質問本文情報
平成十九年十月三日提出質問第七四号
平成二十年度予算の四十七兆三〇〇〇億円という上限目標に関する再質問主意書
提出者 滝 実
平成二十年度予算の四十七兆三〇〇〇億円という上限目標に関する再質問主意書
平成二十年度予算の四十七兆三〇〇〇億円という上限目標に関する質問に対する平成十九年九月二十五日の答弁書(以下「答弁書」という)には、極めて深刻な論理矛盾がある。そこで、以下の点について再度質問する。
二 もしも年金シミュレーションが信頼に値するのであれば、その基礎となっている経済予測シミュレーションも誤差は小さく信頼に値するに違いない。そうすると答弁書の「五について」に書いてあることが正しくないということになるのではないか。
三 答弁書の「四について」で「景気を支えるために政府が需要を積み増す政策はとらない」こととしている。つまり景気対策のための財政出動は行わないことを政府の方針として示したものである。この方針が日本政府の一貫した方針ではないことは明らかである。添付資料の図一を見ていただきたい。橋本内閣の前期、森内閣、小泉内閣、安倍内閣において財政出動を行わない政策を行ったために、一人当たりの名目GDPの順位が急速に落ちて、日本が著しく貧乏になってしまったが、橋本内閣の後期、小渕内閣のように景気対策のための財政出動を行ったときは、その順位は大きく挽回して日本は豊かになっている。政府はなぜ、日本を豊かにするこのような政策を否定するのか。
四 最近の自由民主党都道府県連に対する日刊紙の調査によれば、財政出動を求める意見は三十二団体、財政出動を否定する意見は僅か八団体であり、自由民主党都道府県連は圧倒的に財政出動を求めている。このことからも、国民の意見を無視した国の政策が支持されず、前回の参議院選挙で与党が大敗したことが理解できる。政府は今後も国民の声を無視し続けるつもりか。
五 国の借金が増えたのは、デフレからのすみやかな脱却を可能とする十分な経済対策を行わなかったためである。デフレが続く限り、税収も伸びないし、そうかと言って赤字を抑えようとしても歳出の大幅な削減はできず、結局財政赤字が続き、国の借金が増え続ける。しかも名目GDPが増えないために債務のGDP比は増え続ける。プライマリーバランスを黒字にしただけでは、国の債務のGDP比は減らないというノルウェーの例を、添付資料の図二、三に示す。この図より明らかなことは、単にプライマリーバランスを黒字化すれば債務のGDP比が下がるわけではないということだ。このことについてどう考えるか。
六 添付資料の図四、五にはチェコ共和国の例、添付資料の図六、七にはスロバキア共和国の例を示した。大幅なプライマリーバランスの赤字にも拘わらず、債務のGDP比は一本調子に上昇しているというわけではない。チェコ共和国の場合、債務のGDP比は三〇−四〇%に留まっており、日本より遙かに低い。スロバキア共和国の場合も同様で二〇〇一年に五十八.九%にまで上昇した後はプライマリーバランスが赤字であるにも拘わらず、債務のGDP比は減少を続けている。これらを見れば日本政府の借金が増え続ける原因は、プライマリーバランスの赤字だけではあり得ないことであり、デフレだから増えているのだという結論が正しいことが証明されるのであるが、このことについてどう考えるか。
七 昭和恐慌の際、財政出動により世界で最も早く日本がデフレから脱却に成功し、経済再建をしたことは、世界的にも高い評価を受けている。このときの経済データを添付資料の表一で示した。一九三一年にはGNPデフレーターは△十四.四%のデフレであったが、財政出動の結果景気は回復し一九三三年には実質GNP成長率は十.一%に達した。債務のGNP比はゆるやかにしか変化をしていないし、一九三三年にやっと七十二%になったにすぎず、現在の日本より遙かに低いレベルに留まっている。この頃の財政出動の規模はGNPの十%近くになり、現在で言えば数十兆円レベルの財政出動であるが、それでも債務のGDP比は現在の半分程度に抑えられているわけで、このことからも、現在の国の借金が増えた原因は景気対策を行ったからではなく、デフレの状態を長期に放置したのが原因であることが、確認できるが、このことについてどう考えるか。
八 このように、プライマリーバランスの黒字化が日本の国の借金問題の解決策になるという考えは、理論的にも経験的にも全く根拠の無い、いわば甘い幻想にすぎないことが結論される。このような甘い幻想にとらわれて、誤った経済政策を行い、その結果、国を貧乏にし、国民を不安に陥れている。こういった指摘についてどう考えるか。
右質問する。