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平成二十一年二月六日受領
答弁第六六号

  内閣衆質一七一第六六号
  平成二十一年二月六日
内閣総理大臣 麻生太郎

       衆議院議長 河野洋平 殿

衆議院議員平岡秀夫君提出海賊対策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員平岡秀夫君提出海賊対策に関する質問に対する答弁書



1の(1)の@について

 世界の各海域における海賊等の事案の過去十年間の発生状況は、国際商業会議所国際海事局の年次報告によると、次のとおりである。
 千九百九十九年については、東南アジア百六十一件、インド周辺四十九件、北米及び南米二十八件、アフリカ五十五件、その他海域八件である。二千年については、東南アジア二百四十一件、インド周辺九十四件、北米及び南米三十九件、アフリカ六十九件、その他海域二十六件である。二千一年については、東南アジア百五十三件、インド周辺五十四件、北米及び南米二十一件、アフリカ八十六件、その他海域二十一件である。二千二年については、東南アジア百五十三件、インド周辺五十二件、北米及び南米六十五件、アフリカ七十八件、その他海域二十二件である。二千三年については、東南アジア百七十件、インド周辺八十七件、北米及び南米七十二件、アフリカ九十三件、その他海域二十三件である。二千四年については、東南アジア百五十八件、インド周辺三十二件、北米及び南米四十六件、アフリカ七十三件、その他海域二十件である。二千五年については、東南アジア百二件、インド周辺三十六件、北米及び南米二十五件、アフリカ八十件、その他海域三十三件である。二千六年については、東南アジア八十三件、インド周辺五十三件、北米及び南米二十九件、アフリカ六十一件、その他海域十三件である。二千七年については、東南アジア七十件、インド周辺三十件、北米及び南米二十一件、アフリカ百二十件、その他海域二十二件である。二千八年については、東南アジア五十四件、インド周辺二十三件、北米及び南米十四件、アフリカ百八十九件、その他海域十三件である。

1の(1)のAについて

 お尋ねについては、調査・把握しておらず、お答えすることは困難である。

1の(1)のBについて

 世界の各海域における過去十年間の日本船籍の船舶の海賊等に対する事案について、発生年月、場所及び被害対象等の状況は、平成二十年末現在、次のとおりである。
 一 千九百九十九年一月 インドネシア 物品
 二 千九百九十九年四月 インドネシア 海賊が侵入したが、乗組員の発見により逃走したものであり、実質的な被害なし
 三 千九百九十九年九月 スリランカ 物品
 四 二千年三月 インドネシア 物品
 五 二千四年四月 マレーシア 現金、負傷者一名
 六 二千五年三月 マレーシア 物品及び現金、拉致被害者三名
 七 二千五年四月 インドネシア 物品
 八 二千七年四月 インドネシア 海賊が侵入したが、乗組員の発見により逃走したものであり、実質的な被害なし
 九 二千八年三月 インドネシア 物品
 十 二千八年四月 アデン湾 船舶に被弾

1の(2)の@について

 海洋法に関する国際連合条約(平成八年条約第六号)第百条において、すべての国は、最大限に可能な範囲で、海賊行為(同条約第百一条に規定する海賊行為をいう。以下同じ。)の抑止に協力することとされているが、お尋ねの「世界各海域における海賊行為に対してどのような対策がとられているか」について、政府としてその内容を網羅的に把握しておらず、お答えすることは困難である。

1の(2)のAについて

 アジア地域で海賊等の事案が発生した場合、アジアにおける海賊行為及び船舶に対する武装強盗との戦いに関する地域協力協定(以下「協定」という。)に基づいてシンガポールに設立された情報共有センター(以下「センター」という。)を通じ、関連情報が直ちに協定の締約国間で共有されるようになっており、このことは、協定の締約国が迅速かつ適切な海賊等への対策をとる上で極めて重要な役割を果たしていると考えている。また、センターの主催により、協定の締約国の法執行機関等の間で、取締能力の向上を図るため、種々のワークショップ等が開催されるなどしている。

1の(2)のBについて

 現在、日本、シンガポール、ラオス、タイ、フィリピン、ミャンマー、大韓民国、カンボジア、ベトナム、インド、スリランカ、中華人民共和国、ブルネイ及びバングラデシュの十四か国が、協定を締結している。インドネシア及びマレーシアが協定を締結していない理由については、日本政府としてお答えする立場にない。

1の(3)の@について

 我が国は、センターに対し、事務局長を含む職員二名の派遣や、財政的な支援を行っている。

1の(3)のA及びBについて

 海上保安庁は、海上保安庁法(昭和二十三年法律第二十八号)第二条第一項の規定に基づき、海上における犯罪の予防及び鎮圧並びに犯人の捜査及び逮捕、海難救助その他海上の安全の確保に関する事務等を行うことにより、海上の安全及び治安の確保を図ることを任務としており、協定に基づくものではないが、海賊対策のため巡視船を東南アジアに派遣し、派遣先各国との間で連携訓練、乗船研修、情報交換等を実施するとともに、海賊事案発生時においては、被害船の捜索・犯罪捜査等所要の措置をとることとしている。

1の(3)のCについて

 平成十八年、政府は、インドネシア政府に対し、政府開発援助として、同国国家警察本部海上警察局等による巡視船艇三隻の整備のための無償資金協力を実施した。当該巡視船艇は、乗務員を保護するための防弾措置を施した結果、輸出貿易管理令(昭和二十四年政令第三百七十八号)に規定される軍用船舶に該当し、武器輸出三原則等にいう武器等に当たるものであったが、前記の無償資金協力の実施に際して行われるその輸出については、我が国政府とインドネシア政府との間の国際約束で、当該巡視船艇が我が国の政府開発援助の対象であるテロ・海賊行為等の取締り・防止に限定して使用されること及び当該巡視船艇を我が国政府の事前同意なく第三者に移転しないことが担保されることを条件として、武器輸出三原則等によらないこととした。政府としては、武器の輸出管理について、国際紛争等を助長することを回避するという武器輸出三原則等の基本理念にかんがみ、慎重に対処するとの方針を堅持しており、テロ・海賊対策支援等に資する個別の案件については、当該基本理念に照らし、個別の案件ごとに検討の上、結論を得ることとしている。

1の(3)のDについて

 「海上犯罪取締り研修」は、東アジア諸国の海上法執行能力向上を目的として、平成十三年度から独立行政法人国際協力機構が実施しているものであるが、海上保安庁は、海上保安庁法第二条第一項の規定に基づき、研修計画の策定、講師の派遣等を通じて本研修に協力している。これまで、本研修に延べ十五か国から百十五人の研修生が参加している。

2の(1)について

 お尋ねについては、調査・把握しておらず、お答えすることは困難である。

2の(2)の@について

 ソマリア沖の海賊について、実態の詳細は把握していないが、例えば、母船と小型ボートを使用し、自動小銃やロケットランチャーを保有しているものがあることは、報道等により承知している。

2の(2)のAについて

 ソマリア沖で行われている海賊行為の具体的な内容を逐一把握しているわけではないが、例えば、船舶の無線を傍受してその動きをGPS等で把握し、標的となる船舶を決定し、武装した海賊数名が小型ボートで当該船舶に接近して乗り込み、身代金目当てで乗組員を人質とすることがあることは、報道等により承知している。

2の(2)のBについて

 御指摘の近隣国の範囲が定かではないが、例えば、イエメン及びジブチは、それぞれ沿岸警備隊と海軍により、周辺海域の哨戒等を実施していると承知している。

2の(3)の@について

 お尋ねの理由を特定することは困難であるが、ソマリア情勢の不安定化に伴い、ソマリア沖においては海賊行為による被害が増加していると認識している。

2の(3)のAについて

 政府承認制度の態様は一様でないこともあり、お尋ねについてお答えすることは困難である。我が国は、ソマリア暫定連邦「政府」(以下「TFG」という。)がソマリア全土に対する実効支配を確立していない状況を踏まえ、TFGに対する承認を見合わせている。

2の(3)のBについて

 我が国としては、ソマリアにおける和平の取組を支援する等、ソマリア情勢の安定のために協力していく考えである。

2の(4)の@について

 御指摘の「何らかの行動要請」の意味が必ずしも明らかでなく、お尋ねについてお答えすることは困難である。

2の(4)のAについて

 御指摘の近隣国の範囲が定かではないが、イエメン及びケニアから、各々の海上保安能力の向上等を目的とした支援要請がなされている。

2の(4)のBについて

 御指摘の日本財団及び海洋政策研究財団の要請以外に、平成二十年十一月十八日以前に、政府に対して、ソマリア沖の海賊対策として具体的に自衛隊の艦船の派遣要請が出された例については、承知していない。

3の(1)の@並びに4の(2)及び(3)について

 政府としては、海賊対策のための新たな法制を整備するまでの応急措置として、自衛隊が自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)第八十二条の規定による海上における警備行動によってソマリア沖の海賊に対処するための準備を開始したところであり、実際に当該警備行動を発令することとなった場合には、派遣する艦艇としては、護衛艦二隻を考えているが、その他のお尋ねの点については、現時点でお答えすることは困難である。

3の(1)のA及びB並びに(4)の@について

 海賊行為への対処のため自衛隊法第八十二条の規定により海上における警備行動を命ぜられた自衛隊の自衛官が、公海上において、海賊行為であって我が国の刑罰法令が適用される犯罪に当たる行為を行った者に対し、同法第九十三条第一項において準用する警察官職務執行法(昭和二十三年法律第百三十六号)第七条の範囲内で武器を使用することは、国際法上問題となることはない。また、このような武器の使用は、憲法第九条が禁ずる「武力の行使」又は「武力による威嚇」に当たらない。

3の(2)の@について

 お尋ねについて網羅的に把握しているわけではないが、例えば、アメリカ合衆国、英国、フランス、ドイツ、デンマーク、スペイン、ロシア、インド、中華人民共和国、マレーシア等が、ソマリア沖の海賊対策として軍艦又は軍用機を派遣していると承知している。

3の(2)のA及びBについて

 国際連合安全保障理事会(以下「安保理」という。)決議第千八百十六号、第千八百三十八号、第千八百四十六号及び第千八百五十一号において、安保理は、ソマリアの領海内及びソマリア沖の公海上の海賊行為及び武装強盗行為が、地域における国際の平和及び安全に対する脅威となっているソマリア情勢を更に悪化させていると認定している。その上で、安保理は、国際連合憲章第七章の下で行動しつつ、TFGと協力し、かつTFGが同意する国等が、関連する国際法の下で海賊に関し公海上で許容される行為に合致する方法であること等の一定の条件の下で、ソマリアの領海内等において、武装強盗行為等を抑止するためにあらゆる必要な措置を用いることを認めている。

3の(3)の@及びBについて

 自衛隊法第八十二条の規定による海上における警備行動の範囲及び同法第九十三条に規定する海上における警備行動時の権限については、公海上にも及ぶものと考えている。

3の(3)のAについて

 ソマリア沖の海賊対策として、海上保安庁の巡視船を派遣することは、日本からの距離、海賊が所持する武器、有志連合軍の軍艦等が対応していること等を総合的に勘案すると、現状においては、困難である。

3の(4)のAについて

 海賊行為とは、私有の船舶の乗務員等が私的目的のために行う不法な暴力行為、抑留又は略奪行為であり、その取締りは、国際連合憲章第二条第四項で禁止されている「武力の行使」に当たらない。

4の(1)について

 自衛隊法第八十二条の規定により海上における警備行動を実施した事例は、次のとおりである。
 一 能登半島沖不審船事案 平成十一年三月二十三日に能登半島沖で、二隻の不審船舶に対して、海上自衛隊の護衛艦及び対潜哨戒機が追跡、停船命令、警告射撃等を行った。
 二 中国原子力潜水艦による我が国の領海内潜没航行事案 平成十六年十一月十日に先島群島周辺海域の我が国の領海内を潜没航行している国籍不明の潜水艦に対して、海上自衛隊の護衛艦、対潜哨戒機及び対潜ヘリコプターが追尾を行った。

4の(4)の@について

 御指摘の軍艦等がいかなる船舶を護衛等の対象としているか等について網羅的に把握しているわけではなく、お尋ねについて一概にお答えすることは困難であるが、自国籍の船舶を優先的に護衛している例もあると承知している。

4の(4)のAについて

 御指摘の軍艦等の活動については、海洋法に関する国際連合条約を含む国際法及び各国の国内法に従い行われているものと理解しており、国際法上、軍艦等には公海等において海賊行為を理由とするだ捕を行うことなどが認められているが、各国の国内法に基づきいかなる活動が認められるか等については、日本政府として具体的に申し上げる立場にはない。

4の(4)のBについて

 各国が派遣した軍隊等の活動の調整について、具体的には承知していない。また、ソマリア沖の海賊に対処するため自衛隊法第八十二条の規定による海上における警備行動による自衛隊の派遣の準備を開始したところであり、お尋ねの「自衛艦と他の国の軍艦等の活動の調整」について現時点でお答えすることは困難である。

4の(4)のCについて

 CTF一五〇に所属する艦船について、その活動内容を網羅的に把握しているわけではないが、海賊船舶を発見した場合などに、海賊行為を阻止し及び抑止するための行動をとることもあると承知している。

4の(4)のDについて

 現在、欧州連合(以下「EU」という。)が行っているアタランタ作戦の下では、英国、ドイツ等の軍艦等が、国際連合世界食糧計画が契約した船舶への併走及びソマリア沖における監視等を実施しており、その司令部は、英国のノースウッドに置かれていると承知している。なお、現時点でEU非加盟国の軍艦がEU海軍作戦の指揮下に入っているとは承知していない。

4の(4)のEについて

 お尋ねについては、把握していない。

4の(4)のFについて

 御指摘のような艦船について、その任務の詳細を承知していないため、お答えすることは困難であるが、一般論として申し上げれば、テロ対策海上阻止活動に対する補給支援活動の実施に関する特別措置法(平成二十年法律第一号)では、ある外国の艦船が補給支援活動の対象となるためには、当該艦船がテロ対策海上阻止活動に係る任務に従事するものであり、その艦船に対して補給支援活動を実施することがテロ対策海上阻止活動の円滑かつ効果的な実施に資するものと認められることが必要である。

4の(5)の@について

 各国が国内法上いかなる根拠に基づいて海賊を取り締まっているか等について、日本政府として具体的に申し上げる立場にはない。

4の(5)のA及びCについて

 御指摘の「拘束した海賊を沿岸国に引き渡」す等の意味するところが明らかでなく、お尋ねについて一概にお答えすることは困難である。

4の(5)のB及びDについて

 お尋ねについては、海賊行為であって我が国の刑罰法令が適用される犯罪に当たる行為があった場合には、刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)等に基づき、捜査等所要の手続を実施することとなる。なお、その具体的実施方法等については、現在、政府において所要の検討を進めているところである。

5の(1)の@について

 海賊行為が、現行法上、我が国のいかなる刑罰法規に該当するかは、個別の事案ごとに判断されるべきであり、一概にお答えすることはできないが、例えば、刑法(明治四十年法律第四十五号)第二百三十六条第一項に規定する強盗罪等に当たる場合があるものと考えている。

5の(1)のA及びBについて

 政府においては、海賊行為への適確な対処を図るための所要の法整備について検討しているところであり、お尋ねについて現時点でお答えすることは困難である。

5の(2)の@について

 御指摘の「派遣恒久法」及び「海外派遣」の意味するところが明らかではないが、自衛隊が海賊行為に対処する場合としては、公海上のある海域で頻発する海賊事案に我が国として対処する必要がある場合であって、当該海域における海賊対策として海上保安庁の巡視船を派遣することが困難であるときなどが考えられる。

5の(2)のAについて

 御指摘の「派遣恒久法」及び「海外派遣」の意味するところが明らかではないが、現在、政府においては、海賊行為への適確な対処を図るための所要の法整備について検討しているところであり、その検討には、自衛隊が海賊行為に適切に対処するために必要な事項などが含まれている。



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