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令和五年五月二十三日提出
質問第六四号

学級運営が難しくなった教室に防犯カメラを設置することに関する質問主意書

提出者  井坂信彦




学級運営が難しくなった教室に防犯カメラを設置することに関する質問主意書


 令和五年三月三十日、共同通信は、「東京都内の公立小が学級運営が難しい状況になった一部の教室に児童の言動を記録するカメラを設置していた」と報道した。関係者によると、着替えなどの時間を除く始業から終業までを録画し、データは児童に問題行動などがあった際に学校や教育委員会が確認するためと使途を限定しているが、場合によっては警察にも提供するという。また教育委員会は、児童の問題行動があり安全を確保するために実施したと説明しており、教室に入ることを嫌がる児童には別室での授業やオンラインでの授業を受けられるようにしているということである。
 これに対して生徒指導に詳しい専門家からは、「カメラでずっと撮られているとストレスが大きい。プライバシーを含めた個人の権利を考えれば、保護者の同意だけでは不十分で、子どもの意向が尊重されていないと不信感を招く」との懸念が示されている。
 問題行動を起こす児童のために、他の多くの児童が授業を受けられないという状況は改善しなければならない。また、一部の児童によって暴力やいじめなどが発生しているのであれば、目を離すことで発生リスクが高まることから、記録も必要と考えられる。カメラを設置することで事故を未然に防ぎ、問題行動の改善につながる可能性もある。
 しかし一方で、問題行動を起こす児童にも授業を受ける権利はあり、一定の個人を監視や排除するような運営は好ましいとは言えない。
 このような事案は全国で発生しており、多くの学校・教職員・保護者・児童生徒は苦労していると思われるが、今回の学校の対応は異例であるということから、以下、政府の見解を質問する。

一 教室内に、児童・生徒を観察するためのカメラを設置することについて、政府は法的な規制や運用ガイドラインなど、教室内にカメラを設置する際の何らかのルール設定を行っているのか伺う。
二 第二〇八回国会の質問主意書第一一五号の答弁書において、文部科学省は「令和二年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果及びこれを踏まえた対応の充実について(通知)」を発出し、「暴力行為等の問題行動を繰り返す児童生徒に対しては、出席停止制度の措置をとることをためらわずに検討し、犯罪行為の可能性がある場合には、学校だけで抱え込むことなく、直ちに警察に通報するなど、毅然とした対応をとること」等を示し、都道府県教育委員会等に対して周知すると述べている。今回の公立小学校が教室にカメラを設置したという対応は、出席停止制度の措置よりは柔軟な対応とも考えられるが、政府としては適切と考えているか不適切と考えているか伺う。
三 児童・生徒によるいじめや暴力、破壊行為等に対し、これまでは「言った・言わない」「やった・やっていない」といった本人や当事者の証言を中心に教員は判断をしていたと思われるが、これで十分に公平で適切なジャッジができていたのか。多くの場合は教員による判断と指導で解決できるものだとは考えられるが、問題の重要度に応じて、他の教員や管理職による判断、第三者による聞き取りと判断、録音・録画等による証拠の積み重ねなど、当事者が納得できる仕組みを作ることの必要性について、政府の見解を求める。
四 一部の児童・生徒によって学級運営が難しい状況になった場合、その他の多くの児童・生徒は、学習する機会や満足な学校生活を送る機会を奪われることになる。こうした被害を補償するために、どのような対応を学校に指示しているのか。加害児童を別教室で個別指導をするなど、多くの子どもを守るためにどのような取り組みを行っていくのか、政府の見解を求める。
五 学級運営を難しい状況にしている当事者である児童・生徒においても、教育を受ける権利は保障しなければならない。しかし、当事者である児童・生徒を更生させる取り組みと教育の連携が取れていない。文部科学省による教育部門での専門家(スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー等)の派遣などとともに、児童相談所・警察・民生児童委員・保護司など各部門が協力し、早い段階で更生に向けた取り組みを行う体制を築くべきと考えるが、更生への取り組みについて政府の見解を求める。
六 学級運営を難しい状況にしている当事者である児童・生徒だけが問題ではなく、教員や学校側の対応の不備で事態が悪化している場合も考えられる。設置者である自治体や教育委員会は、当事者から見れば学校寄りで、必ずしも中立とは言い切れない。当事者と学校が信頼関係を築けずに対立するような状況になった場合、客観的・中立的な立場から、学校が果たすべき役割を指導するとともに、当事者に寄り添いつつ改善を進めるような専門機関が必要と考えるが、政府の見解を求める。
七 教育の一義的な責任は保護者にある。しかし、迷惑行為をする児童・生徒の保護者は、学校や制度、相手方などに責任を転嫁することも多く、威圧的な保護者もいる。また子どもの行為に無関心な保護者もいる。こうした保護者の責任について、政府はどのように考えているか。当事者である児童・生徒への指導だけでなく、保護者への指導や罰則などを法的に担保して厳格に対応することができるか、政府の見解を求める。
八 対教師暴力を受けた教員に対するフォローや、対暴力の研修制度について、第二〇八回国会の質問主意書第一一五号の答弁書において政府は、「各学校の実情等に応じて、各学校及びその設置者の判断において行われるべきものである」と述べている。暴力行為等の問題行動を繰り返す児童生徒に対しては措置をためらわずに検討するとしながら、教員が被害を受けた時は学校の判断でフォローせよというのは、統一性に欠けていると考える。教員の安全と精神衛生を鑑み、対教師暴力に対しては学校が責任をもって加害者に毅然とした対応をとると示すべきと考えるが、政府の見解を求める。

 右質問する。

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