答弁本文情報
平成十八年六月三十日受領答弁第三七一号
内閣衆質一六四第三七一号
平成十八年六月三十日
衆議院議長 河野洋平 殿
衆議院議員川内博史君提出新石垣空港整備事業等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員川内博史君提出新石垣空港整備事業等に関する質問に対する答弁書
一について
新石垣空港整備事業(以下「本事業」という。)の環境影響評価については、沖縄県において、平成十七年五月の「新石垣空港整備事業に係る環境影響評価書」(以下「評価書」という。)についての国土交通大臣からの意見(以下「国土交通大臣意見」という。)を踏まえた評価書の補正が行われたことから、国土交通大臣において、新石垣空港(以下「本空港」という。)の設置許可の申請に係る審査に際し、本事業につき、環境の保全についての適正な配慮がなされるものと判断している。
沖縄県においては、御指摘のA洞窟及びD洞窟の小型コウモリ類の生息環境の保全のため、洞口周辺の用地の取得及び空港排水施設であるドレーン層の設置位置の移動等の対策を講じることを補正後の評価書に追記していることから、国土交通大臣意見を踏まえた評価書の補正が行われているものと考えている。
沖縄県においては、御指摘のB洞窟、C洞窟及びE洞窟の小型コウモリ類の生息環境の保全のため、沖縄県が設置した専門家からなる検討委員会(以下「検討委員会」という。)における検討結果を踏まえた保全対策を行うことを補正後の評価書に追記していることから、国土交通大臣意見を踏まえた評価書の補正が行われているものと考えている。
また、本空港の供用後、航空機の騒音及び振動の下で、B洞窟、C洞窟及びE洞窟が小型コウモリ類に利用される可能性がどれくらいであるかについては明らかではないが、沖縄県においては、これらの洞窟について、小型コウモリ類による利用が期待できると考えていることから、保全対策の実施に向け、更に専門家の指導及び助言を得ることを、補正後の評価書に追記していると承知している。
御指摘の浸透池の地下のトンネルについては、浸透しやすい地層の上部に表流水を集め、それを地下浸透するため空港西側に設置が予定されている浸透池の下の地中部分を横断して設けられるものであると承知しているが、浸透池の浸透量を左右する浸透層の表面積に与える影響はわずかであると考えられること等から、当該トンネルが浸透池の機能に与える影響については、軽微であると考えられ、新たに検討することは特段必要ないと考えている。
小型コウモリ類の追加調査については、検討委員会における、過去の調査結果、対象となる洞窟の状況等の検討結果を踏まえ、沖縄県において実施されたと承知している。また、当該追加調査等の結果を踏まえ、検討委員会において検討された小型コウモリ類の保全対策が補正後の評価書に追記されていることから、国土交通大臣意見を踏まえた評価書の補正が行われているものと考えている。
沖縄県においては、検討委員会における検討結果を踏まえ、小型コウモリ類の出産及び哺育の時期並びに休眠時期において、A洞窟、A洞窟の最奥部の直上及びD洞窟から半径四十メートル以内での振動ローラによる振動と同等の振動を出す作業等を避けるとともに、事後調査を実施し、これらの作業が環境に与える影響の程度が著しいことが明らかになった場合には、これらの洞窟付近での作業をいったん休止し、専門家の指導及び助言を得た上で適切な措置を講じることを評価書に追記していることから、国土交通大臣意見を踏まえた評価書の補正が行われているものと考えている。
本事業の事業実施区域及びその周辺で新たな洞窟が確認された場合の調査については、その洞窟の規模、状況等に応じて、沖縄県において適切に実施することが適当であると考えている。
人工洞については、沖縄県によると、本事業の事業実施区域周辺の洞窟群に生息する小型コウモリ類の緊急避難場所等となる洞窟の選択肢を増やすために沖縄県において設置するとのことであるが、小型コウモリ類は人工洞の設置直後から利用するとは限らないため、できる限り早い段階で設置されることが適当であると考えている。
我が国においては、導水トンネル、避難壕等の人工的な洞窟状の工作物を小型コウモリ類が利用している事例があると承知している。
本事業の事業実施区域及びその周辺における水の流れについては、沖縄県において、水収支の推定後、各地下水の流域ごとの地質の状況を踏まえた考察を加えること等により、概況を把握していることから、国土交通大臣意見を踏まえた評価書の補正が行われているものと考えている。
沖縄県においては、平成十六年七月から同年十一月までに本事業の事業実施区域及びその周辺の八つの洞窟について洞窟内の鍾乳石等の二次生成物についての調査を実施し、各種の文献、文化財指定状況等を参考に、特異な地形や地質であるかどうかについて評価を行っていると承知している。
沖縄県においては、本空港の地盤の安定性について、平成十六年に本事業の事業実施区域及びその周辺における洞窟の測量調査を実施後、本空港の滑走路下の洞窟の形状や地盤の安定性に関する解析を再度行うこと等により、基礎的な検証をしていると承知しているが、今後、用地造成等の実施設計において詳細な検証を行い、必要に応じ適切な対策が講じられることにより、本空港の安全性が確保されると考えている。
平成十七年十一月十五日、沖縄県知事から国土交通省航空局長に対し御指摘の確約書が提出されているが、これは、沖縄県知事の独自の判断により提出されたものであると承知している。また、沖縄県からの求めを受けて、国土交通省から過去に提出を受けた確約書の事例を説明したことがある。
沖縄県知事の確約書において、「県の責任において当該土地を取得する」との文言があるが、国土交通省としては、「用地は任意買収によって取得し、強制収用はしない」との趣旨を明確に示すものとは考えていない。
本空港の設置許可の申請に係る航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)第三十九条第一項第五号の規定についての審査に当たっては、本空港建設用地の九十九・六パーセントについて、沖縄県が土地所有者の同意を得ていること、また、残る〇・四パーセントについても、「今後ともねばり強く説得にあたり、事業への理解と協力を求めていくこと等により、県の責任において当該土地を取得する」等の沖縄県知事からの確約書を受けていること等を総合的に勘案し、同号の規定に適合していると判断したものである。国土交通大臣としては、御指摘の「土地収用法(強制収用)による取得を前提」として、当該設置許可について判断したものではない。
現時点で国土交通省において把握している限りでは、昭和六十二年三月十八日に山形県知事から、同年七月十七日及び同年十一月二十日に島根県知事から、平成四年九月二十四日に鹿児島県知事並びに平成七年十二月十九日及び平成八年七月二十二日に静岡県知事から、それぞれ確約書の提出を受けている。
国土交通省においては、御指摘の「運輸省当時の担当課長」による説明については、その説明者、説明の時期及び内容等を具体的に承知していないため、御指摘の「内規と言うべきもの」の存在及び変更の有無については、お答えすることは困難である。
現石垣空港の敷地に占める国有地の割合及び面積は、約六割、約三十ヘクタールであるが、当該敷地の他の主要な所有者等については、同空港の管理者が沖縄県であることから、お答えすることは差し控えたい。また、石垣市から国有地の譲渡等の申入れはないが、当該申入れがあった場合の諾否については、その内容を見て検討してまいりたい。いずれにしても、現石垣空港の跡地の利用については、今後、管理者である沖縄県等の関係者において検討されるものと考えている。
白保海域を含む石垣島東海岸の西表国立公園への編入については、環境省において、現在、地元の石垣市を始めとする関係者と調整を進めているところである。あわせて、公園区域及び公園計画の具体案を作成しているところであり、今後は、自然公園法(昭和三十二年法律第百六十一号)に基づく関係行政機関との協議並びに沖縄県及び中央環境審議会の意見聴取を行っていくこととなる。これらの手続を経て可能な限り早期に編入できるよう努めてまいりたい。
ジュゴンの生息状況等の調査については、環境省において、平成十三年度から「ジュゴンと藻場の広域的調査」を実施している。また、ジュゴンの保護の重要性等について、地元関係者の理解を得るため、平成十三年度から、漁業関係者に対しジュゴンが羅網した際の救助方法の研修等を実施するとともに、平成十六年度から、地元関係者に対しジュゴンの保護の必要性等についての普及啓発を実施している。
ジュゴンを絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(平成四年法律第七十五号)第四条第三項の国内希少野生動植物種に指定することについては、右の調査の結果等を踏まえ、地元関係者の理解を得つつ検討していくこととしている。
平成十八年度におけるジュゴンの保護対策のための予算措置については、環境省において、ジュゴンの保護の必要性等について地元関係者に対し普及啓発を行うための予算が計上されており、現段階においてジュゴンの保護のために必要とされている予算は確保されていると考えている。
更なるジュゴンの保護対策のための予算措置が必要な場合においては、沖縄特別振興対策調整費によるものを含めた予算措置の検討をしてまいりたい。