答弁本文情報
令和七年十一月十一日受領答弁第二九号
内閣衆質二一九第二九号
令和七年十一月十一日
内閣総理大臣 高市早苗
衆議院議長 額賀福志郎 殿
衆議院議員八幡愛君提出身体障害者手帳の認定基準の透明性及び支援の在り方に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員八幡愛君提出身体障害者手帳の認定基準の透明性及び支援の在り方に関する質問に対する答弁書
一の1について
視覚障害に係る御指摘の「身体障害者手帳の認定基準」については、身体障害者福祉法(昭和二十四年法律第二百八十三号)別表において、「一眼の視力が〇・〇二以下、他眼の視力が〇・六以下のもの」等の視覚障害が「永続するもの」とされているところ、その考え方は、令和六年三月二十九日の衆議院厚生労働委員会において、政府参考人が「身体障害者福祉法に基づく身体障害の認定基準につきましては、医学的な観点からの身体機能の状態を基本としつつ、これに加えて、日常生活の程度によって定められている」と答弁しているところである。その上で、お尋ねの「片眼失明のみでは対象外とされる理由」は、「片眼失明」の場合であっても、もう一方の眼の視力が〇・七以上の場合には、「日常生活」の制限の「程度」が相対的に低いと考えられるためである。
一の2について
お尋ねについては、例えば、令和六年度障害者総合福祉推進事業「片目失明者に対する合理的配慮に関する調査研究」で行われたアンケート調査において、「視力の良いほうの目の視力が〇・七以上、かつ他方の目の視力が〇・〇二以下」の「十八歳以上の方」が回答した「学校や職場などでの見え方の影響」について、当該調査に回答した百三十三名のうち、「特に支障や問題を経験することはない」、「普段は支障を感じないが、状況によって支障や問題を経験することがある」、「しばしば、あるいは常時、支障や問題を経験している」若しくは「その他」と回答した者又は「無回答」の者は、それぞれ八名、六十名、五十三名、五名及び七名であり、また、「差し支えない範囲で、具体的な例をご記載ください」との調査に対する回答で、「自由記述においてよく聞かれた事例」として、「職場における支障(広い視野を求められる業務の遂行が困難、見えにくいほうの目で確認する必要のある作業が困難、3D映像機器が業務で必要になっても使えない、等)」、「資格取得の幅に制限がある(中途失明により車の運転が業務上できなくなった、大型運転免許が取れない、等)」等が示されているところである。
一の3について
お尋ねについて、治療用装具については、健康保険法(大正十一年法律第七十号)第八十七条等の規定及び「治療用装具に係る療養費の支給の留意事項等について」(令和五年三月十七日付け保医発〇三一七第一号厚生労働省保険局医療課長通知)に基づき、「保険医」が「疾病又は負傷の治療遂行上必要であると認め」た場合に、保険者は療養費の支給をすることができるとするものであるが、御指摘の「眼球癆のある片目失明者の義眼装用」については、一般的には、「疾病又は負傷の治療遂行上必要であると認め」、療養費を支給することは困難と考えている。
一の4について
お尋ねの「国連障害者権利条約の趣旨を踏まえ、現行の身体障害者手帳の認定基準を生活実態に即した形で見直す」の意味するところが必ずしも明らかではないが、いずれにせよ、「現行の身体障害者手帳の認定基準」の設定の考え方については、一の1についてで述べたとおり、「医学的な観点からの身体機能の状態を基本としつつ、これに加えて、日常生活の程度によって定められている」ものであり、一定程度、お尋ねの「国連障害者権利条約の趣旨」に沿うものと考えているが、お尋ねが、さらに、一の1で御指摘の「片眼失明のみ」でも障害認定するように「見直す考え」はあるかとのお尋ねであれば、一の1についてでお答えしたとおり、「日常生活」の制限の「程度」が相対的に低いと考えられるため、現時点でお尋ねの「見直す考え」はない。なお、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長が参集を求めて開催していた、視覚機能等に関する専門的知見を有する有識者により構成される「視覚障害の認定基準に関する検討会」が平成三十年一月に取りまとめた「視覚障害の認定基準に関する検討会報告書」において、「当事者団体等から、視力障害および視野障害による視覚障害認定では障害認定されないが、見づらさを抱えている当事者への配慮を検討してほしいことなどの意見があり、視覚障害認定基準の改善のための調査研究の中で、これらについても検討を行い、その結果を踏まえ、検討する」とされたことを踏まえ、厚生労働行政推進調査事業費補助金により、平成三十年度から令和二年度まで「視機能障害認定のあり方に関する研究」を、令和四年度から令和六年度まで「見えづらさを来す様々な疾患の障害認定・支援の方法等の確立に向けた研究」を実施し、現在、これらの研究を踏まえ、令和七年度から令和九年度までの予定で「見えづらさを来す様々な疾患の障害認定・支援の確立に向けた研究」を実施しており、引き続き当該研究を進め、その結果を踏まえ、必要な検討を行っていくこととしている。
二の1及び2について
御指摘の「指欠損」に係る御指摘の「身体障害者手帳の認定基準」については、身体障害者福祉法別表において、「一上肢のおや指を指骨間関節以上で欠くもの又はひとさし指を含めて一上肢の二指以上をそれぞれ第一指骨間関節以上で欠くもの」、「一上肢のおや指の機能の著しい障害又はひとさし指を含めて一上肢の三指以上の機能の著しい障害で、永続するもの」等とされているところ、その考え方は、一の1についてで述べたとおり、「医学的な観点からの身体機能の状態を基本としつつ、これに加えて、日常生活の程度によって定められている」ものである。その上で、お尋ねの「親指を除き指一本の欠損が原則として認定対象外とされる理由」及び「親指の欠損と薬指や小指の欠損とで取扱いが異なることの根拠」については、「親指を除く指一本の欠損」は「親指の欠損」に比べ、「日常生活」の制限の「程度」が相対的に低いと考えられるためであり、具体的な障害認定に当たっては、「身体障害認定基準」(平成十五年一月十日付け障発第〇一一〇〇〇一号厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知別紙)において、「手指の機能障害の判定」には「おや指、次いでひとさし指の機能は特に重要である」こと、「おや指の機能障害は摘む、握る等の機能を特に考慮して、その障害の重さを定めなければならない」こと等に注意が必要であるとしているところである。
二の3について
御指摘のような「事例」の態様は様々であると考えられることから、お尋ねに一概にお答えすることは困難であるが、例えば、「身体障害認定基準等の取扱いに関する疑義について」(平成十五年二月二十七日付け障企発第〇二二七〇〇一号厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課長通知)において、「「両上肢のひとさし指を欠くもの」については、「ひとさし指を含めて一上肢の二指を欠くもの」に準じて六級として認定することは可能である」と示しており、御指摘の「親指以外の指一本の欠損」の場合であっても、一律に障害認定されないものではない。
二の4について
お尋ねの「国連障害者権利条約の理念に照らし、手指障害の評価を「形態」ではなく「機能的制約」や「社会的障壁」、機能的制約と社会的障壁との相互作用により効果的な社会参加が妨げられているか否かなどの観点から再検討する」の意味するところが必ずしも明らかではないが、いずれにせよ、一の4で御指摘の「現行の身体障害者手帳の認定基準」の設定の考え方については、一の1についてで述べたとおり、「医学的な観点からの身体機能の状態を基本としつつ、これに加えて、日常生活の程度によって定められている」ものであり、一定程度、お尋ねの「国連障害者権利条約の理念」に沿うものと考えているが、お尋ねが、さらに、二の1で御指摘の「親指を除き指一本の欠損」でも障害認定するように「再検討する考え」はあるかとのお尋ねであれば、二の1及び2についてでお答えしたとおり、「日常生活」の制限の「程度」が相対的に低いと考えられるため、現時点でお尋ねの「再検討する考え」はない。
三について
御指摘の「身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳、療育手帳、労災保険、障害年金」は、それぞれその目的を異にし、それぞれの目的に応じて「認定基準」等を定めているものであり、御指摘のような「認識」はなく、また、御指摘の「制度横断的に認定基準の調整・透明化を図る」の意味するところが必ずしも明らかではないが、各制度における障害認定については、それぞれの趣旨を踏まえ、適切に運用されていると認識しており、御指摘のように「制度横断的に」見直すことは考えていない。
四の1について
お尋ねについては、網羅的には把握していないが、御指摘のように「一部自治体」において、「交通費補助、タクシーチケット」に係る「助成制度」があることは把握している。
四の2について
御指摘の「支援」については、地方自治体がそれぞれの地域の実情に応じて実施しているものと承知しており、御指摘のように「国として統一的な指針を示す考え」はない。

