をしているのか。
九 アセス書によれば、「(埋立によって)泡瀬地区における生育被度五〇%を超える藻場(密生・濃生域)が止むを得ず約二五ha消失することになる。そこで、埋立により消失する藻場(密生・濃生域)のうち主要な構成要素で埋立計画地周辺一帯に多く生息している大型海草種のリュウキュウアマモとボウバアマモを用いて、埋立計画地の東側の現況において砂質底で海藻草類の生育被度が五〇%未満の疎生域にできる限り移植し、藻場生態系の保全につとめることとする。」とある。
 しかるに事業者は、機械移植実験、減耗対策実験、手植え移植に使った約一haを除く約二四haの殆どは、海草藻場が被度五〇%以下で、移植の対象にはならないとして、そのまま埋立ようとしているが、これほど乱暴なやりかたはない。アセス書の趣旨にも明確に反するものと考えるが、政府の見解を伺いたい。
 また、アセス書では海草を移植して保全するとしているが、その当時、大型海草の移植技術は確立していたのか。
十 アセス書の貝類の調査報告によれば、泡瀬に生息している貝類は約二三種である。しかしその後、事業者は事後調査結果として、現在では約一六〇種の貝類が生息していることを報告している。
 また、「レッドデータおきなわ」に記載されている絶滅危惧種は、アセス書では僅か一種しか記載されていない。
 ところが、現在、事業者の調査では、約九〇種の絶滅危惧種が生息していると報告している。
 こうした事実は、アセス書の調査、それに基づく環境予測、評価には問題があったことを示していると思うが、政府の見解を伺いたい。
十一 鳥類の調査についても、アセス書の調査には多くの問題があると考える。それを要約すれば次の通りである。
 @アセス書での鳥類の種類数は六六種であるが、現時点での沖縄野鳥の会の調査では一七五種であり、それと比べて極めて少ない。A普通に飛来する渡り鳥も記載されていない。B同地域で繁殖している野鳥の調査がない。C調査計画、調査方法が不適切である。D調査回数が少ない。E優先種や希少種ごとの動向調査が不十分である。Fムナグロの動向調査が不十分である。
 これらのことから、アセス書での鳥類調査、それに基づく環境予測、評価には問題があったと思うがどうか。
十二 当初、中城湾港新港地区の埋立事業は港・泊地・航路の浚渫土砂を使用して行われる計画であった。しかし、その浚渫土砂の質が悪いため同地区の埋立に使用できないということになり、購入土砂で埋立が行われたのである。その浚渫土砂で泡瀬地区の海草藻場までつぶして、埋立に使われなければならないのか、納得のいく説明をされたい。
十三 一九九八年以前に沖縄県及び沖縄市が計画していた泡瀬地区埋立事業については、国は認可しなかった経緯があると聞いている。その際、認可しなかった理由は何か。
 政府は、認可しなかった同一規模、同一目的の埋立事業計画を二〇〇〇年には認可しているが、その理由と根拠を伺いたい。
十四 泡瀬埋立後の土地利用の全体計画はどのようになっているのか、その計画の実現性、財政上の見通しについて明らかにされたい。
 また、計画では、四棟の大型ホテル、コテージ、コンドミニアム、栽培漁業センター、海洋研究所等の立地、建設が予定されているが、その計画の詳細を伺いたい。
十五 内閣府沖縄総合事務局(那覇港湾・空港整備事務所・中城出張所)のホームページのリンク集に「泡瀬復興期成会」がリンクされ、同団体のホームページが閲覧できるようになっている。「泡瀬復興期成会」は、泡瀬干潟・海域の埋立事業を推進している市民団体である。
 行政は、本来、市民に対して公正、公平であるべきであり、一部の埋立推進団体の主張を紹介するというのは、どのような理由によるのか。
 このようなことは、行政の公平、公正の原則を逸脱する行為ではないのか、直ちに取りやめる措置を講ずべきと考えるがどうか。

 右質問する。



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