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令和七年十月二十九日提出
質問第二九号

身体障害者手帳の認定基準の透明性及び支援の在り方に関する質問主意書

提出者  八幡 愛




身体障害者手帳の認定基準の透明性及び支援の在り方に関する質問主意書


 もう一方の眼の視力が一定以上ある場合の片眼失明や親指を除く指一本の欠損などは、日常生活や就労において明確な不利益をもたらすにもかかわらず、現行の身体障害者手帳制度では原則として認定対象外とされている。こうした線引きは、身体的機能の喪失を形式的・数量的に評価する制度設計に起因しており、生活実態との乖離が指摘されている。
 特に片眼失明者の場合、視野が百五十度に満たなければ自動車免許の取得が制限され、結果として職業選択の幅が狭められる。また、失明した眼球が萎縮して白濁する「眼球癆(がんきゅうろう)」の状態では、外見的特徴による差別や偏見にさらされることも少なくない。これを覆うために装着する「被せ義眼」は、現行の医療保険制度では「美容目的」とされる場合が多く、この場合は、二年ごとに十数万から数十万円に及ぶ自己負担が求められると承知している。
 しかし、義眼は外観を整えるだけでなく、長期間未装着のままでいると萎縮した眼球を支える筋肉や結膜嚢が縮み、成長期の子どもでは顔面骨格の発達に影響を及ぼすなど、明らかな治療上の必要性を有していると考える。それにもかかわらず医療保険の対象外とされている現状は、制度上の不均衡を示していると考える。
 さらに、義眼製作においては「本来の眼を忠実に再現する」以外の選択肢が限られており、当事者が自己表現の自由を持てないことも課題であると承知している。
 一方で、精神障害者保健福祉手帳の障害等級や労災保険制度の障害等級など、他の制度では生活上の困難を柔軟に評価する仕組みが存在しており、制度間の整合性や公平性に疑義が生じているとの声があると承知している。身体障害の認定が機能的制約や社会的障壁の観点よりも外形的基準に偏重している現行の運用は、国際的な潮流からも乖離していると考える。
 国連障害者権利条約(CRPD)は、障害を「個人の機能障害」と「社会的障壁」との相互作用として捉え、締約国に対して、すべての障害者に平等な社会参加の機会を保障することを求めている。しかし日本の現行制度は、身体の欠損や視力数値といった静的な尺度を重視するあまり、社会参加における制約や偏見といった動的側面を十分に反映できていない。この乖離は、国際的にも制度的にも再検討が求められる課題であると考える。
 以上を踏まえ、政府に質問する。

一 身体障害者手帳の認定基準における「片眼失明」の取扱いについて
 1 身体障害者手帳の認定基準において、片眼失明のみでは対象外とされる理由を明らかにされたい。
 2 片眼失明者が運転免許取得や就労の場面で直面する制約について、政府としてどのように把握しているか。
 3 眼球癆のある片目失明者の義眼装用に治療上の必要性を認めず、「美容目的」として扱い、医療保険の対象外とする現行制度・運用について、政府の見解を示されたい。
 4 国連障害者権利条約の趣旨を踏まえ、現行の身体障害者手帳の認定基準を生活実態に即した形で見直す考えはあるか。
二 指欠損に関する身体障害者手帳の認定基準の明確性について
 1 親指を除き指一本の欠損が原則として認定対象外とされる理由を示されたい。
 2 親指の欠損と薬指や小指の欠損とで取扱いが異なることの根拠を説明されたい。
 3 親指以外の指一本の欠損であっても職業選択や日常生活に大きな制約が生じる事例があるが、こうしたケースを救済する制度的余地は存在するか。
 4 国連障害者権利条約の理念に照らし、手指障害の評価を「形態」ではなく「機能的制約」や「社会的障壁」、機能的制約と社会的障壁との相互作用により効果的な社会参加が妨げられているか否かなどの観点から再検討する考えはあるか。
三 制度間の整合性について
 1 身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳、療育手帳、労災保険、障害年金の間で、認定基準に一貫性が欠けているとの指摘がある。政府はこの認識を共有しているか。
 2 障害者福祉制度全体の信頼性を確保するため、制度横断的に認定基準の調整・透明化を図る考えはあるか。
四 地方自治体独自制度との関係について
 1 一部自治体では、障害者手帳の交付を受けていなくても「準ずる障害」がある者に対して独自の助成制度(交通費補助、タクシーチケット等)が存在するが、国はその実態をどの程度把握しているか。
 2 こうした地域間格差を是正し、より公平にするため、準ずる障害者への支援に関し、国として統一的な指針を示す考えはあるか。

 右質問する。

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