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平成十八年六月十五日提出
質問第三七一号

新石垣空港整備事業等に関する質問主意書

提出者  川内博史




新石垣空港整備事業等に関する質問主意書


 標記案件については、平成十七年十月三十一日に質問主意書を提出し、内閣から同年十一月十一日付けで答弁書を受領した。しかし、当時は飛行場の設置許可申請の審査中で、具体的な答弁は困難との回答であった。その後、国土交通大臣は新石垣空港の設置を許可した。よって、あらためて次の通り質問する。

一 新石垣空港環境影響評価書(以下「評価書」という)に対する国土交通大臣意見に基づき沖縄県は、補正を行ったが、補正前の評価書について、環境省は、「主要なデータが足りていない。環境影響の見通しがついたとはいえない」と厳しい評価を下していた。また補正後の評価書についても事業日程に合わせた不十分な補正との指摘が専門家や自然保護団体等から出ていた。
 国土交通大臣が補正後の評価書について、「環境の保全についての適正な配慮がなされるもの」(環境影響評価法第三十三条第一項)と判断するに至った経緯および理由を示されたい。
二 新石垣空港環境影響評価書(補正前)に対する国土交通大臣意見1では、A洞窟及びD洞窟の保全に万全を期することが求められた。沖縄県はこの大臣意見に基づきA、D洞窟の保全措置として「移動経路や洞口環境等の保全のために、A、D洞口周辺の土地を取得する」との対応を評価書(補正後)に記述したとしている。しかしこの保全策は、「ゴルフ場の残地を活用してA、D洞口周辺等に緑地を創設する」と書かれていた補正前評価書と実質的に何ら変わらず、大臣意見を受けての措置とは言えない、と思われるが、政府の見解を求める。
 また大臣意見1に基づくもう一つの対応として沖縄県は、ドレーン層の下流側への移動を評価書(補正後)に記述している。しかしこの対応は大臣意見4に対して応じた措置を、大臣意見1を踏まえての対応と繰り返して記述しているにすぎず、ことさら「万全を期して」と言えるほどのものではないと思われるが、この点について政府の見解を求める。
 大臣意見1は、大臣意見2以下のA、D洞窟の小型コウモリ類の保全に関する指摘に適切且つ十分に対応することはもちろん、さらに沖縄県独自の一層の努力を「保全に万全(・・・)を(・)期する(・・・)こと」と言う表現で求めているものであり、その点からして沖縄県はこの大臣意見1に全く応えていない。この、大臣意見1に対する沖縄県の対応は適切且つ十分であったのか、政府の見解を求める。そうであるとすればその理由を示されたい。
三 国土交通大臣意見2に対して沖縄県は、C洞窟については浸透池の地下にトンネルを通して敷地外に創設する洞口につなぐとしている。しかし、浸透池の地下を通る長いトンネルにつなぐことによってC洞窟の微気象がどのように変化するかなど、小型コウモリ類の生息できる環境が維持されるかどうかの検証は一切されていないことについて、政府の見解を求める。またC洞窟がただ物理的に空港敷地内の地下に空洞として残ることと、小型コウモリ類が継続して利用できるように保全することは全く違うことである。B洞窟及びE洞窟についても同様のことが言える。これらのことについて国土交通大臣はどのように判断したのか、答弁を求める。
 また、B洞窟、C洞窟及びE洞窟が、供用後、航空機騒音・振動の影響も含めてコウモリ類に利用される可能性はどれくらい期待できるものと考えているのか、政府の見解を求める。
 さらにC洞窟については浸透池の地下にトンネルを通すことによって、浸透池の浸透能やろ過機能、そして流路等にどのような影響を与えるか、なども一切検討されていない。これについても国土交通大臣はどのように判断したのか、答弁を求める。
四 国土交通大臣意見3では事業実施区域及びその周辺洞窟の小型コウモリ類の追加調査が求められた。これに対して沖縄県は、昨年五・六月に二回の調査を行なっただけで「水没するため利用は困難」などとして、「集団で利用する洞窟ではない」との結論を出した。しかし、コウモリ研究者の意見書(稲嶺惠一沖縄県知事宛「新石垣空港建設に関わる小型コウモリ類保護についての意見書」平成十七年五月三十日付)や環境省が外部に委託してコウモリ類の保全のありかたを取りまとめた報告書(「環境影響評価に関する事後調査報告等収集・整理・解析事業報告書」、平成十五年三月)、さらに国土交通省の外郭団体である国土技術政策総合研究所等が編集した「コウモリ類調査の手引2・3」(平成十七年三月)のいずれにおいても、コウモリ類は季節によって利用する洞窟を変えるため一年以上の調査が必要と指摘されており、特に小型コウモリ類の生存にとって重要な冬季の調査をしないで結論を出したことは大きな誤りと思われるが、この点についての政府の見解を求める。
 また、この結論の根拠にされている洞窟の水没についても研究者は、自然洞窟は人間には分からない抜け道がある可能性があり、又一年中水没しているわけではないのでコウモリ類が利用していないとは言い切れないと指摘している。この点から言ってもせめて一年間の調査をしなければ利用の実態は把握できない。沖縄県の出産・保育期だけの短期間(五、六月)のコウモリ類追加調査とそれに基づく評価(結論)を適切なものとした根拠は何か。政府の見解を問う。
五 国土交通大臣意見5、6に対する沖縄県の対応は、補正前の評価書と実質的には何ら変わっていない。特にA、D洞窟の小型コウモリ類への工事中の騒音・振動に対する環境保全措置(出産・保育時期などに限る四〇〜一〇〇m半径内の一定の騒音・振動を発生させる建設機械の稼動の規制)は、建設機械の稼動実態(機械の台数、稼動日数)とかけ離れた条件のもとで行なわれた調査実験(大型ブレーカー、振動ローラー各一台だけの使用で一日だけの調査実験。実際は数百台の建設機械が同時に稼動する)に基づき策定されたものである。このような杜撰なデータに基づく環境保全措置で小型コウモリ類への影響を回避・低減できると言えるのか。政府の見解とその理由・根拠を明らかにされたい。
 さらに、A、D洞窟を利用する小型コウモリ類への工事中の騒音・振動の影響が回避・低減出来るかどうかは、「A、D洞窟が保全されるからB、C、E洞窟がたとえ利用出来なくなったとしても、コウモリ類への影響は小さい」とする当該環境影響評価の結論を左右する極めて重要な事柄である。それだけに事後調査で対応するのではなく、稼動実態により近い条件のもとでさらに調査実験をしたうえ、環境保全措置を検討するべきではなかったか。このようなことを実施することこそ大臣意見1の「保全に万全を期すること」となるのではないか。これらの点について政府の見解を示されたい。
六 国土交通大臣意見8の、新たな洞窟が確認された場合の小型コウモリ類の利用についての調査は、四で指摘したように少なくとも一年以上は必要と考えるが、あらためて、政府の見解を示されたい。
七 国土交通大臣意見9の人工洞窟について、これまでの事例では、コウモリ類が利用している導水トンネルや避難壕は設置後少なくとも二十数年以上の時間が経過している人工洞窟である。少々早い段階で人工洞窟を設置しても環境保全措置としては機能しないのではないか。
 本年二月、予定地洞窟群のコウモリ類学術調査に参加した国際自然保護連合コウモリ専門部会の前議長トニー・ハトソン氏も記者会見で、「ヨーロッパでも多くの人工洞がつくられているがコウモリに利用されているのはごくわずか」と述べ、人工洞に否定的な見解を示している。環境保全措置としての人工洞の有効性について、政府の見解を示されたい。
八 国土交通大臣意見11に対する沖縄県の対応は、極めて杜撰と言わざるを得ない。時間がかかるため新たな調査をすることはなく、一地下水流域の調査結果を地層が異なるなどの条件が変わるにもかかわらず、他の三流域の地表流出量および地下水流出量の算出にそのまま利用している。これでは適正な流出量を把握できたとは言えない。また大臣意見で求められた海域に浸出する経路については、主な経路さえ示していない。この点について、政府の見解を求める。
 また、沖縄県のこのような対応を全く問題とせずに設置許可を出した理由を説明されたい。また大臣意見を無視しあるいはお座なりな対応しかしないままの補正を認めることは、環境アセスメント制度を形骸化させるものと考えるが、政府の見解を求める。
九 沖縄県から洞窟内の測量調査を委託された日本洞窟学会の副会長は昨年秋の地元紙の記事において、予定地内の洞窟に珍しい鍾乳石や沖縄最大の石柱があると述べている。しかし、沖縄県はこれらの洞窟内生成物に関する調査をほとんど行なっていない。このことをどう考えるのか。さらに、政府はこれらの貴重な文化財の調査と保護について、必要な施策を県に求めるべきではなかったか。これらの点について政府の見解を求める。
十 沖縄県は当初、電気探査による空洞調査で滑走路下を横断し西(内陸)方向に伸びているとされていた砂層の洞窟(E洞窟)は、埋めなくても安全性に問題はないとの結論を出していた。しかし、その後の実測調査で、そのE洞窟が実際には滑走路の地下を滑走路に沿って概ね南方向へ走行していることが判明、滑走路下の空洞が当初推測されていた面積の数倍にも達する可能性が出てきている。またあらたに別の洞窟(A1洞窟)も滑走路下を横断していることが分かった。これらの点について、政府の見解を求める。
 しかし沖縄県は、予定地全体の正確な空洞調査の再実施や滑走路の安全性についての再確認を行なわないまま空港設置許可申請書を国土交通大臣に提出した。国土交通大臣は空港の安全性を確保するために、沖縄県に対して再調査等を求めるべきではなかったか。政府の見解を求める。
十一 航空法(昭和二十七年七月十五日法律第二百三十一号。以下「法」という。)第三十九条第一項第五号には「飛行場にあつては、申請者が、その敷地について所有権その他の使用の権原を有するか、又はこれを確実に取得することができると認められること」と定められ、空港設置許可の要件の一つになっている。しかし、予定地内中央部には空港建設に反対する、地元住民を含め六百五十人以上の地主が共有する土地があり、その約半数の地主が当該土地について「将来にわたって空港用地としては提供しない」との不提供通知を昨年八月から十二月までに国土交通大臣に内容証明付郵便で送付している。
 一方、沖縄県知事は昨年十一月十五日付けで国土交通省航空局長宛に「県の責任において当該土地を取得する」との確約書を提出、それを踏まえ国土交通大臣は新石垣空港の設置許可を出した。以下、確約書等について質問する。
 @ 沖縄県知事の確約書は、国土交通省の求めに応じ又は助言・示唆によって提出されたものか、あるいは沖縄県知事の独自の判断で出されたものか、答弁を求める。またその内容について、国土交通省が何らかのアドバイス等をしたのか答弁を求める。
 A 沖縄県知事の確約書には「県の責任において当該土地を取得する」との文言がある。沖縄県知事には用地を強制収用で取得する権限がないことから、この文言は「用地は任意買収によって取得し、強制収用はしない」との意味と受け取れる。政府の見解を示されたい。
 B 国土交通大臣は新石垣空港の設置許可にあたって、沖縄県知事の確約書を担保にして法第三十九条第一項第五号の規定が満たされたと判断したのか。あるいは土地収用法(強制収用)による取得を前提にして設置許可を行ったのか。答弁を求める。
 C 過去に確約書を担保にして空港設置許可処分をした事例はあるか。あればすべて示されたい。
 D 法第三十九条第一項第五号の規定は、航空法施行規則で空港設置許可申請書に所有者等の同意書の添付が求められていることからして、申請までに証明される必要があることは言うまでもない。
  運輸省当時の担当課長は、「許可申請時に同意率が一〇〇%に達していなくてもいいのは、地権者の所在が不明の場合と、地権者が死亡し事実上は相続人が相続しているが登記が未了の場合の二つに限られる」と説明していたと聞くが、この内規と言うべきものは今はなくなってしまったのか。あるいは変更されたのか。説明されたい。
十二 石垣市は、新石垣空港建設後の現空港の跡地について、公園などの建設を検討しているが、その用地の過半は国有地であるとされている。現石垣空港の敷地に占める国有地の割合および面積はどれくらいか、ほかの主要な所有者とその割合、面積を含めて明らかにした上で、石垣市から現空港内の国有地について譲渡等を求められれば応ずる用意はあるのか。すでに譲渡の申し入れはあるのか。また国としての跡地利用構想等はあるのか、これらの点について答弁を求める。
十三 八重山、白保海域を含む石垣島東海岸を西表国立公園に編入することについて、地元との調整の状況、今後のスケジュールも含めて、政府の方針を明らかにされたい。
十四 沖縄におけるジュゴンの保護対策について、生息状況等の調査の状況、地元関係者の理解を得るための対話活動の状況について明らかにした上で、ジュゴンを国内希少野生動植物に指定する方針について、政府の見解を求める。
十五 ジュゴンの保護対策のための予算措置について、平成十八年度の沖縄振興調査費等において、十分確保されているのか、答弁を求める。

 右質問する。



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